第1章 始まりと出会いの街

新たな世界

 扉の先は木漏れ日のさす森だった。

 一応後ろを振り返ってみると当然そこにはもう扉が無く改めて異世界に来たのだと実感する。

 ここに例の【馬】いるはずなんだけどと思い周囲を見回してみると茂みのほうからやってきた。

 どこぞの世紀末覇者が乗ってそうな立派で大きな真っ赤な馬がやってきた。


『お待ちしておりました。御使い様。』


「しゃ、しゃべったー!!」


『正しくは念話のようなものでございます。神々から御使い様を支援するため必要な能力は与えられておりまする。』


「お、おう。流石は神様。やることが半端ないな。とりあえず人がいるところに行きたいんだけど分かる?」


『先んじてこの辺りの土地は偵察済みです。近くに村がありましたのでそちらに。』


「了解、なら早速向かおうか。ところで俺乗馬したことないんだけど大丈夫かな?あとなんて呼べばいい?」


『乗り方については道中教えまする。名はお好きにお呼びくだされ。』


「そうか、じゃぁさ。【セキト】で良い?正直それ以外思いつかばないんだ。」


『如何様にも。では参りましょう。』


 そういうと小さくセキトは嘶いて俺に乗り方を教えてくれる。

 何となくだが【セキト】と呼ばれたとき嬉しそうに見えたのはこちらの勘違いかな。


 ・・・

 ・・

 ・


 セキトに教えてもらいながら森を抜ける。

 街道に出てからはセキトも速度を上げドンドン進んでいく。

 全身で風を切り、次々に代わる風景を見ながら自然豊かな道を走るのはとても楽しい。

 普通に考えたら乗馬の初心者がこんなにも速度を出せるわけがないのだが恐らくそこは神様パワーが効いてるのだろう。


『御使い様は筋がいいですな。僅かな時間でここまで乗り慣れるは流石であります。』


「そりゃ、乗る相手から教わるんだからな上達しない訳がないさ。あと、御使い様って恥ずかしいからほかの呼び方にならないかな?」


『そうでありますか?では、何とお呼びしましょうか?』


「イサナでいいよ。俺は【オオイリ イサナ大入 勇魚】っていうからさ」


『ではイサナ殿とお呼びします。イサナ殿村が見えてきましたぞ。』


 セキトと話しながら街道を疾走していると遠めに家が見えてきた。

 目に見える家はどんどん大きくなって行くにつれ心臓の音が大きくなってくる。

 うわ~~緊張してきた。


 ・・・

 ・・

 ・



「そこの者、止まれ!」


 門番らしき人から大声で指示が飛んできたので大人しくそれに従う。

 何かおかしなことがあったかセキトと話し合っていると槍を持ち革の防具っぽいものを身に着けたおじさん達がやってきた。


「お前ひとりか?いったい何者だ?」


「え?見ての通り一人で商人ですけど…何かありました?」


「何があったのはそっちではないのか?あんなに馬を走らせてやってきて。」


 どうも話がかみ合わないのでしばらく話してみると何という事はない、向こうの勘違いだった。

 俺らはただ単に気持ちがよかったから疾走してたのだが向こうから見れば土煙がやってきたので賊や魔物かもしれないと思っていたがいざ目にすると若者が一人、緊急事態かと思い慌てて武装してやってきたとのことだった。


 改めて聞くとこの世界も自然豊か平和な世界と言うわけではなく賊や魔物がでる危険な所なんだと再度認識させられる。

 不安に感じるところもあるが今は正直どうしようもないのでその考えは置いといてこの村で商売できるか話をしないとな。


「しかし、立派な馬だな。騎士様が持ってそうな馬だぞこれ。」


「俺には勿体ないぐらい立派な馬ですよ。だから、こいつに負けないよう早く立派なにならないといけないんですよ。」


「言うじゃないか坊主。でも、見ての通り田舎の開拓村だからそんなに金はねぇぞ。物にもよると思うがあんまり期待するなよ。」


「売れなかったらそれは俺の腕が足りなかったってことですから気にしないでください。ちなみにこの村に商人の方はいますか?」


「いや、うちにはいないな。時たま行商が来るぐらいだな。ちなみに坊主は何を売ってるんだ?」


「そうですね。今なら武具と薬と塩がありますよ。」


「なに!塩があるのか。それはありがたい最近行商が来てなくて不足気味なんだ。よし、村長に案内してやるからついてこい坊主。」


 なんやかんやで村に入れることが出来た。

 それに塩不足という事で商売も出来そうな雰囲気だ。

 ありがとう、髭の綺麗な神様。


「初めまして商人殿、先ほど門番に聞きましたが塩を売ってくださるとか。」


「ええ、塩は沢山ありますのでご満足できる分はあるかと。ですので村の一画をお借りしたい。ちなみにいつもはどれぐらいの値段で買ってますか?仕入れの関係で必ず守れるか分かりませんが参考に教えて欲しいです。」


「そうですね。大体ですが塩と銅貨の重さが同じぐらいの値段で行商達は売りに来ますな。ですので毎回測ったりするのでどうしても時間がかかってしまったり岩塩で売りに来ますのでこちらの欲しい量と噛み合わないことも多々あります…」


「なるほど…では、まずこちらを見てもらいのですが」


 そうして、俺はカバンから1合升にいれた塩を見せた。

 そう、俺が今回出したのは良く食卓塩としてみる粉状の塩。

 先ほど岩塩と言ったのでこれでも受け入れてくれるかの確認とお会計を迅速にするためにこっちで売りたいのだ。


「今回売ろうと思っている塩はこのように砂の如く細かくなった塩なのですがよろしいでしょうか?値段も升1個あたりでつけますのでわざわざ測る心配はないかと」


「いえいえ、元からそのように細かく砕いて準備してくれる商人はおりませんのでとてもありがたくむしろこちらからお願いしたいぐらいです。」


「分かりました。ではこの形で販売しますね。では値段付けのほうですか…」


 その後村長と協議の上


 120


 のという値段になった。


 さぁ、この世界初の商売だ、頑張るぞ。

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