それぞれの正体
ダニエル少年と別れた後、真っすぐ宿に帰るとすでにヴィオラとメイが寛いでいた。
「ああ、主やっと帰って来たのかい。随分と長かったけど何をしてたんだい?」
「途中で商品を買ってくれる人がいてさちょっと商談してたら思った以上に時間がかかっちゃったよ。本格的に商売するのは明日からにするけど今からどうする?飯にでも行く?」
「ご飯もいいとおもうけどさっきメイと話し合ってねお互いにちゃんと自己紹介をするべきだと思うのさ。」
「自己紹介ってあった時にしただろ?なんで今更?」
「そうだね、確かに名前ぐらいは言ったね。でもそれでボクについて分かったかい?メイの事もそうさ。実はあんまり分かってないだろ?これからボク達のご主人様になるんだからもっと詳しく知るべきじゃないかい?」
「あ~、そう言われるとそうだな。あの時はドタバタしてたから名前ぐらいしかお互い言ってなかったもんな。これから一緒に働くんだ互いを理解するのは必要かもしれないな。」
「だろう?それに主となる君には早急にボク達の問題点も知っていて欲しいしね。」
「問題点?まさか他に借金でもあるのか!?」
「ハッハッハ、金銭的ことじゃないから安心したまえ。もっと個人的というか個性的というべきかな。そういうわけだからメイこっちにおいで。」
ヴィオラがメイちゃんを呼ぶとトトトっとやって来てヴィオラの足の間にポスンと座り込んだ。
「さて、主。今のボクたちに何か違和感はあるかい?見た通りの感想を言って欲しいな。」
急にそういわれてもな…前と同じようにヴィオラは水色のショートヘアで片方の目は髪に隠れて見えないけど反対の目からきれいな水色が見える、肌は褐色で健康的だし前は暗くて分かりづらかったけど体系はスレンダーで美人って感じだしメイちゃんも黒い髪におかっぱの髪型で眼の色は真っ赤だけどそれが今着てる赤い着物とよくマッチしてるって感じだな。
「ああ~ダメだ。さっぱり分からん。今日も変わらず2人とも美人だぞ。」
「美人って、もう、そんなお世辞はいいんだよ今は。いや、まぁ、そう言って貰えるのは嬉しいけど………ってそうじゃない!そうじゃないんだよ。今の状態はいうなれば問題が無い状態なのさ。だから、次に見せる状態が本題だから今の状態をよく覚えていて欲しい。」
そういうとヴィオラは片方の手で自分の髪をかき分け耳が見えるようにし反対の手でメイちゃんの髪をかき分けおでこをみえるようにした。
<精霊よ、我らの偽りの姿を解け>
ヴィオラが小さくつぶやくとヴィオラの耳は長く先端がとがったようになりメイちゃんのおでこからは小さな2つの角が生えていた。
間違いなく2人はエルフと鬼なのだろう実物を見るのは初めてだがこれらはわざわざ2人から説明を受けなくても前の世界でさんざん見て、聞いて、妄想したからよく知っている。
「これで分かったと思うけどボク達は人間じゃない。それでも君はボク達の主人になるっていうのかい?」
う~む、まだこの世界の人種差別的な問題は良く解らないのだがあまり大っぴらにするべきでは無いことは魔法的なもので誤魔化してた点や今の震えているヴィオラの手や俯いてるメイちゃんを見たので良く解る。
だから俺は震えるヴィオラの手を取り真っすぐ見詰めて一言告げた。
「それがどうした?」
その一言を聞いた2人は呆気に取られた表情で俺を見た。
「別段俺はお前たちが何者であろうと気にしないぞ。そもそもこの国の人じゃないしな。俺は2人の主としてお前たちを守る義務があるからな。だからお前たちが人であろうと無かろうと全く持って関係ないぞ。」
「今はそうかもしれないけど君は教会の信徒なのだろう。もしかしたらこれから先考えが変わってボク達を捨てるかも知れない。ボクはそれが怖いんだ。」
まさか教会に寄ったことが裏目に出るとは、かと言って簡単に俺の事を話すわけには行かないしでもこの2人を納得させるには自分の事を包み隠さず伝えるべきなんだがそもそもとして〈俺、異世界人なんだ。よろしく!〉って言っても信じてもらえる気がしないしな。
≪イサナさんの事については私がご説明しましょう。≫
腕輪から声が聞こえたかと思うと突然まばゆい光を放ち始めた。
光がある程度収まったかと思うとSF映画に出てくるホログラムのような感じで大きなグランフィリア様が現れていた。
≪初めましてヴィオラさん、メイさん。私の名前はグランフィリアと申します。すこし貴女方の様子を見させてもらいましてイサナさんの状況を説明するには依頼主の私が直接説明したほうがいいと思いお邪魔させていただきました。≫
頼れる神様の登場で2人はポカーンとしているがこれは仕方ないだろう、反対の立場だったら間違いなく俺もあの状態になる自信がある、寧ろあの状態にならない自信がある奴がいたら会って見たい。
ちなみにグランフィリア様は楽しそうにかつ朗々と俺の事を説明してくれているが2人はまだちゃんとこちらの世界に帰ってこれていないようだが、てかグランフィリア様何気に俺が魔導書を売ったとこ見てたんすね〈早速お願いを聞いてくれて頼れる方です〉とかちょっと持ち上げ過ぎじゃないですか、俺メッチャ恥ずかしいんですけど。
≪………という事でしてイサナさんご本人が説明し難そうだったので僭越ながら私の方からご説明させていただきました。それにイサナさんはまだ教会の教えとか知りませんので安心してくださいね。あとこれ、お2人用の旅のお守りですので良ければ使ったくださいね。では皆さん仲良く頑張ってくださいね。それでは~≫
そう告げるとグランフィリア様の消えていき床には2つの青い宝石のついたお守り(見た限りでは俺の腕輪についてる宝石の小さいバージョンだ)と未だに呆然としている2人が残された。
とりあえず俺は神様からのお守りをいつまでも床に置いておくわけには行かないのでそれを拾い上げ2人に渡そうとすると凄い勢いと力でヴィオラとメイちゃんが俺の腕を握った。
「ああああ、主。き、君は御使いだったのかい!?」
「ててて、天神様が、ぬぬ、主様が天神様の使い!!」
ガタガタ震えながらなんとか声を出した2人なのだが腕メッチャ痛いから離してほしい、いやマジで離して、ほんとメイちゃんちっちゃいのにめっちゃ力強い、イタタ、
イタタタタタ…
・・・
・・
・
それからなんとか2人を落ち着かせることに成功した俺は真っ赤になった腕を摩りながら2人に話しかけた、てか明日腕腫れてたらどうしよう。
「まぁなんだ俺に関してはグランフィリア様の言ってた通りだ。異世界人、こっちだと渡り人とか言うんだっけか?要するにそれだ。ちなみに、セキトも俺の世界から来ているがセキトは俺なんて比べ物にならないほど凄かった英雄が乗ってた馬だから普通の馬と思わないでいて欲しい。」
「ああ、確かにあの馬は見るだけで凄かったな。そうか、では神馬なのかあの子。」
「そうですね。馬車を曳いている時もこちらを気遣ってたように感じましたは気のせいじゃ無かったのですね。」
「そう言うこった。ちなみに、会話できるから今度話しかけてみるといい。」
「そうか、話すこともできるのか…なんかもうボクが悩んでいた事が途轍もなくちっぽけなんだなって実感したよ…」
「あ~なんだその…ドンマイ?」
また少し凹んでいるヴィオラを見てまだまだ自己紹介は荒れそうだなと感じたのだった。
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