ご褒美は何が欲しい?
俺たちはブリッサさんとマルチナさんの帰還祝いに御呼ばれされ御馳走を食べた後、
その内容は武勲の褒美として何を貰うのかという話だった。
褒賞と言うのはある程度決まった取り決めがあるらしく規模が大きい物であったり見た目がド派手な物が良い言うことで最初は両家とも褒賞金を貰って魔剣の代金を払うの言ったのだが俺がそれを断固拒否。
そのため話し合いは皆いい案が浮かばず硬直状態になっていた。
「主、ホントにお金を貰わなくて良かったのかい?」
「ああ、取り決めもなく後から商品の代金を貰うなど商人としての
「
と、カービン子爵が笑いながら言った。
他の人達もなにか納得気味であったのは
とはいえ、このままでは埒があかないのでちょっと話題を変えて気分をリフレッシュすることにした。
「そういえば、今回はどんな魔物が集まっていたのですか?流石に何が迫っているかまでは耳に入らなくて。」
「あ、そうなんだ。イサナくんの事だから手っきり知ってるかと思ったよ。今回はゴーレムがいっぱいいたんだよ。ワタシの周りは岩とか石とか出来たのが殆どで中には宝石で出来た奴もいたんだけどそいつはこの魔剣で切り捨ててやったんだ。マルチナの所はウッドゴーレムだっけ?」
「そうですよ。森の中から奇襲してきまして大変な目にあいました。正直な所イサナさんの魔剣が無ければあの時死んでいたでしょうね。改めて感謝申し上げます。」
「いえいえ、コチラは商品をお持ちしただけで何もしていませんよ。ところでその倒したゴーレム達は今どうなっているのでしょうか?」
「恐らくは国が回収するでしょうね。こういった討伐隊遠征のときは討伐した相手の素材を褒賞に出す時もありますから。ただ、今回は相手が相手ですからね。建材としては良い物ですが換金しにくいですから欲しがる人はどれだけいる事やら。」
建材、建材ねぇ…
それがどれほどの量があるか解らないがきっとそれだけを貰っても彼女らの褒章には足りないのだろう。
なかなか、いい考えが思いつかない俺は窓からこの街の街並みを見ていた。
元の世界では海外旅行に行ったことがなかった俺にとってこの街は見た目は本当に心が躍る物だった。
煉瓦で造られた家や真っ直ぐ綺麗に敷き詰められた石畳の道、そこを通るさまざまな馬車や馬、まさにファンタジーここに極めりといった感じでゲーマーとしては非常に興奮するものだった。
この街は誰が作ったんだろうか。
「…一つお尋ねしたいのですがこういった街はどなたが作られたのでしょうか?」
「街ですか?基本は各領主が作りますね。この街は王家直轄地ですから王族が整備したと思いますが。」
「では、道はどういったものですか?特に領内だけで終わるような道で無く領外にも続く貿易路の様な物は。」
「道?領内なら領主が整備するけど領外に入ったら何もしないよ。たとえ隣の領地の街道の質が悪くても文句は言えないね。だって他人の家の管理するべきものだからさ。」
俺の質問によく解らないまま答えてくれる皆に感謝しつつ俺は褒賞で貰う内容が頭の中で固まりつつあった。
そして、それを盤石な物にするために最後の質問をした。
「皆様がたの特産品は石材と木材だったと記憶しているのですが。それを扱う職人たちの腕も確かな物ですか?」
「確かに我がカービン家は木材を、ストンズ家は石材思うに扱っているし職人の腕も確かだが。イサナ君、君は一体何を考えているのだ?」
「実は褒賞として良い物を考え付きまして。実はですね…」
俺の考えを聞いた皆は最初は驚いていたものの最終的には素晴らしいと納得してくれた。
すぐさま、その考えを現実的な物にまとめるべく話し合いを続けるのであった。
・・・
・・
・
凱旋から翌日、騎士学校の大広間で褒章式が始まっていた。
流石にシャンデリアはないもののそれに代わる魔力灯が部屋を明るく照らし学生達は各々の学校の制服に身を包み綺麗に並んでいた。
因みにこの後に魔法学院のほうで祝勝パーティーが開かれることになっている。
そちらはロダンさん協力の元、俺達が頑張って準備したものである。
そんな些細なことを考えているうちに国王代理としてジェームズ・グランヒルズ宰相が登場した。
