街道を進む

 翌日、俺は護衛を引き受けてくれた二人とともに学園都市に続く街道を進んでいた。


「イサナさんは上手に馬に乗りますね。私よりもうまいんじゃないですか?」


「いやいや、騎士のマルチナさんには勝てませんよ。」


 マルチナさんに返事をしつつセキトを撫でる。


「そうだよね~、その子に乗ってたら上手くならざるを得なかったと思うよ。昨日少し乗らせてもらったときに手綱を持ってるんじゃなくて持たされてるってすぐわかったもんね。それでも、あの風になったような速さそれでいて全くぶれない重心。あぁ~凄かった。」


 若干トリップしつつあるブリッサさんにマルチナさんと呆れつつカッポカッポと3頭の馬の足音を聞きながらのんびりと街道を進んでいた。


 ・・・

 ・・

 ・


「そろそろお昼にしましょうか。」


 宿場町を出て数時間太陽も頭上のほうにあり飯時にはいい時間だ。


「では用意しますのでその辺りで休憩しててください。」


 そういうとカバンから調理器具一式と本日使う材料を取り出した。


「何かお手伝いしましょうか?」


 マルチナさんがそう聞いてきたので薪になりそうなものをを取りに行ってもらった。

 前の世界の時にキャンプ場でアルバイトしていたのでアウトドアはそこそこ得意だったりする。

 そのあたりの大き目な石を集め簡易的なかまどを作りそこに薪を置きその上に鍋を置く。

 しまった、火種がないと思いカバンを漁ろうとするがその時に腰についている小槌が目に入る。

 出来たならいいなぁ~ぐらいの軽い気持ちで、と、念じながら小槌を振るとボッという音ともに勢いよく薪に火が付いた。

 この出来事を見られてないか慌てて二人のほうを見ると楽しそうにお喋りしていてこっちを見ていなかったのでホッとため息を入れ料理を進める。

 その後は、何の問題もなく野菜たっぷりしかも腸詰入りのスープが完成しそれとパンを用意して二人に声を掛けた。


「すご~い、外でこんなにおいしいスープが食べれるなんて思っても見なかった。」


「そうですね。しかも、パンも保存用の固焼きパンじゃなくて普通のパンですよ。イサナさんよく用意できましたね。」


「そりゃぁ、商人ですし物を用意するのは朝飯前ですよ。それに護衛をしてくれる方に美味しくないものを提供するのは俺のポリシーに反しますので。あ、おかわりいります?」


 何せ神様印のすんごいカバンがあるのだ、そこに食料を入れておけばいつでも新鮮しかも冷めることもぬるくなることもないのだ。

 ご飯の用意なんて朝飯前どころか数日前には終わっているのさ。

 ちなみに、その後も護衛の二人はスープのお代わりして美味しそうにを食べていた。


 ・・・

 ・・

 ・



 ご飯が終わりまた街道をのんびり進んでいると急にセキトが嘶いた。


『イサナ殿、この先で争っている気配があります。注意をされたほうがよろしいかと。』


 そうこちらを振り向きながらセキトが押しえてくれた。

 俺は一度頷きその事を護衛の二人に伝えた。


「マルチナさん、ブリッサさんこの先で何か問題が起きてるみたいです。注意してください。」


「イサナさん、それホント?」


「はい、セキトが何かを警戒しています。こういう時は必ず何かが起きてます。」


 俺の答えを聞くと二人は互いの方を向くと一度頷き真剣な顔でこちらに振り向いた。


「分かりました。では私が先行して確認をしてきますのでイサナさんとブリッサは後から来てください。」


 マルチナさんはそう言うと馬腹を蹴り上げ先に走って行った。

 その後少しも間を置かずにマルチナさんの威勢のいい声と男の叫び声が聞こえた。

 その声を聞いた途端ブリッサさんも走って行き俺もそれについて行った。

 その先には馬車の近くで倒れている男たちとマルチナさんを取り囲んでいる男たちがおりその集団の中にブリッサさんも飛び込んでいった。

 一瞬のうちに穏やかな街道は怒号が飛び交う修羅場におり初めて見るその状況に俺は戸惑っていたが少し離れたところで弓を用意している奴が見えた。


「セキト、奥で弓を持ってるやつがいる。」


『心得た。拙者に任せあれ。』


 そう答えるとセキトは急に走り出し連中めがけて突っ込んでいった。

 マルチナさん達を囲んでた連中は猛スピードで突っ込んでくる巨大な馬を慌てて避けたが弓持ちは咄嗟に動けずそのままセキトに跳ね飛ばされた。


「頭がやられた。逃げろ~。」


 男の誰かが叫ぶと一目散に賊たちは逃げていきマルチナさんが追撃しようとしたがブリッサさんがそれを止めていた、へぇ~ブリッサさんのほうがストッパーなんだとか考え俺はしばし現実逃避をしていた。

 その後馬車の御者で倒れてた人がいたがすでに死んでおり馬車の荷物を確認しようとするとそこにはなぜか鉄格子が嵌められていた。


「ブリッサさん。この国は馬車に鉄格子を付けるのが当たり前なんですか?」


「あはは、そんなわけないじゃない。こういうのは大体奴隷か犯罪者だよ。」


「奴隷!?犯罪者!?」


 俺はびっくりして大声を出すと鉄格子の方から物音が聞こえた。


「面倒ごとはもう終わったのかい?」


 鉄格子を振り向くと薄暗い荷台の奥のほうに女性の上半身が見えたのだった。

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