戦勝パーティー(大人の付き合い)

 昼間に騎士学校での褒章式が終わり、日が沈みかけたころ魔法学院で戦勝パーティーが始まった。

 立食形式で様々な料理が並ばれており戦闘に参加した貴族の子供たちや街の兵士にその身内等も参加してもいいと言うことで魔法学院の会場は人でごった返していた。

 どこぞの貴族お抱えの楽団が音楽を奏で、辺りに浮かぶ輝く光の玉は会場を幻想的に照らし出す中で俺はオジサン達に絡まれていた。


「イサナ君のおかげで王命が来たんだよ。うちのような弱小子爵の元に…ウッウ、夢みたいだよ…」

「その通りだ!君のおかげで我が家は王命を授かるという栄誉を賜ったのだ。これを喜ばずにどうすると言うのだ。」


 よほど嬉しかったのだろうパーティーが始まってから両子爵は二人で事あるごとに乾杯をしては酒を飲み、乾杯しては酒を飲みという恐ろしいサイクルを始めパーティー始まって序盤であるのにもうすでに出来上がっていた。

 まぁ酔っぱらうのはいいけど絡むのは止めて欲しいな、カービン子爵はテンションが上がりまくりストンズ子爵は泣き上戸で非常にメンドクサイことになっていた。


 あまりにもメンドクサイ現実を見たくなくて目線を他に移すとヴィオラも俺のように絡まれていた。

 ただし、相手は騎士学校及び魔法学院の女子生徒であるがなぁ。

 ヴィオラの周りの生徒たちは皆頬を赤くして嬉々としてヴィオラに声をかけて行きヴィオラもちゃんと返すのでさらに嬉しそうに声をかけていく生徒達。

 あれがキマシタワ―って奴なのかな、チクショー俺もオッサンじゃなくて女の子に絡まれたかったぞ、このイケメンめ!!

 ………いいなぁ、なんか普通に羨ましいわ。


 そんな、見たくない現実から目線を移すとメイちゃんがいろんな人に囲まれていたのが見えた。

 こちらは老若男女関係なくいろんな人がいろいろと食べ物をもって集まっていた。

 それをメイちゃんが嬉しそうにかつ美味しそうに食べるのでどんどん他の人も集まっていく。

 黒髪の着物幼女が嬉しそうに食ってくれたら俺だってあそこに並びそう、てか早くこのオッサン達を回収してくれないかな。


「おお、イサナ殿ここにいたのか。」

 声がするほうを向いてみるとロダンさんと宰相がこちらに向かってやってきた。


「ロッソ男爵に宰相閣下。わざわざコチラのほうにきましてどうか致しましたか?」


「いやはや、君の企みを詳しく知りたいと宰相がおっしゃられたのでな。ワシついでに聞いておこうと思ってな。」


 ロダンさんは気さくな感じで言ってるものの目がマジだ、初めて出会った時に感じた鋭い目線を感じる。

 ちなみに、ロダンさんと宰相が寄って来た時にグデグデだった両子爵も背筋をキッチリ伸ばし先ほどまでメンドクサイ絡み方をしてたオッサンには見えなかった、貴族ってスゲー。


「そう言われましても別段何も企んでなんていないのですが…」


「いやいや、君から見て何も不思議でないとしてもこちらとしてはなかなか理解できない物が多いのだ。例えば、あの看板や入口で配られたこの紙は何かね?」


 そう言ってロダンさんが指さしたのは俺が用意した看板だ。

 中には今回の料理で使用した食材の仕入れ先や協力してくれた貴族の家名などを書いており多くはないがいろんな人が見てくれていた。


「ああ、あれですか。例えばうちの様な行商人は自らの足で商品を仕入れますがこの街に一時的に住む貴族の方々は?そうなると同じような物ばかりであったり欲しい物が街に来ないんじゃないかと思いまして。あのようにこの村にはこのような物がありますよって宣伝すればそういったことも防げるかなぁと思いましてちょっと用意してみました。」


「なるほど。面白い考え方だ。もしこれでこの村のアレが美味しいやどの村のコレが素晴らしいと有名になればその領地は潤うかもしれんしそれに触発されて似たようなものを作ってる所は奮起するかもしれんな。では、後半の貴族の家名は何の為に乗せているのだ?」


 宰相はなにやら拡大解釈をしているような気がするがここは突っ込まずにいよう。

 俺が考えていたのはただの広告効果だし、これは識字率の高い貴族にしか効果が無いからな。

 それともう一つの件だが


「貴族の家名を載せているは今回の協力してくれたお礼ですよ。なんでもこの学園生活で婚姻を結ぶ方々も多いと聞きましたので少しでも協力できればと思いまして。看板に書いてある連絡先に問い合わせて頂ければ詳しい情報を提供するようにしています。今の所2件ほど問い合わせがありましたよ。」


「ほう、確かに貴族の婚姻と言うのはなかなかに面倒だからな、出会いは少しでも多いほうがいい。奉仕活動の見返りにあのように提示するのは良い着眼点だな。下級貴族の連中が喜んだのではないか?」


「ええ、おっしゃる通りです。予想以上に協力して頂けました。」


 本来はただの協賛ぐらいにしか考えていなかったのだが想像以上に協力してくれる家が多くあつまった。

 と言うのも今回は労働力を借りたいと言う申し出が理由だったとロダンさんが言っていた。

 貴族で言う奉仕活動とは使と言った考えが多いらしく貧乏貴族ではなかなか出来ないらしい。

 だが今回は人の手を借りるだけなので使うお金は殆ど無し、しかも奉仕活動の協力者と言うことで名前を出してくれると言うことでこぞって応募してきたと言うことだ。


「やはり貴様の考えは異質だな。凱旋式も見たがあそこまで身綺麗なのは初めて見たぞ。まぁ、そのおかげで見応えがあってよかったがな。」


「うむうむ。おかげで孫の戦功第一位が輝いて見れたわ。そういえばあの戦功もイサナ殿あってのものだな。イサナ殿が敵でなくて本当に良かった。」


 その言葉に子爵の2人もうんうんと首を振っていた。

 というか、凱旋前あんなに綺麗にしないのね、俺的にはそっちのほうが驚きなんですけどね…


「そうそう、バーデン辺境伯も孫と初陣だったからあんなに綺麗な凱旋に参加させることが出来て良かったと嬉しがっていたぞ。貴様の目論見通り貴族に名を売る事は成功したようだな。」


「いえいえ、気に入って頂けたのであれば幸いです。」


 ところでバーデン辺境伯って誰よ?俺あったことある?

 全く記憶にないのに名前だけ憶えられても怖いだけなんだよなぁ。


「すこし、話は逸れたがこのもう一つの企みの紙は何かね?マス目の中に数字が書いてあるようだが。」


「ああ、それですか。それは、この後のお楽しみですよ。」


 そう、それはこの後のお楽しみなのさ…

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