実は宰相の子供が今入学中でこの街と王都を行ったり来たりしているらしくこっちに来ている時に討伐隊騒動が起こってしまいその一連の流れを解決するまで留まるように王様から言われたらしいとロダンさんが言っていた。
運がいいのか悪いのかよく解らん御人である。
「ブリッサ・カービンおよびマルチナ・ストンズ前へ。」
騎士学校生徒の武勲の第一位第二位が同時に呼ばれ周りが少しざわついた。
本来は一人ずつ貰う物なので複数呼ばれることはほとんどないとのことで複数呼ぶときはかなり高価な物であったり特殊ならしい。
因みにこの褒章式で貰えるものは事前に打ち合わせ済みであり俺の提案に対する許可も出ている。
まぁ、当たり前だわな、アレください、ダメ、じゃぁコレください、ダメ、だったら話にならないもんな。
「カービン家およびストンズ家に対し学園都市からカービン領およびストンズ領までの街道およびその周辺の工事許可を授与する。」
「「ありがたく頂戴いたします。」」
褒賞の内容に周囲の貴族達がざわざわし始めた。
内容がよく解っていない者や解ったが領地をまたぐ工事許可に驚くものなどいろいろだった。
ちなみに、この褒章の内容は簡単に言うと道路工事と駅の工事になる。
道路工事はまぁ、そのままの意味だ。
俺がこの街に来るまでに思っていたのが道の状態の悪さだった。
アスファルトなんて存在しないから仕方ないかもしれないが土の道というのはなかなかに進みづらい物があった。
凸凹してるし水たまりとかあるし、なのでいっそのことメインとなる街道を石畳にグレードアップしてしまおうと言う事だった。
そうすればかなり往来もしやすくなるしストンズ家の名産品である石材と石工たちの宣伝になると思ったからだ。
次に駅だがこれは電車の止まる駅ではなく昔の
俺のセキトなら休むこともなく走れるが普通の馬はそうはいかないのだがちゃんと休めるところがなかったりあっても距離がまちまちで大変なのだ。
どうしてそうなるかと言うとこれは街道の宿場町の関係でそうなってしまったのだ。
等間隔に町があればいいのだがこの時代そういうわけには行かなかったのでならばある程度等間隔になるように作ってしまえと言う考えだ。
また、維持させるための考えとして駅の近くで商品の販売権を与えると言うのも盛り込んである。
イメージするなら高速道路のサービスエリアになるかな。
そこでの売り上げの一部を税として納めても良いように提案したが詳しいことはこの国のお偉いさんに任せよう。
こちらとしてはカービン家の特産の木材と大工の宣伝になればいいのである。
「…以上がこの件の内容である。詳しく知りたいものや改めて聞きたいものは後日王政庁まで問い合わせるように。」
いつの間にか二人に対する褒賞の説明が終わりを迎えていた。
そしてなぜか宰相と目があった。
「なお、この件は国王陛下も強く関心を抱いておりこの褒章は宰相の名では無く国王陛下の名のもとに賜れるものである。万全を期して挑むように。以上を持ってブリッサ・カービンおよびマルチナ・ストンズ両名への褒章を終える。」
「「つ、謹んで拝命いたします。」」
宰相の最後の一言に会場は会場は一層騒然とした。
いまいち理解出来ていない俺にストンズ子爵が興奮して抱き着いてきた。
「イサナ君、王命だよ!王命!! 褒賞の形ではあるけれどこれは間違いなく王命だよ。君の提案が国王陛下の目に留まったんだよ。」
興奮した状態で俺を激しく揺さぶるストンズ子爵。
揺れる視界の中でカービン子爵が移り彼は奥さんの肩を抱いて歓喜の涙を流していた。
「…この者を持って褒章式を終える。この後、魔法学院で祝勝パーティーを準備している。参加は自由であるが今回はとある商人が初陣の者たちの為、一風変わった催し物を企画しているそうなので参加してみると良い。」
最期に宰相は俺に目を向けニヤリと笑って去って行った。
なんでここでハードル上げるかなあの人は!!
そんなことを愚痴れるわけもなく俺は急いでパーティー会場に向かったのだった。
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