幕間・この世界の神話

 今日も無事商売が終わり宿でゴロゴロしているとふと気になったことが出て来たのでヴィオラに尋ねた。


「なぁ、ヴィオラ。この世界の神話ってどんな感じなの?ぶっちゃけグランフィリア様ってなにしたの?」


 俺の一言に2人は完全に凍りついた。

 その反応はまぁ、仕方ないと思うよ。

 神様にいろいろお願いされておきながら何も知らないからね、なに言ってんだコイツって思うのも分かるよ。

 とりあえず俺はこっちに来た経緯を改めて話して教えてもらうことにした。


「じゃ、今から簡単に説明するから聞いておくれ、質問は後から聞くからね。


 そもそもこの世界の神様には2種類いるんだ、純神と霊神という2種類で、まずは純神が関係する天地創造神話から話していくよ。


 初めにこの世界は創造神と呼ばれる方が創ったんだ。この方はグランフィリア様を含む多くの純神も作り出した御方だ。

 何もなかった所に初めの大地を創ったそうだ、創造神は頑張ってその世界を広げようとしたけれど1柱だけでは限界があった、だから創造神は3頭のドラゴンを生み出したんだ、彼らは全てのドラゴン種の元になる祖龍ルーツと呼ばれる存在で今でもどこかで生きているらしい。

 彼らは天、地、海とそれぞれ司る物が分かれていて創造神と共に世界を広げて行ったらしい。

 そして、世界を広げ終ると祖龍ルーツは創造神にこう言ったらしい。


『創造神の偉大な御業でとても広い世界を創ることが出来ました。ただ世界が広すぎるため我々だけでは管理する事が難しいです。ですので創造神の様に我らも自らの子を創ってもよろしいでしょうか。』とね


 創造神はその言葉を受け入れ祖龍ルーツは多くのドラゴンと彼らが使役するための獣や魚たちをを生み出し世界を管理し始めた。

 賑やかになっていく世界に創造神は喜んだという。

 ただ、長い時間がたち少しずつ問題が起こり始めた。

 それはドラゴンや獣たちの世界の管理の方法が荒い事だったらしい。

 ようするに躰の大きなドラゴンや手足で細かな調整が出来ない獣たちでは細かな調整が出来なかった。

 そこで創造神は自らの力の多くを注ぎ、ドラゴンまで大きくなく獣以上に手足を細かく動かせることが出来ような存在、ようするに人型を作り出したんだ。

 そして、生まれたのが今の神々の頂点であり、万物を司る神、グランフィリア様だ。

 グランフィリア様が生まれたときはそれはそれは凄い喜び様だったらしい、創造神や祖龍ルーツを初め多くのドラゴンや獣たちが祝ったと言われている。

 その後はグランフィリア様を筆頭に世界の管理が行われ、その途中で多くの人型の神々が生まれていき各々が自らの司る自然を管理していったんだ。

 そして多くの神々が創造神や祖龍ルーツと同じく自らの子になる種族を生み出していったんだ、ただグランフィリア様は新たな種族を創ったと言う話は無いね。

 そして、それがエルフであり、鬼であり、人間であり、要するに人種と呼ばれる存在だね。


 そして、人種が生まれ世界の管理に神々の手を入れなくても大丈夫になったころ神々は初めの大地を世界から切り取って神々の世界として作り直しこの世界から離れていった。

 それと同時に創造神はグランフィリア様に全てを託し新たな世界を創りに旅に出たと言われている。


 これがこの世界の創造神話だよ、解ったかな?」


「なんでグランフィリア様は自分の種族を創らなかったんだ?率先して作りそうなのにな。」


「これについては史上最大の謎だよ。どこにも記述が無いんだ。でも主なら直接聞けるんじゃないかい?」


「それもそうだがこっちから声をかけるのはどうにも忍びなくてな…とりあえず話の流れは理解した。しかし、ドラゴンか~ 見てみたいな。やっぱりデカいのかな、ブレスを吐くのかな、あ~気になる~。」


「主様、ドラゴンは種類を問わなければいろいろな所で見ることが出来ますよ。ただ、主様が思ってるようなドラゴンは正直お伽噺の存在ですね。」


「そうか、いつか出会えると良いな。そういえば神様にはもう一種類あるんだよな。それはどういった話なんだ?」


「では、次は霊神の話をしていこうか。とはいっても先ほどみたいに共通する話は無いんだ。彼らはこの世界に生まれ死後に多くのモノに慕われた結果神の末席に入れられたり生前の功績により神々によって神の末席に入れられたりした存在だね。ようするに凄い人が死んだあと神様になったって事だよ。」


「なるほど。そういうのは俺の元の世界にもいっぱいいたぞ。世界が変わってもやることは一緒だな。グランフィリア様以外にピオスとガンドラダって神様にあったんだけどこの2柱はどっちに分類されるんだ?」


「ピオス神は純神でガンドラダは霊神だね。ならちょうど2人に関わる伝説の話をしよう。

 この世界は大昔、神と人が共に手を取り戦ったことがあるんだ。

 それが歪悪イービル大戦、異世界から現れたモノがこの世界を奪いに来たことがあったらしい。

 歪悪イービルと名付けられた彼らはなんでも魔力が澱み世界が歪んだ処から現れるらしい、神々が世界を管理する理由はこいつ等をこの世界に入れないからだそうだけど大昔に大規模な侵攻があったんだ。

 その時の功績で神に招かれたのはガンドラダだ、彼は見事な城砦を神々に奉げたらしいよ、残念ながらボクは見たことないけどね。

 ピオス神は当時見向きもされなかった草や木や花たちに自らの力を使って薬効や毒を持たせて多くの存在を癒していったり敵を討ち倒したそうだ、だから彼は薬や医術の神として崇めらているんだよ。」


「ほへぇ~、何と言うかスケールが違うな。城砦を奉げたってちょっと想像がつかないんだけど…」


「ちなみにその時の戦場の一つがこの国の北方にある荒地地帯だよ。前にリザード族の生徒に出会っただろ、彼女が本来いる場所で大戦の影響で今も草木が育ち難いらしいけどリザード族を始めドワーフやサイクロプス達が住んでいる所さ。たしか奉げられたと言う城砦も未だに残ってるはずだけどね。」


「へぇ、歴史的な所は見て見たいな。次はそっちに行こうか。」


「それは止めといたほうが良いと思うよ。基本的に荒地の種族は外から来る者には冷たいらしいからね。現地の協力者でもいない限りは無理さ。」


「そうか、なら別の所か… どこに行こうかなぁ。まぁ、後々考えるとしてもうそろそろ寝るかメイちゃんも眠そうだしな。」


「ふぁい! 寝てませんよ、メイはまだまだ起きてられますよ。」


「フフ、大丈夫だよもう寝るからね。じゃ主、僕たちは部屋に戻るからね。」


 ヴィオラはうつらうつらと船を漕いでいるメイちゃんを抱えて部屋に戻った。

 さて、俺も寝るかな。


 その日、俺は不思議な夢を見た。

 影のように黒い人型がグランフィリア様に傅いてる夢だ。

 傅いてる者たちは皆俺と同じように手足はあったが背中から翼が生えていたり、全身毛だらけだったり普通の人とは言い難い姿だった。


「イサナさん、私も自らの子は創りましたが今は内緒です。もしいつの日かイサナさんが彼ら彼女らに出会った時は仲良くしてあげてくださいね。」


 その言葉だけが妙に残ったのだった。

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