第3話 遺伝種の実る頃に

―――二〇九〇年―――


 月日が経ち、シャルリック博士は自分で作った遺伝種が出てくるのを見に行く事にした。


そこには遺伝種を埋めた土からモンスターが生まれてゆくのだった。


次々に生まれてゆくモンスター達は少々変わったモンスターなど多種多様な性格を持つ個体が次々に誕生してゆくのだった。




 本来遺伝種から実ったモンスターは黄色、赤、緑と分かれていたのだが、一つだけ青い色を持ったモンスターが生まれる事もあった。だが、それもまた個性とし、ムカトロン星人はあまり気にせず遺伝種を次々と増加させてゆくのだった。


 ある程度モンスターが生まれた翌日、遺伝種から集められたモンスターが全員を集め、シャルリック博士は演説を開催するのだった。




「皆のもの、貴様らを作ったのは、わしらムカトロン星人じゃ。貴様らを作ったのは当然ながら理由があってのことじゃ、わしらはかつて、地球人どもに滅ぼされかけた、敵のボスの名はクルーザーという。わしらは奴らに復讐する事を目論んでおる、だがそれには十分な兵力が必要じゃ。お前達はムカトロン星にて死にものぐるいで武器の使い方などを学んでもらい、地球人を抹殺するための訓練を十分に行ってもらう」




演説が終わると共に修行が始まるのであった。




「まずは、お前らが誰から産まれたのか総合スキルを見て、ランクを決めようと思う、貴様らはこの中に入れ。」




ダンパイアの指示と共に、モンスターは次々とシャルリック博士がいる研究室に入っていく。




「なんだお前だけは肌の色が青なのか、ありがたく思え、お前は01(ゼロワン)という一番最初に作られたという限定的名称を与えてやる」




「番号をつけられたら次の部屋へと行ってくれ、まだまだ研究することが多いのでな。」




 次々と入るモンスターにシャルリック博士は02(ゼロツー)、30(スリーゼロ)、33(スリースリー)など、入る順ごとに番号をつけていった。


番号がつけられるとモンスター達は次々に研究室で遺伝実験を行われていた。


しかし、研究されたモンスター達の中には恐ろしい遺伝を持ったモンスターも含まれているのだった。


1ヶ月が経ち、ある程度行われた訓練の後、全員の力の差が開いてきた段階でお偉方が集まる会議が行われた。




「ステータスから言ってまず高い順に順位をつけていったので発表したいと思います、一位、301(スリーゼロワン)、遺伝はキルフェーズ、9位、5679(ファイブシックスセブンナイン)、遺伝はダンパイア、十位、01(ゼロワン)遺伝の主不明、しかし知能に関してはシャルリック博士遺伝の代表格である02(ゼロツー)より高いものと思われます」


「ふむ……素直に喜んでいいものか分からんが不気味なもんじゃな……」




 会議が続き、順位発表が終わり、ムカトロン星人は解散したのであった。


数日が経ち順位が兵士達にも知れ渡ったある日のこと。




「おーい!01(ゼロワン)、お前トップ10位に入ったんだってな。」




01(ゼロワン)に話しかけたのは、スラスターの遺伝を持った03(ゼロスリー)であった。




「03(ゼロスリー)君は、後少しでトップ10位に入っていたそうじゃないか、剣をもう完璧に使いこなせる実力を持っているなんて、君にはとても感心するよ」


「へへへよせやい、お前に比べたら俺なんてまだまだだよ」




03(ゼロスリー)はトップ十に入る実力ではなかったが、剣を操る能力が高く、先生や周りが認める程優秀な実力を持つモンスターである。




「そろそろ授業が始まるよ、戻らないと。」




授業時間が始まると同時に、人間調査担当のスレイヤーが教室に入る。




「ええ、ではまず…今日は人間の特徴について君達に教えようと思う」




スレイヤーは人間の特徴について物知りな先生であった、なんでも聞いたところ仲間を殺された恨みから人間の弱点を知ろうと日々の時間を血眼にして人間研究にあてているらしい。




