第5話 童貞喪失の危機、相手は天使か悪魔か
一日が経った頃だ、個室を気前よく天使達が用意してくれていたのはありがたいが、残念ながら昨日の件以来ぐっすり眠れる程俺も無神経な人間ではない。
しかし疲れが眠気を襲い、浅い眠りについた頃には一瞬にして朝になっていた。
何がそうさせたかは分からないがいびきの声が聞こえると共に目が覚め、下半身の違和感からか目を向けた先には一人の少女がポツリと眠りについていた。
その大きい胸であそこを押しつぶすように圧縮していたのだ。
これはなんというか……このままの状態でもひょっとしていいんじゃないかとも思ったが、天使に破廉恥な行為をするのも道徳的にまずいだろう。
上の天使にばれたら天使側から追放されて地獄行きの可能性もあるんじゃないか。
でももう少しだけ……もう少しだけこのままの状態で待機しよ……「痛ッ!」
頭にぶつかったものはベッドの上に跳ね、音も立てる事もなくそのまま下に落ちる。
何かと思い拾い上げてみたらそれはただのペンだった。
飛んできた方向に見えるのは壁だ、誰かが投げたものとも思えないしどんなオカルトだ。
「ふわあ~うーんむにゃむにゃっ、あっおはよ時和くん」
「あ、ああおはよ……って! お前一体なんで俺の部屋にいるんだよ! し、しかもベッドの上に!?」
「ははは、その動揺ぶりから今度は僕の胸を触らなかったようだね、うんうん偉い偉い」
な、なんて軽さだ……。
こんな触ってもあっけ無い態度なら少しくらい触っておくべきだったか。
「あっ!時和くん今良くない事考えたよね!」
「は? 考えてねーし! お前の胸をほんのちょっと揉んどけば良かったとか考えてねーし!」
「やっぱり考えてたんだね~」
「何故分かった……」
「僕は天使なんだよ、だから君がやましい事を考えようものなら僕には手に取るようにわかるんだからね」
てことはやましいと思わず純粋な気持ちで触ってるビジョンを思い浮かべれば分からないという事なのだろうか。
「まあいっか、時和君がえっちな事なんて最初に胸を触った時から分かってるんだから」
「いや、あれは事故でだな……」
何か今一瞬とんでもない殺気が俺の方向に飛んできたような……。
「もう朝だよ、ちゃんと支度した後ご飯食べるか階段を下りて右に曲がったら大部屋に皆集まってるから来てね」
「あ、ああ、てかお前天使だったんだな」
「僕のこの白い羽を見たらわかるでしょ! 胸ばっかり見てるから時和くんは僕の羽に気付かないんだよ!」
「ぐうの音も出ん正論です……」
「じゃあ僕はもう出とくからね!」
ガチャンッと扉の閉まる音が部屋中に響き渡る。
それにしてもマスティマはひょっとしたら人間なんじゃないかと思っていたが、下手すりゃ人間は俺と誠さんだけになってしまうのだろうか。
でも10年単位に一人の選ばれし人間がこの天使側の世界に入ってくるんじゃ……。
「フフフッ時和くん~」
「ひょ?」
後ろを振り向いたら鬼が笑っていた、髪と眼が紫の鬼が微笑みかけながら一歩一歩ゆっくり近づいてくるのだった。俺は咄嗟に気付いた、これは確実に殺される……今思えばあの投げられたペンも彼女のものだったのか。
「ぎゃあああああああああああああ! 殺さないで!!!」
「はあ、殺したいのは山々だけど殺せる訳ないでしょ……あなたの方が強いんだから」
「あ、そなの……!」
助かった、あの天使に至っては興奮的な意味でスリルを味わせられるが、この悪魔に至っては身の危険といった体に悪い具合のスリルを味わさせてくる、
生憎俺はヤンデレ好きというマイナーな趣味は持っていないのだ。
「ていうか一体どこにいたんだ!?ベッドの下か?それともカーテンの中とか……」
「腐ってもソロモンの中じゃレアな能力を持ってたんだから、あなたにも散々見せてるでしょ? まあこの人間の身体を使ってだと数時間が限界だけどね、あと少しあの女があなたの近くで居座ろうものならばれて殺さなければならなかったわ、まあ誰かさんが変な事とかしちゃったりすれば必然的に長くなるわよね~」
「へ、変な事すか……」
「まさかソロモンの英雄のバエル様とあろうものが天使とそういう行為をしちゃう訳じゃないわよね? 流石に私もやりたくないけどあなたのあそこを切り落とさなきゃいけなくなるわ」
「じょ、冗談に決まってるじゃないすか旦那」
「フフフッ知ってる」
少女は微笑みかけた、天使のような優しさと悪魔のような鋭い手で心臓を今にも握りつぶそうとする手振りを見せて。
「でも、そんなにしたいなら私とすればいいじゃない? あの女よりもでかいわよ、私の乳じゃないけどさ……」
「ええ!? ちょっ、アモン、アーモンドさん!?」
「私じゃなく薄汚い人間の身体を使うのは不本意だけど、あの薄汚いクソ天使に発情してるなら私が救ってあげるわ」
「ちょおっ!? まずいですって!」
さっきまで朝食を食べる話をマスティマとしていたのにまさかこんな展開を待ち受けているとは思わなかった。
人間とは思えない程の馬鹿力で俺の方に負担をかけ、四つん這いでその豊満な胸を俺の胸に密着させながら唇を顔に向けて近づけてくる。
まさか初めての相手が人間じゃなく悪魔とは思わなかった。
いや、そんな悠長な事を言ってる場合じゃない、このままだと俺の初めてが全てこの女に奪われるー!!!
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