宿場町にて
『イサナ殿、最後の宿場町が見えてきましたぞ。』
多くの開拓村に寄りながら俺たちはゆるゆると学園都市に向かっていた。
別段急ぐ旅でもないしいろいろと確かめたいことがあって当初考えていたよりかは遅れてはいるがその分の価値はあった。
まず第一に俺の肉体なのだがかなり凄いことになってる。
もとはお世辞にも運動が得意とは言えない体だったのだがこの体になってから体も思うように動くしかなり疲れづらくもなっている。
もしかしたら魔法とかも使えるかもと思ったがそもそもどうやって魔法を使えるか分からないので試しようがなかったのである、残念。
次にだが何と俺用の武器があったのだ、いやアレは武器と呼んでいいのか分からないがまぁ俺用のアイテムなのは間違いがない。
【打ち出の小槌 イサナカスタム】
・こことは異なる世界の神が異世界に赴く自らの使徒のために用意した神器
価値不明
〔いろんな力を入れといたからいろいろ試してみてなby福の神一同〕
加護の【目利き】によって名前と説明が見れるのだがそれですら把握できないのがこの小槌のようでどんな力が秘められているのかは今のところ不明だ。
(ちなみに最後のセリフは元の世界の文字で書かれていた。本当に至れり尽くせりでありがたい神様たちである)
とりあえず今のところ分かっている能力として大きさを変えられるようで漫画とかゲームに出てきそうな大きな両手持ちにしてみたり片手で持つ木づちぐらいにしてみたりと色々試してみた。
ちなみに、大きくしてもあんまり重くなかったので試しに地面を殴ってみたのだが見事に陥没した。
恐らく加護の力であんまり重みを感じないだけで実際は見た目相応なのだろう。
今は小槌サイズにして腰にぶら下げている、まさか異世界に来て剣を腰にぶら下げる前に小槌をぶら下げるとは思ってもいなかった。
・・・
・・
・
宿場町に到着し宿屋を確保したらとりあえず酒場に向かう。
初めていくときは緊張と興奮で凄かったが同じことを数回もしたら慣れてくる。
というよりも基本的に酒場以外に行くようなところが無いのだ。
開拓村では宿と食堂兼酒場が一軒あればいいほうで場所によったら存在しないしこの宿場町ですら食堂兼酒場つきの宿は非常に少ない基本的に宿=寝るだけなのだ。
後、この世界なのだが何となく女性のほうが多い気がする。
そうはいっても男4に対して女6か男3女7ぐらいの比率なのだが詳しく聞いたわけではないのでたまたまかもしれない。
「すみません、その大きなカバン。行商の方ですか?」
色々考えていたところ後ろから声を掛けられる。
この主は10代後半ぐらいの女の子だった。
金色のショートヘアに青い目の分かりやすい西洋人のような見た目で金属製の鎧を身に着け腰には剣を差していた。
「ええ、そうですよ。もしや騎士の方ですか?」
「目指してはいますが今はまだ騎士学校の生徒ですよ。もし余裕がありましたら保存食を売っていただきたいのですがよろしいでしょうか?」
「売るのは構わないですが理由をお聞きしても?」
「実は騎士学校の卒業訓練の途中でして後は学園都市に帰るだけなのですが保存食を切らしてしまったのです。ほんとはここで買う予定だったのですかどうやら先日大きなキャラバンが通ったらしく保存食が無かったのです。ここから学園都市までは後1日ぐらいなので最悪は食べずにでも行けるのですがやはり余裕は持っておきたいので…もちろん訓練とはいえお金はあるので支払いは問題ないです!」
恥ずかしいのか途中すこし声は小さかったが説明はしてくれた。
だが、これは逆にチャンスなのではないだろうか、俺も学園都市に向かう途中だし護衛になってくれないか交渉してみた。
「ええかまいませんよ。それでお代のほうですがこちらもちょうど学園都市に向かう予定でしたのでその間の護衛をしてくれないでしょうか?そうしていただければちゃんと食事は出しますよ。」
「もちろん引き受けますよ。あ、ただ実はもう一人いるのですが大丈夫ですか?」
「ええ、もう一人ぐらい増えても余裕はあるので大丈夫です。時間があるのでしたら今から挨拶に伺いましょうか?」
「そうですね、あの子もいろいろ探しているかもしれないので一緒に行きましょう。あ、それと私の名前はマルチナです。短い間ですがよろしくお願いしますね。」
と、いうわけで護衛ゲットすることが出来た。
ここまでくる道中の村でいろいろ食べ物は買い付けているし神様の用意してくれたスーパーバッグのおかげでいつでも新鮮食べ頃なのだこの先食い物には困ることはなさそうだ。
マルチナさんの案内で酒場を出て宿場町を歩いていると「すげー」とか「かっこいい~」とかのセリフが聞こえてきた。
するとマルチナさんが先に行きますと告げると走って声のほうに向かって行った。
何となく察したがとりあえず歩いてマルチナさんのほうに行くとマルチナさんが黒髪のロングの女性に何やら言っているのが見えた、やっぱり知り合いだったか。
近寄るとマルチナさんもこちらに気づいて恥ずかしそうにこの子が相棒ですと紹介してくれた。
「ああ、マルチナから聞いたよ。
「ええ、行商のイサナと言います。短い間ですがお願いします。ちなみに何があったんですか?」
「そうそう、見てよ。この馬、この赤くて立派な馬。王都ですら見たことないのにこんなところで見れるなんて凄いと思わない!?いいな~、かっこいいな~、一度でいいから乗ってみたいな。」
どうやらさっきの大きな声はセキトに対するラブコールだったようだ。
対するセキトは困っているようだったが自分の馬を褒められるのはかなり気分が良かった。
『セキト、よかったら彼女を乗せてやってくれないか?無茶なことはさせないし多分乗せないとずっとここに張り付きそうだし…』
『承知しました。それに、彼女の声でほかの馬も迷惑していますので…』
「あ~、その馬俺のなんでよかったら少し乗ってみます?」
「いいですか!是非!!!」
セキトに承諾をとってからブリッサさんに提案したら顔がくっ付きそうな位置までのめり込んで返事してくれた。
あんまり甘やかさないでくださいよ、とマルチナさんが言っていたが彼女もちらちらとセキトのほうを見ていたので彼女にも良ければどうぞと言っておいた。
これで護衛が円滑に進むならば安いものだし遠乗りでもないので直ぐに満足するだろと思っていたのだが彼女たちは日が暮れるギリギリまでセキトに乗っていた。
騎士の馬に対する思い込みの凄さを実感し今日は宿場町で一泊するのだった。
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