スキルとギフト

 俺が店で怪音を出した日の夜、宿でヴィオラ先生によるお勉強会が始まった。


「それでヴィオラ、昼に言ってたがギフトってなんだ?」


「それを説明するには『スキル』についても説明をする必要があるのだけど『スキル』って言葉をどこかで聞いたことは無いかい?」


「そういえばロダンさんが『〈鑑定〉のスキル』がどうのこうの言ってたな。スキルって言葉がよく分からなかったからスルーしたけど。」


 あのときは商品の説明をしようとしたら食い気味に遮られたんだよな。

 あの人眼光が鋭いから怖かったな…


「なるほど、『〈鑑定〉のスキル』を持っているとは商人としては幸運だね。では、スキルの説明からしていくけどスキルというのは、使だよ。」


「不思議な効果ってなんだ?よく解らないんだが。」


「この世界では使。こうして話すこともそうだし手を動かすことや歩くやあらゆる行動に微量ながら魔力を使っているのさ。そしてだんだん体が無意識のうちに使っている魔力をより効率的に使おうとしたり魔力の使用量を増やして何かの効果をプラスしたりすることがある。それがスキルの発現さ。たとえば先ほどのロダンさんの話だが商品を見ている時に急に商品の名前などの詳細が文字通り目に見えるようになったのもこれまでいろいろ商品を見ていた経験から体より効率的に、効果的にしようとした結果『〈鑑定〉のスキル』を発現することができたのだろうね。」


「ほぉ~、なるほど。何となく分かった気がする。とりあえず魔力を使って何かすることがスキルなんだろ?」


「まぁ、そうだね。かなりおおざっぱに言えばそう言うことだよ。スキルの発現についてはかなり強制的だったけど僕も主もメイも一緒に見てたけど主は覚えているかな?」


「え!?そんな一大イベントとかあったか?メイちゃんはわかる?」


「はい。あのノドが治った貴族の奥様の事ですね。」


「その通りだよ。あの時は主が持ってきた魔法薬の副作用ではあるけど声に『魅了』の力がついてただろ?あれは立派なスキルの発現さ。スキルの発現と言うのはそれほど珍しいことではないよ。ある日突然現れるものだからね。だからと言って常に待つだけでなくこっちからスキルを覚えようと訓練することは可能だよ。」


「マジで?俺もそんな不思議パワー使えるのか?」


「そればっかりは才能だからわからないね。訓練すればみんな使えるわけでもないのがスキルの面倒な所さ。まぁ簡単な魔法ならボクが教えてあげるよ。」


「魔法?そうだよ、魔法だよ!!物を売ることに必死過ぎて気にしてなかったけど。せっかくファンタジーな世界に来たんだから魔法を覚えないとな。」


「ボクからすれば異世界から来た主のほうがよっぽどファンタジーだけどね。さて次はギフトの説明をしていくよ。ギフトは加護とか神からの贈り物とか呼ばれていてスキル以上によく解らないっていうのが本当の所さ。とりあえず解っている点は。」


「スキルが後天的な物ならギフトは先天的な物なのか。それでどんな物なんだ?」


「ギフトに関してはホントに情報が多すぎてねこれと言って断定できないのさ。例えば主が使ってたように相手の話してる言葉に勝手に合わせるのは間違いなくギフトだし変り種なら常に剣が寄り添う子供の話とかもあるよ。」


「俺のことについては何となく心当たりはあるけどその剣が寄り添う子供ってなんだ?」


「僕も聞いた話でしかないのだけどね。生まれて間もない子供の横に剣が置いてあったそうでそれに気づいた大人が危ないから違う部屋に剣を持って行ったのさ。なのに気づけばその剣がまた子供の横に置いてあってね親は恐ろしくなって教会の偉い人に相談したらそれはギフトじゃないかって話でね。その後大きくなった子供が剣の訓練をするんだけど訓練用の剣は重くて振れないのにそれ以上に大きかった常にそばにあった剣は軽々振ったって続きもあってギフトっというのは技能だけでなく物体としても授けられることもあるって逸話さ。」


「何ともすごい話だが物体ねぇ~ …ちょっと待ってくれよ確かあれがあったはず。」


 俺はヴィオラの話でとあるモノを思い出しカバンをから取り出しそれをヴィオラに渡した。


「主、この巻物は何だい?」


「それが俺の加護。いろいろ書いてあるけど一個一個の効果はそこまで強くはないらしい。」


 俺の説明を受け巻物を読んでいくヴィオラとメイちゃん。

 最初は驚きの顔を浮かべだんだんとあきれ顔になり最後には無表情で黙々と読んでいた。


 ヴィオラは読み終わった巻物をこちらに返してため息一つついてから口を開いた。


「今までいろいろと主に驚かされてきたけどここまで驚かされるとこちらとしてもどう対処したらいいかわからないよ。」


「そ、そうか… そのなんだ… とりあえずスマン。」


「全く何に謝っているのさ。まぁ主が何者であれ。ボクはずっと着いていくよ。主といると退屈することはなさそうだからね。」


「メイもずっと着いていきますよ。地の果てにだって主様についていきますからね。」


 2人の言葉にジーンときた。

 感動とはまさにこのことだな。


「ありがとう2人とも。これからも頼むよ。」


「た!だ!!し!!! ギフトの事はボク達以外には絶対言わないこと。正直主の身柄が原因で戦争が起きかねないからね!!!」


「お、おう。肝に銘じときます。」


 どんなにギフトがあろうとヴィオラの迫力には勝てないことを悟る夜だった。

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