出発準備
「また、お待ちしております~~」
俺はリーサさんと共にとある場所を後にした。
その場所の名前は『
魔術が込められた特別な契約書での契約を専門にしている場所で大きな商談や公的な取引などの際に使われる場所で簡易的な奴隷契約もここで行われてるのだ。
ちなみにヴィオラやメイちゃんと奴隷契約を結んだ時は国営の『奴隷取引所』で行った。
ロダンさんに聞いた話だと、ヴィオラやメイちゃんの時のように仲介商人が間に入る時は『奴隷取引所』で今回のリーサさんのように個人的な契約な時は『
なお、この『
ちなみに、この国での奴隷制度は犯罪奴隷を除き俺の元いた世界のようにあらゆる権利を無視されるようなものではなく所有者が奴隷の衣食住を保障するのが義務でありそれを破った所有者は罰則を受けるらしいので俺も気を付けている。
「この奴隷を示すチョーカーだがなかなか付け心地が良いナ。もっと酷いものかと思っていタガ。」
「まぁ、身近な者に付けてもらうものですから良い物を用意していますよ。」
ちなみにこのチョーカーは神様工房で作られたものでヴィオラとメイちゃんも着けている。
というのも初めて契約したときにサービスとしてチョーカーを渡されたのだがそれのさわり心地があまりにも酷かったと言う話をポロッとグランフィリア様にしてしまったら後日わざわざようにしてくれたのだ。
しかも、常に清潔になる魔法とか危険の際にバリアを張る魔法とかをこめましたと嬉しそうに話しながら持って来てくれた。
もはやそれ神器じゃね?とか思った物のせっかくの行為を無下にするわけにもいかずありがたく頂戴した。
神様からの贈り物を受け取らないわけには行かないからね!うんうん。
「ソウダ、商人。これからはそちらが上なのだから丁寧にしゃべる必要はナイゾ。」
「そう?じゃぁ、改めてこれからよろしくなリーサ。」
「ウム。よろしく頼む、ソノ、ゴ、ゴシュジンサマ…」
!!!
普段、その辺の男よりも猛々しい女戦士が顔を赤く染め、ちょっと伏し目がちに恥ずかしながらご主人様というのがここまで萌えるとは!
コレが、ギャップ萌か!!
このイサナの目をもってしても読めなかった!!!
「ド、ドウシタ急に固まって。やっぱりアタシのようなデカオンナにゴシュジンサマと言われるのは嫌だったか?!」
「まさか!むしろイイ、良すぎて固まっていたぐらいだ。ほらもっと、ご主人様って、言って!恥らいながら、頬染めて、出来れば上目づかいで、さぁ、さぁ、さぁ!リピートアフタミー ご主人様!!!」
メイちゃんはともかくヴィオラは恥じらいってものが無いからな、いつもコチラをからかって飄々としているからこんな風に恥ずかしがってる女の子を見るのはかなり新鮮な気がする。
いまもアワアワ言ってるしマンガだったら絶対お目目グルグルだぜ、へへ、嬢ちゃん良い反応するじゃねぇか。
〔そんな恥ずかしい事言えるかぁぁぁ〕 ブォン
「…っへ?」
リーサが恥ずかしさのあまり故郷の言葉で叫びながら背を向けたまでは良かった。
ただ、一つ問題があるとしたら彼女には爬虫類のごとき鱗に覆われた尻尾があったことだ。
普通に考えてみて欲しい、鱗に覆われた固い尻尾が鞭のようにしなりながら迫ってきたらどうなるのか。
ドンガラガッシャーン
答えは一つ「無慈悲に弾き飛ばされる」
俺はその答えを文字通り身を持って味わい強制的にシャットダウンさせられたのだった。
・・・
・・
・
「弾き飛ばしたのは悪かったがアレはゴシュジンが悪いんダゾ。」
「いやぁ、わりぃわりぃ。なかなか新鮮な反応だったんでちょっとエキサイトしちゃったわ。次からエキサイトしないように善処する。」
あの後すぐに気を取り戻したもののリーサはかたくなに「ご主人様(はぁと)」呼びをしてくれなくなった。
そして、互いの折衷案として「ゴシュジン」呼びになったわけだ。
メイちゃんは「
……今度メイドさんでも雇おうかな
「ゴシュジン、店の周りが騒がしいみたいだぞ。」
リーサが言う通り俺の店を取り囲むように人垣が出来ていた。
何事かと思い近づいてみると一人の生徒俺に声をかけて来た。
「子供店長、明日でこの店終わりって本当!?」
「え、ええ。急な話で申し訳ないですがそろそろ在庫も尽きてきましたので他の地域に向かおうかと。」
「そうか。子供店長も行商人だから仕方ない、か。ただこの店が無くなるのはちょっとさみしいな。」
周りからも「寂しい」とか「行かない」でとか至る所から声が上がってくる。
「こんにちわ、イサナさん。友人に明日でこの店が終わりだから今日行きませんかって声をかけたら話が学校中に広まってこんなに集まったんですよ。」
「ワタシとマルチナは勿論、騎士学校の皆は君にすごく世話になったんだから。ねぇ~みんな、このお店があって良かったよね?」
ブリッサさんの言葉に騎士学校の生徒たちが賛同の声を上げる。
「ありがとう」や「また来て」って言葉を聞く度に胸が熱くなる。
「まった、まった。騎士学校だけがイサナ君に世話になったわけじゃないよ。僕たち魔法学院の生徒達だってこの店が大好きなんだから。」
ダニエルさんが声を上げると魔法学院の生徒も「そうだ、そうだ」と負けじと声を出した。
泣かないように我慢してしていたのに彼ら、彼女らの言葉でとうとう我慢の限界に達した。
「みなさん、ありがとうございます。オオイリ商店は明日までこの場所で販売していますので最後までよろしくお願いします。」
涙でグシャグシャになった顔ではそれを言うだけで精一杯だった。
メイちゃんもヴィオラも目をウルウルさせながら挨拶に来た皆に返事をしていった。
その後も生徒たちは日が沈むギリギリまでやってきて挨拶にきてくれた。
「主、この街で商売が出来て本当に良かったね。最初はどうなるかと思ったけど最後までキミを信じて正解だった。」
「ええ、ええ。主様、メイはメイはまだ感動しております!こんなにも商売が楽しいとは思ってもいませんでした。」
「2人ともまだ終わってないぞ。本当の最後は明日なんだからな。最後までしっかり頼むぞ。」
「ああ!」
「はい!」
この街は本当にいい街だ。
最初にこの街に来れて本当に幸運だった。
だから、最後までしっかりやり通そう、それを胸に帰るのだった。
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