戦いの裏で・前
討伐隊が出立したころ俺は一人でロダン・ロッソさんの邸宅にいた。
ヴィオラやメイちゃんが頑張っているのに俺が頑張らないわけにはいかない。
だから、俺は気合を入れてロダンさんを訪ねた。
「おお、イサナ殿お待たせして申し訳ない。」
「いえ、むしろ急にお邪魔してしまいましてこちらこそ申し訳ござい…ま……せん………」
急に訪問した無礼を詫びようとしたのだがその声がだんだんと小さくなっていく。
というのも目の前にやってきたロダンさんの雰囲気が前回と全く違ったのだ。
前に見たときは眉間に皺がより鋭い眼差しでこちらを見ていたのだが今は眉間の皺も薄れにこやかな笑顔を浮かべていたのだ。
「フフ、君も驚いたか。最近人に会うたびに雰囲気が変わったと驚かれとるよ。」
「こちらも驚きのあまり声が詰まったしまいました。まだまだ修行が足りません。」
「これも全て君の持ってきたメガネのおかげだよ。前まではあまり物が見えず、ずっと眉間に皺が寄っていたがねこのメガネをかけてから世界がよく見えてな。おかげで皺も伸びてくれたというものだ。」
「いえいえ、そこまで気に入って頂けたのならこちらとしても本望です。これからも長くご使用ください。」
「ああ、死ぬまで使わせて貰うよ。さて、世間話はここまでにして本題を聞こうか。」
「では、早速とお話しさせていただきます。ロダンさんもご存知とお思いですがこの街は今、非常時です。迫りくる魔物の討伐の為に1000人規模の大部隊が出立しました。その様な大規模な部隊が出たということはそれだけの危険が近寄っている証拠になります。それゆえに大量の旅人が安全を求めて街を離れて行きました。もちろんその中には商人も多くいます。明日には殆どの商人が消えるのではないかと考えています。」
「おそらく君の言うとおりだろう。わざわざ危険に合いそうなところで商売をしたがるものはいないさ。それで、君も別れの挨拶に来たのかね?」
「まさか!もし別れの挨拶にくるなら山の様な土産をお持ちしますよ。こちらとしてはこのチャンスを逃さないために必死で動いているのです。」
「この非常時がチャンスと?君は何をしようとしているのかね。」
「今、部下を使い街を離れる商人から可能な限り商品を買うように指示をしています。もちろん安く買うようには言っていますけどね。」
「何故そのようなこと?君に利益はあるのかね?」
「買うのはとても簡単なことです。今なら安く仕入れることが出来るからです。街から離れようとする商人は荷物を売りたいのと軽くしたいと思っているはずです。ですのでこちらが買うと言えば簡単に売ってくれます、たとえこちらが買い叩こうとしても。安く買って高く売る、商売の基本を実践しているだけです。そして、コチラへの利益は今から作っていく段階です。ロダンさんにはそれを手伝っていただきたいのです。」
「ほう、一体君は何を望むのかね。」
「1つ目は、空き倉庫をお借りしたいのです。こちらは行商人の身ですから買った物を補完できる場所が無いのです。ですのでそれをお借りしたい。」
「倉庫ならいくらでもあるから好きに使うと言い。他には何かあるかね。君にはメガネの代金という借りがあるからな。可能な限り手を貸そう。」
「それなら遠慮なく言わせて頂きます。2つ目は、ロダンさんの知り合いでこの街でもっとも位の高い方を紹介して頂きたい。」
「…それも構わないが何をする気かね。」
「それはですね…いや、ここではまだ秘密にしておきましょう。その時までのお楽しみということで。」
「ほほう、よかろう。ならばこちらもあっと驚く人物を紹介してやろう。」
その後、俺はロダンさんと固く握手をすると邸宅を後にした。
・・・
・・
・
次に俺が向かったのはカービン子爵邸だった。
前回そそくさと出て行ってしまったので正直にいうと訪問しづらい。
どうしようかな、やっぱり他の所で調べようかな。
「まぁ、イサナさんじゃないですか。またいらしてくださったのですね。」
悩んでいた俺の後ろから声をかけてくれたのカービン夫人だった。
「カービン夫人。先日は挨拶もせずに出て行ってしまい。失礼致しました。」
「イサナさん、謝らないで頂戴。むしろあの時失礼な態度をとったのは私たちですもの。さぁ、入って頂戴。主人も君の顔を見たら喜ぶわ。」
こうしてあれよあれよと屋敷の中に入れられて俺はなじみの応接室に案内された。
前世では考えられないような豪華な部屋がなじみになるとは思っても見なかったなとか思ってたらトントンとノックの音がし返事をするとこの家の主人であるカービン子爵が入ってきた。
「おお、イサナ殿、前回は失礼な態度をとってしまいもう仕分けない。あの後娘達から盛大に怒られてしまったよ。「イサナさんはいつも我々の事を考えていてくれたのにその対応は何ですか!」とね。確かにその通りだと思ったよ。君はこちらの頼みを全力で答えてくれた上に受け取るなら覚悟を持てと警告までしてくれたのに我々大人はそれに対応出来なかった。全くもって恥ずかしい限りだ。その後いろいろと話し合って君の正体が何であれ我々はそれを追求しないことにしたし君がこちらを頼ってきた時は全力で協力にすることに決めた。だから、是非我々を頼ってもらいたい。」
入ってそうそう謝罪から始まったカービン子爵のセリフに俺は胸が熱くなった。
俺の様な正体不明を信じると、頼って欲しいと言ってくれたのだ。
なら、俺も可能な限り全力で答えるとしようと決めた。
「ありがとうございます、カービン子爵。本当ならばこちらの正体を伝えるべきなのですがとある御方から持つべき人に持つべき物を渡して欲しいと言う使命を受けておりその為に詳しいことを話すことは出来ません。ですが商人という姿は紛れもない事実ですのでそれは信用して頂きたいです。」
「安心したまえ君は立派な商人だ。それは疑うことはないさ。それで今日はどういった用件かな。」
「カービン子爵にお聞きしたいことがありまして、この国ではどのような凱旋式をするのでしょうか?」
俺は早速カービン子爵に気になっていたことを聞いたのであった。
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