第2章 荒地に住む誇り高き者たち
どこにいこうかな
『魔導具科、最終学年生、リーサ。至急、教員室まで来てください。繰り返します…』
「ム、呼び出しカ。ちょっと行ってクル。」
リーサは共にいたクラスメイトに一言告げると呼び出しに従い教員室に向かった。
教員室に入ると担任が現れ奥の学院長室に向かうように言われたのでそちらに向かう。
「どうしてお前がここにイル!?」
学院長室にいたのはリーサの見知った、ここにはいないはずの人物だった。
・・・
・・
・
俺は今ロダンさんを訪ねてロッソ邸に来ていた。
ヴィオラとメイちゃんは客間で休ませて貰って、俺とロダンさんの2人は書斎にいた。
「行商に向かう所の相談ですか。」
「そうです。近々この街を離れ新たな街で商売を始めようと思ってはいるのですが何分他の街の知識がほとんどなくてですね、どの方角に向かうかすら決めかねている所です。」
「なるほど、ではこの街を中心簡単に説明しましょう。まず、大きな町があるのは西の港町か北の王都ですな。西の港町は他国との貿易の要であると同時に多くの冒険者が拠点としている街ですのであらゆる物の需要がありますな。ただ、今は新興の商業組合と商人ギルドの諍いが起きているらしく今向かうと面倒事に巻き込まれる可能性があります、我が商会も巻き込まれないよう気を付けながら商売をしている状態です。」
「一つ聞きたいのですがその新興の商業組合と商人ギルドの違いは何ですか?」
「簡単な説明になりますが商人ギルドは国の組織で商業組合は勝手に行ってる組織です。商人ギルドにはいると税を納めたり国が禁止した商品を扱ってはいけませんが我が国公認の商人となり店の規模によっては他国との貿易も許可されます。対する彼らの商業組合はそのような制限を全て無視して商売を行っています。中にはご禁制の品も扱ってると言った噂もありますが真偽は不明ですね。彼らは物の取引を行ってる賊と見てもいい様な者ですからなぁ。」
そういうロダンさんの目には怒りのともし火が見える。
かなり阿漕な商売をしているのだろう、商人としての誇りを大事にしているロダンさんには辛抱ならない相手なのだろう。
西と言えばヴィオラのもともといた街に近いのかな、アイツは確か街の有力者に目を付けられて借金を背負ったんだったな。
となると近寄らないほうが吉だな、のんびりファンタジー世界を楽しみたいもんな。
「では、次は北の王都の話ですな。この国最大の街なだけあって活気はありますな。ただ、イサナ殿のように販売をするような行商は少ないですな。古い街なだけあって大体の店舗が揃っているので住人はそちらで買いますからな。一山当てようと王都に赴く行商人を今まで多く見てきましたが大体は思惑が外れて街を去っていくような所です。それに貴族社会の中心でもありますのでいい印象を持たれたら問題ありませんがよくない印象を持たれるとどのような目に合うか分かりません。ただ、向かうならばこちらでしょうな。」
王都か…
ファンタジーと言えば城だもんな、見て見たいしこっちに行くのはアリだな。
ただ、新参者には厳しい街か、どうしたもんかな。
俺が親しい貴族は東と北だもんな~、王都での力は低そうだもんな~
…そういえば、北と東はどんな感じなんだろう。
「なるほど、二つの街についてはよく解りました。ところでここより東と南はどのような感じなのでしょうか?」
「東は正直に言うと田舎、ですな。イサナ殿は東から来たので見たことあると思いますが基本的に質素な開拓村ばかりですな。例えばイサナ殿が親しいカービン子爵領のようなぽつぽつと少し大きめな町があるぐらいで長閑な地域ですな。ちなみにもう一人の親しいストンズ子爵は王都よりも北にありまして。周りが森ではなく荒地になるぐらいでこちらも田舎ですな。ストンズ子爵領のように各領地の中心部は周りよりも発展はしているものの、と言った感じですな。これより南は国境線になって行きますので活気はあると言えば有りますが隣国の王の体調が悪いとかで様子見状態ですな。」
oh…ド田舎
そりゃ、あの子爵両名が喜ぶはずだわ。
しかし、いくらなんでも行くメリットが無さ過ぎるな~どうしたもんかな。
「ああ、そうそう言い忘れておりましたが北部も東部もその先があるにはありますよ。」
「? その先があると言うのはどういうことですか?」
「東部の森の先にはエルフ達の国があり北部の荒地にはドワーフやリザード族が住んでいます。孫の同級生にもいたでしょう、あの部族です。」
ああ、リーサさんか、そういえば北部の荒地に住んでるとか聞いたな。
それにドワーフか会ってみたいな、やっぱり小っちゃくてマッチョな髭モジャなんかな。
「リザード族は割と友好的ですが、エルフもドワーフも人間と取引はしませんので商売目的で向かうのは厳しいかと。ただ、彼らのどちらかとでも取引できれば偉業と言っても差し支えない程ですからな。」
なんてこったい、エルフはともかくドワーフも排他的とは思わなかったな。
酒持って行っても無理なんかな…
ムムム、合ってみたいんだけどなぁ~
「それでイサナ殿。これから向かう先の参考にはなりましたかな?」
「ええ、わざわざ相談に乗ってくださりありがとうございます。おかげで次の行き先を決めれました。次に向かうのは…」
俺が答えようとした矢先、コンコンと書斎をノックする音が聞こえた。
俺とロダンさんは不思議そうにそちらを見るとダニエルさんが挨拶をして入って来た。
「ダニエル、来客中に入るなどどうゆうことだ!?」
「お爺様の言葉はもっともです。ですが、こちらも緊急ですので入らせてもらいました。すまない、イサナ君ちょっと彼女の話を聞いてくれないか。」
「え、あ、ハイ。いいですよ。」
急に声をかけられたので慌てて返事をするとダニエルさんの後ろから俯きがちなリーサさんを先頭にヴィオラとメイちゃんと見たことない黒い衣装を纏った人が入って来た。
そして、リーサさんはゆらゆらと俺の前にやってくるとガシッと俺の両肩を掴んで言った。
「商人、我が部族を助けてクレ。」
その姿は、勇ましい戦士の姿でなく、年相応の無力な女の子そのものだった。
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