助けて、神様を
「はい、これで申請は終わりですね。これから頑張ってくださいね。それと頼まれていた商人のご家族ですがどうやらいないようですので商品はギルドの規約通り拾われた方の物ですのでそのまま使ってください。」
「分かりました。わざわざありがとうございました。」
ふぅ~、無事商人ギルドに加入出来たから明日から早速商売だな。
俺たちは街についてから早速奴隷市場と商人ギルドに訪れて諸々の手続きを終わらせていた。
これで名実ともにヴィオラとメイのご主人様で一端の行商人になれたのだ。
「まさか主が商人ギルドに未加入とは思ってもいなかったよ。で、これからどうするんだい?」
「田舎から出てきたからな商人ギルドとか無かったんだよ。俺はちょっと教会によるから案内された宿に先に向かっててくれ。」
そうして俺はヴィオラにお金を渡し商人ギルドから出て行った。
その時に後ろからヴィオラが何かを言って気がするが、よく聞こえなかったのでそのまま教会に向かった。
・・・
・・
・
街を歩いて数分、目の前に教会が見えてきた。
そこまで大きくはないが厳かな雰囲気が漂う建物で、中に入ると礼拝者用に長椅子が何個か置かれていたが今は俺以外に誰もおらず木で出来た窓越しの日差しが教会を一段と神秘的に見せた。
そういえばお祈りってどうすればいいのだろうか、流石に二礼二拍手一礼ではないだろうしな…
いろいろ思い出して見たものの一向に分からず日差しが指しているところに膝をつき手を合わせて黙祷してみた、これであっていればいいのだけど…
「…サナさん、イサナさん目を開けてください。」
俺を呼ぶ声を聴いて目を開けるとそこには鮮やかな緑色の長い髪と瞳を持つ女性が立っていた。
「わざわざ異世界から来ていただきありがとうございます。私はこの世界の主神グランフィリアといいます。フィリアと呼んでくださいね。」
「え、ああ、自分はオオイリ イサナといいます。その…フィリア様、ココは何所なのでしょうか?」
辺りを見渡すが何もないのである。
そう、何もない真っ白な空間、これが雲の上とか光眩い所なら神様の国かなとも思うが真っ白で何もない俺とフィリア様だけの空間なのだ。
「ここは特に意味もない空間ですよ。私が挨拶と担当に会う前に簡単に状況を説明したかったので一時的に作り上げたエリアですので気にしないでください。」
そういうとフィリア様は説明を始めてくれた、基本的なことは前の世界で聞いていたが事態は思っていたよりも深刻だった。
「…それでですね造った在庫が一杯になるとどういう問題があるかと言いますと簡単に言うと神界のお仕事が出来なくなるんですよ。神界は簡単に言うと一つのフウセンだと思ってください、そしてそこに住む我々神や作られた道具等もそこに入ります。しかし、ここの神の工房がひっきりなしにあらゆるものを作りすぎた結果!もう神界はパンク寸前なんです。自我のない道具や精霊の宿ってない道具はそんなにかさ張らないのですがこの世界に長く居続けると自我のない道具も自我を持つようになりだんだんとかさ張ってしまいます。かと言っても限界ギリギリなので工房を止めようとしてもそこに所属する子達は何かを作ることで存在を保とうする下位の存在が多いので止めることもできないのです。だから、すこしでもこちらの世界の在庫を人間界に渡すことでこちらをスッキリさせようと思うのです。」
そんな説明を改めて現地の神様から聞くといかに切羽詰まっているのかが良く解る。
「では、説明は一通り終わりましたので担当者に会ってもらいますね。さっき言ってた工房のトップでして神界で造られる物は全てこの工房で生まれるんですよ。では、いきますよ~」
フィリア様がパチンと指を鳴らすと真っ白な空間が一瞬にしてどこかの書斎になりそこにはすっごいマッチョで髭がモジャモジャな単眼のオジサンがいた。
「よく来てくれたのぅ、異世界の救世主。ワシの名前はガンドラダ。一応この工房のトップとなってはいるが正直職人が各々好き勝手に造っとるからあんまり関係ないんじゃよな。まぁそれはともかくお主に卸すアイテムの説明を簡単にさせて貰うわい。種類は武具に始まり魔道具、薬、その他趣味で作ったもの等ありとあらゆる物があってな自我のない物や精霊や妖精が宿ってない物はどんな奴に売っても構わん。これらは数打ちじゃからとっとと捌いて欲しいんじゃよ。そして自我持ちと宿り品なんじゃがこやつらは持ち主を自分で選びたがるから選んだ相手に渡るように手を尽くしてほしいんじゃ。難しいと思うがよろしく頼むぞ。」
「イサナさん、私からも改めてお願いします。難しいと思いますが頑張ってください我々も最大限のサポートを致しますので。それとアイテムを渡した後の責任などはイサナさんは気にしないでください。正直な話在庫の中には国を潰すぐらい造作もない物もありますがそこはもう使い手の責任ですので。もちろんイサナさんやその周りの人たちに被害が及ばないようにもしますので大丈夫ですよ。」
「そういうことじゃ、とりあえずドンドン在庫を捌いて行って欲しい。では、最後にこの腕輪をつけて欲しいんじゃ。これはワシらとの連絡装置じゃ。これを使えばわざわざ教会に行かなくてもワシらと連絡がつくようになるからの。あと、お主のカバンに自我持ちが入るように設定を変えといたからの自我持ちの声がこれから聞こえると思うが頑張ってくれ。」
そう説明を受けて大きな青い石がついた腕輪を右腕に付けると、一瞬意識が遠のいた。
ハッとして顔を上げるといつの間にか教会に戻ってきており夢だったのかなと思うものの右腕についた腕輪がキラキラと光を反射していた。
これは思ったよりも面倒ごとを引き受けたかもしれないなと思いつつ教会をでるのであった。
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