「かつて、私達を滅ぼした人物、それはクルーザーというものでな、彼は大変優れた知能を持っていたんだ。だから我々は滅んだ……彼は小部隊の中でも隊長格であり彼の適格な支持が無ければムカトロン星人が滅ぼされる事も無かったとシャルリック博士に聞く」




スレイヤーの博士から聞いた体験談を含める人間調査の授業が終わった。




「「ありがとうございました」」




授業が終わり休憩が始まる。




「01(ゼロワン)、お前はトップ十位に入ってるからいいが、俺はトップ十位以内に入るのを努力し続けてて頑張ってるんだ、なんたってトップ十位のモンスターは小部隊を率いるリーダーになれるんだからな!」




01(ゼロワン)は呆れた顔で答えた




「よくやるよ……」


「トップ十位以内は01(ゼロワン)だけじゃないぜ。」




ダンパイアの遺伝から産まれた5679(ファイブシックスセブンナイン)が話しかけてくる。




「いい事を教えてやるよ03(ゼロスリー)、どうやら今日は機動力を見極めるテストをやるらしいぜ、それに合格すれば、シャルリック博士からもお目が高いだろうよ」


「そうだな……俺もそれにかけてみるつもりではあるんだけどよ」


「がんばれよ03、君ならきっとできるさ」


「そ、そうだよな……一丁やってみるか」




夜が明け機動能力を測るテストが始まった。




「さて、俺はそろそろ行くよ、俺は機動力には自信があるってわけじゃないが、どうやら機動力テストには剣を使うらしいからな、今回合格したら俺が01(ゼロワン)の代わりにトップ10に入ったりしてな、はははっ」


「笑えないジョークだな……まあいい、何にせよ絶対受かってくれ。試験管はダンパイア、あいつは陰険な野郎だ、きっと何か仕組んでくる」


「そんな事俺が一番分かってるさ、じゃあまた後でな。」




03(ゼロスリー)はダンパイアのいる試験会場へと向かった。


03(ゼロスリー)が着いた会場にはダンパイアが演説をしていた。




「ただいまより君らの機動力がいかに戦闘への役に立つかの試験を行う、ただ一つ注意事項がある、この試験では君たちの命は保証しない、命が惜しい奴は今すぐ帰ってくれ」


「命の保証はしないだ?」「どういうことだ!」




周りがざわつきだし、次々と人が帰り出す。


03は当然ながら帰らない、強い意思を持ちこの会場にいるのだ。




「ただ、このテストに合格をすれば、君らにトップ十位に立つ権利を与えよう、だが何をやるかは諸君らが試験をやると決めた段階で教え陽と思う」


「10位か……リーダーになれるなら命は捨てる気でいかないといけないってことか……」




次々と会場からはモンスターが消えていく、03は少ない人数しか残らなかった事に対し緊張と共にこんな機会は二度とないと思った。




「残ったのはこれだけか、ふーむまあいい、では試験を開始する」




緊張感に包まれる中、会場に残る者達は別室に連れていかれるのであった。




「さて、ここには今50体ほどのモンスターがいる、一人になるまで腰につけてる小刀を持って殺しあってくれ、以上、私はそれまでここで待機している」




不安に包まれている中ダンパイアが言った一言は全員を更なる不安にへと追い込んだ。




「ちょっと待て!ジョ…ジョーダンだよな?」




ガタン…




「と……扉が閉まったぞ!で……出口を探せ!」




扉の向こう側にいる窓からダンパイアが不気味に笑っている姿が映っていた。




「出口などありゃせんよ、全員が一人になるまでこの扉は開けん、もし殺し合いが始まらなければ、この俺自らお前らを殺しに行く、分かったらさっさとやれ!」


「やらなきゃ殺されるだと・・・」「うああああああああっ!」




ここにいるモンスターは初めて身の程を知ったのだった、自分らはムカトロン星人から必要とされていないのだと……。

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