貴族の屋敷にお邪魔します
あの後、すぐに片づけを終えた俺たちはハロルドさんの案内の元貴族の屋敷に向かう。
少しずつ街並みが変わり周囲に大きな邸宅が立ち並ぶエリアになっていくと圧倒されるとともにファンタジー感が溢れてきてかなりテンションが上がってくる。
「いやはや敏腕商人のイサナ殿もそのように目を輝かせているのをみると年相応の少年に見えますね。」
「恥ずかしいところをお見せしました。何分田舎者でこの様に立派な邸宅が立ち並ぶところを見ることがあまりありませんので。」
「気にすることはないですよ。しかし、ここの邸宅は全体的に小型なんですよ。と言うのも…」
この後ハロルドさんがこの街の貴族事情を長々と説明してくれたが要点をまとめるとこうなる。
・この街は王家直轄地なのでここの邸宅は貴族の私有の物でない借家であること
・子供が学園に所属している間だけ借りることが出来、その間に下級貴族や商人の親たちが頑張って他家と交流を持とうとするらしく通称『学園外交』と呼ばれるらしい。
・現在の学園には上級貴族がたまたま多いらしくなんとしてもパーティーを成功させたいらしい。
とのことだった。
元の世界に比べて情報の伝達手段がない世界の上にこの街では家の大きさはほぼ同じなのでパーティーでの料理というのはその家のステータスを見るのにいい判断材料になるらしく手を抜くことが出来ないらしい。
そんな話を聞くうちに件の屋敷についたので馬車を留めさせてもらい俺たち3人は客間に案内された。
なんだかんだあったが何せまだ早朝だ、屋敷の主人はまだ寝ているかやっと起きたぐらいの時間だろう、
・・・
・・
・
しばらくすると屋敷のメイドさんたちが食事を持ってきてくれた。
メイドさんに食事を持ってきてもらうと何だが偉くなった気がすると思ってニヤニヤしてたところをヴィオラに呆れたような目で見られた、神様うちの相棒が冷たいです・・・
なお、朝食のメニューはサラダにスープ、柔らかいパンにベーコンで宿のかったいパンに味気ないスープに比べたら大違いで3人揃って美味い、美味いと食べていた。
このメニューは屋敷の主たちと同じメニューで現代社会では珍しくなさそうなこのメニューもこちらではなかなか難しいらしく特に新鮮な野菜のサラダが出たときはひと悶着あったらしいが俺の紹介も兼ねているのでライザが用意してくれたらしい。
その後客間でのんびり待っていたらハロルドさんが呼びに来たので俺たちは屋敷の主人の待つ部屋と向かった。
向かう途中、簡単に主人について教えて貰った。
『グレイ・カービン』階級は『子爵』で曾祖父の時代に武勲を上げたことで爵位と領地を得たバリバリの武門の一族で当主本人も武闘派で魔物討伐等の実績が多いとのこと。
ちなみにこの国での貴族の階級は上から、公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵となり侯爵から上級貴族と呼ばれるとのこと後辺境伯とか大公とか特殊な物もあるらしいが今回は省略。
屋敷を進みとうとう主人の部屋の前につく、ヴィオラ達に服装など変な所がないか尋ね問題がないことを確認するとハロルドさんがドアを開けてくれたので中に入る。
「初めまして、カービン子爵。私は行商を勤めておりますイサナと申します。この度はお招きいただき光栄で御座います。」
部屋の中央で座っている人物こそグレイ・カービン子爵なのだろう。
一段と質のよさそうな服をきた男性で無駄のない引き締まった体をしておりずっと鍛えてきたためだろう手はごつごつと堅そうでスポーツマンっぽい印象がある。
当主と聞いたので相当な歳かと考えていたが見た目だけでは30代後半ぐらいに見える。
「当家へようこそ。この度は数多くの商品を用意していただき感謝している。そしてうちの家令から一存では決めきれない逸品があると聞いたが見せていただいてもよろしいか?」
俺はヴィオラに合図をして当主の机にコショウの入った箱を置かせる、それを当主は恐る恐る手に取り箱のふたを開けるとまじまじと中を確認した。
「確かにコショウだ。香りもいいので質も良いのだろう。確かにこれ程の物はハロルドでは決めきれないだろうな。ちなみにそちらの希望はいくらぐらいだ?」
「そうですね。見ていただいた通りの品でございますのでこちらとしては小金貨5枚はいただきたいです。もちろんその箱もお付けしますよ。」
小金貨の価格は元の世界だと100万ぐらいだろう、元の世界でも考えられないぐらいの価格設定だがこれには理由がある。
「やはり、それぐらいはするか。むしろこれ程の質を揃えたのだから安い方なのだろう。それにこの外の箱も見事な細工なのでかなりありがたいが・・・少し時間をもらってもよろしいか?」
「高い商品ですので御当主様が納得いくまで待たせていただきます。」
その理由とはこの値段が相場に近いということだ。
「主様、あれは元々元手がかかっていないのでお安くしてもいいのではありませんか?」
とメイちゃんが言ってきたので待ってるがてらにちょっと商人としての考えを教えることにした。
こちらは後ろ盾が欲しいのでもっと安くしてもいいのではないかと言う意見もあるかもしれないが長い付き合いになるかもしれないからこそ相場を守る必要性がある。
なにせここで格安で売ってしまうと今後もうちは格安だと舐められてしまう可能性があるし相場と言うのは一種の証明書でもある。
たとえばとして宝石店を例にしよう。
何十万とする数々のアクセサリーが並ぶ中で店員が『ダイヤの指輪』を持ってきてこれは1万で言いですよと言った場合その商品が本物かどうか信じられるだろうか?
そういう意味でも相場を守るというのはその商品が本物ですよと言う証明ということで大切なのだ。
なので値引きをするとしてもそれ相応の理由が無ければ簡単にしてはいけないという風なことをメイちゃんにも分りやすい言葉で教えてあげた。
「なるほど、ただ売るだけではないのですね。勉強になります。」
「まぁ長々と偉そうなことは言ったけど俺もまだまだ駆け出し商人だからね。メイちゃんもこれからいろいろ分るようになるよ。」
メイちゃんの講義が終わったがまだ当主とハロルドさんの相談は終わってなかったがトントンとドアがノックされ当主の返事も待たずにドアが開いた。
「やっぱり、イサナさんだ。お久しぶり~元気だった?」
「あれ!?ブリッサさん、どうしてここに?」
入ってきたのは俺の護衛を引き受けてくれたブリッサさんがそこにいた。
え、マジでなんでここにいるの?
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