父の想い
露店の為にいつもの道を行こうとしたのだが今日はいつもと違った。
武装した兵士たちが皆一様に学園方面に向かい時には騎兵が急いで通りを駆け抜けており明らかに異常事態だった。
「ヴィオラ、これをどう思う?」
「ボクの経験だとは街に危険な魔物が現れた為の非常呼集とみるけど今回は明らかに集まる兵が多すぎるまるで戦争でも起きたみたいだ。」
「戦争!?この国はそんなに危ない状態だったのか!?」
「そんなことは無いよ。寧ろ周辺諸国とは友好な関係を気づいてるし少し情勢が怪しいところももっと西側だ。それに戦争だとしたらもっと前から分かるしね。」
「それもそうだな。いくら何でも行軍があればもっと早く解るだろうし。ならもっと別の何かか… ちょっと寄り道しようか。セキト、カービン子爵の家に向かってくれ。運が良ければ何か聞けるかも知らないし。」
そうして俺たちはカービン子爵邸に向かうことにしたのだった。
・・・
・・
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門前払いを受けるかも思いながらカービン子爵邸に着くとたまたま屋敷の外にいたハロルドさんに出会いお屋敷の中に入ることが出来た。
屋敷の中では慌ただしく使用人達が働いており明らかに何かが起こっているのを物語っていた。
「やぁ、イサナ殿。態々来てくれて感謝するよ。君のおかげでパーティーは大成功だ。参加した他家には素晴らしいアピールを出来たよ。」
「今日は急な訪問にも関わらず歓迎していただきありがとうございます。こちらが用意した商品が役に立ってくれたのなら商人冥利につきます。」
ハロルドさんに案内された部屋に行くとグレイ・カービン子爵とレムス・ストンズ子爵がいた。
「さて、イサナ君がここに来た理由は街の様子がおかしかったからかな?」
「ええ、その通りですストンズ子爵。あまりにも物々しい雰囲気でしたので何事かと思いまして。しかし、こちらのような露店商には頼る相手が少なくて失礼を承知でこちらに伺ったのです。」
「イサナ殿ならいつでも歓迎するいつでも来てくれ。それで現状なのだが街の外に魔物の群れが現れたのだ。そのため撃退の為に街の衛兵や各々の家から連れてきた精鋭が一度両学園に集結しているところだったのだ。我等もしばらくしたら赴くつもりだ。」
「そうだったのですか。お忙しいところお邪魔して申し訳ございません。実情が解ったのでこちらは御暇しますね。」
「いや、待って欲しい。実はイサナ殿に頼みたいことがあるのだ。」
「こちらにですか?どのようなご用件でしょうか?」
「実は騎士学校の生徒が今回出陣することになってね。ブリッサとマルチナも勿論出るんだ。そこでイサナ君の商品の中から彼女たちの武器を用意して欲しいんだ。君の露店ではなかなかの逸品あるというのを噂で聞いていてね彼女たちに持たせてあげたいんだ。」
「ああ、いくら後方支援のためとは言え戦地に出るのだからどうなるかは分からない。戦うことがが我等貴族の役目だが親としてはケガなく帰ってきて欲しいのが正直な想いだ。だから少しでも娘たちが無事に帰ってくるように出来る限りのことはしておきたい。勿論金は出せる限り出す。娘たちの為に持ってきて欲しいのだ。」
そう言って二人の父親は深々と頭を下げた。
ここまでされてしまっては生半可は物は用意できないので王剣に相談するとしよう。
俺は一度退室するために2人に挨拶を使用した瞬間。
突如として腕輪が輝き青い光が部屋を満たした。
あまりの眩しさに目を閉じていたが光が収まったのを感じ目を開けると世界から色が無くなっていた。
明暗は分かるのだが俺以外のすべてが灰色に変わっていた。
≪すみませんイサナさん驚かせてしまいましたね。≫
先ほどと違い淡い光を放つ腕輪から慌てる俺に向けて声を掛けてくれたのはグランフィリア様だった。
≪今は私の力でイサナさん以外の全ての時を止めていますので普通にお話てくださっても問題無いですよ。≫
「そうですか。それでフィリア様がわざわざ声を掛けてという事は何か問題が発生したのですか?」
≪そんな大げさなことではないですよ。ただ、これからイサナさんは宝物庫から武器を召喚するみたいでしたのでちょっとお声掛けをしておこうかと思いまして。≫
「召喚ですか?もしかしてカバンから取り出すことですか?」
≪ええ、そうですよ。もしかして無意識でした?武器に限らず神界からアイテムを取り出す時は全部召喚魔法を使っていたのですよ。それはともかく武器についての取り扱い説明ですよ。≫
ただカバンからだしてたと思っていたのが召喚魔法と知って驚いたのだがそんなことはどうでもいいと流されてしまった、ちょっとショック。
≪さて、これからイサナさんが出そうとしてる武器ですがこれらは今までイサナさんが出したものとは比べ物にならないぐらいの魔力を秘めています。前にも一度言いましたが世界を簡単に亡ぼすことが出来るぐらいの物も存在しています。ですので取り出すときは気を付けて貰いたいのです。一度そちらの世界で実体を持ってしまうとこちらに戻って来るまで非常に長い時間が必要なので。ただ、私が言いたいのはそういう事でありません。私が言いたいのは彼等を恐れないで欲しいのです。彼等はこちらの都合で神界まで連れてこられたのですがいつでも持ち主を求めているのです。もし彼らが主と選んだ人物が受け取りを拒否したとしてもイサナさんだけは常に味方でいてあげてください。持ち主に拒否されることは彼らが絶望することですしその結果どう振舞うか分かりませんので。≫
「解りました。何があっても彼らの味方になれるように気を付けます。」
≪あと、武器を取り出すときはイサナさんのお供の方も連れて行った方がいいですよ。何せカバンを介するとはいえ宝物庫の封印を無理やり解除して召喚するのですから。では頑張ってくださいね~。≫
「え!ちょっとまってフィリア様!」
俺の叫びも空しくまた腕輪はまばゆく輝きだすと色を失った世界にもう一度色が戻ってきた。
両子爵が動いているのを確認して俺は声を掛けた。
「お二人の想いは解りました。このイサナ、必ずやご息女が無事に帰ってこれるような逸品をお持ちいたしますのでしばらくお待ちください。ただし一つお願いがあります。たとえどのような物を持ってきても驚かないでくださいね。」
不思議な顔をしている2人に挨拶をして部屋を出ていく。
フィリア様にはあんなことを言ったけど正直怖いんだけど。
俺は不安な気持ちなままヴィオラとメイちゃんと一緒に一度馬車に戻ったのだった。
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