真・自己紹介

 神様が来たせいでちょこっとグダグダした所もあったが仕切りなおして自己紹介をすることになった。


「てか、自己紹介いる?もう大体の秘密ばらしたでしょ?」


「いや、このまま続けるとも。結局まだ何もわかってないじゃないか!」


 やけっぱちになっているヴィオラと首を縦に振るメイちゃんに押されてそのまま自己紹介の続きをすることになった。


「まぁ、そこまで言うならするけどね。とりあえず俺の名前は【大入 勇魚オオイリ イサナ】苗字、名前の順になる。さっきグランフィリア様から聞いたと思うけど違う世界からセキトと一緒にやってきた。種族は人間。こんなところだけど他に聞きたい事とかある?」


「後は得意な武器とか使える魔法とかスキル紹介は鉄板じゃないか。」


「いやいや、元の世界は武器とか魔法とか使わないからそんなの紹介できないぞ。そもそも俺は商人として呼ばれたから戦闘とか期待するなよ。」


「そうなのかい!?女神に選ばれるぐらいだから勇者並みの戦闘能力でもあるのかと思ったのだけどね。当てが外れたね。」


「悪かったな期待外れで。そう言うヴィオラはどうなんだよ?」


「フフフ、ボクかい?ボクはナイフも弓も使えるし精霊魔法だって使えるよ。ホントに主はいいお買い物をしたね。」


「お前なんでそんなにいろいろできるのに奴隷なんかになったんだよ… しかも理由が家賃滞納じゃなかったか?」


「それには理由があるのさ。ボクはここより北西の町を拠点に冒険者稼業兼魔法の研究をしていたのさ。そこで町の有力者にちょっと目をつけられてしまってボクを手に入れたい有力者が借家の権利を買い取ってね。家賃を一気に上げられてそのまま借金奴隷というわけさ。でも、捕まるより先にボクは契約書を奪って適当な商人の馬車に潜り込み逃げたのさ。ちなみにその時にメイと出会ったのだよ。」


「お前ふざけた内容で奴隷になったのかと思ったら結構波乱万丈な理由だったんだな。」


「どうだい、ボクを見直したかい?人を魅了する自分の美しさが怖いね。」


 確かにヴィオラは魅力的と言っていいだろう。


 空のように鮮やかな青色の髪はとても綺麗だし褐色の肌は健康的な魅力があるし顔立ちも中性的というのか男女ともに隔てなく人気が出そうなイケメン具合なんだが、だが何というか話し出すとそのイメージが崩れる。

 よく言えば飄々としている悪く言えば胡散臭い、そんな雰囲気がどうしてもヴィオラからは出てるんだよな…


「どうかしたかい主?もしかして主もボクにメロメロなのかな?ホントに罪作りな女だねボクは。」


「いや、そんなことは無いから安心してくれ。ところで種族はエルフでいいのか?」


「ん?あぁ、そうだよ。よくダークエルフとか言われるけど基本的にダークエルフという種族はいないのだよ。ボク達エルフは日焼けしたら肌が黒くなりがちだからそれを見てほかの種族はダークエルフが存在すると勘違いしたのだろうね。それにそういうエルフは排他的な森住みを辞めた連中が多いから別物扱いされたのかもしれないね。」


「なるほど。 でもその褐色の肌はすごく似合っていると思うけどな。」


「フフフ、主は本当に口がうまいね。じゃ、次はメイの番だよ。」


「は、はい。メイの得意な武器と言いますか術と言いますかとりあえずお人形さんを操ることができます。」


 人形が武器?メイちゃん結構力強いから投げたりするのだろうか?


「【傀儡術くぐつじゅつ】って言うのだけどその様子だと分ってないようだね。一度見たほうがいいかもしれないね。」


 ヴィオラが説明をしてくれるとメイちゃんが30㎝ぐらいの小さな人形を床に置くとその人形が流暢に踊りだした。


「おお~ 人形が踊ってる。メイちゃんがこれを操ってるの?」


「そうです主様。簡単な命令なら3体ぐらいまで一度に操れますが戦闘になると1体でいっぱいいっぱいです。」


「メイはそうやって謙遜しているけど結構すごいことなのだよ、主。傀儡術は細かな魔力操作が必要だからかなり難しくてそうそう術者はいない。メイの歳で操れるのは相当なことだよ。」


「そうなのか。メイちゃんはすごいな。」


 なんとなく頭をなでるとはにかみながら嬉しそうにするメイちゃん。


 胸が温かくなる様な何だろうこの気持ちは、これが父性ってやつなんだろうか。


「ところで主様は、【鬼】が怖くないのでしょうか?」


 頭を撫で終ると伏し目がちにメイちゃんが聞いてきた。


「さっきも言ったけど別段多種族だって怖くないよ。流石に物凄く牙が鋭くて、目が血走っていて、筋肉隆々の3mぐらいだったらビビるだろうけどメイちゃん見たいに可愛かったら歓迎だよ。」


 そう、メイちゃんは可愛いのだから全くもって問題はない。


 黒いおかっぱの髪にガラス球のような綺麗な赤い瞳は人形の様だとたとえていいぐらいだしおでこから生えてる小ぶりな2つの角がいいアクセントになっていて更に可愛いのだ。

 まさに可愛いは正義、サブカル大国から来た身としては大歓迎である。


「主、流石にメイに手を出したら容赦はしないよ。」


「安心しろ、ヴィオラ。YESロリータNOタッチの紳士大国からやってきた俺にそんな事案は存在しない。 あと、メイちゃんが希望するなら親元に帰してもいいと思うけどどうする?」


「主様の心遣いはとてもありがたいですが、実は故郷の記憶がないのです。」


「え?ヴィオラどういうこと?」


「そこで僕に振るとは分ってきたね、メイのここを見て欲しい。」


 そういうとヴィオラはメイちゃんの鎖骨あたりを指さす。

 そこには陰陽と言えばいいだろうか、勾玉が2つ組み合って円になっている模様があった。


「これは封印術の類の物だとは分るのだけどどのような術式なのかまではちょっとわからないのさ。前の商人にも聞いてみたけど信頼されている相手から託されたとしか言ってなかったから詳細は不明だよ。」


「じゃぁ、メイちゃんの出身とか全く分からないのか?」


「いや、それについてはある程度心当たりはある。【神武皇国しんぶこうこく】と呼ばれる島国があってね。そこは傀儡術やこの独特な模様を用いる術が主流らしいのさ。ただつい最近そこのトップが崩御してちょっと面倒な事になっているというのは聞いたことがあるよ。」


「なるほど。なら国が落ち着いたら向かってみるか。そうしたらメイちゃんの親御さんがわかるかもしれないし。」


「主様、メイなんかの為にありがとうございます。」


「メイなんかじゃないよ、メイちゃんの為だから向かうのさ。まぁいつになるかはわからないからしばらくは我慢して欲しい。」


「はい!それまでメイは精一杯お勤めいたします。」


「じゃ、明日から早速販売していくから頑張ってくれ。」


「わかりました!メイにお任せください。」


「おいおい、ボクもいるのだからボクにも期待してほしいな。」


「分かってるよ。2人とも期待しているからな。」


 こうしてなんだかんだあった自己紹介も終わった。


 さぁ、明日から商人ライフの始まりだ。

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