7

イチ(33) 人族

  レベル 1(固定)

  生命力 51

  魔力 99999999


 何度確認しても、レベルの横あるのは固定の文字。

 「嘘やろ。弱い、弱すぎるで、私」

 思わず、頭を抱える。

 レベルが1から上がらないという事は、これ以上強くはならないという事。魔力は異様に高いが、他が低くければ弱い。

 戦闘能力が低い事は前もって分かっていたが、思っていた以上にイチは弱かった。

 結界があるとはいえ、死は思ったよりも近くにありそうだ。

 正直、泣きたくなった。

 ―レベルを1で固定とか、酷すぎる


スキル

  言語理解、生活魔法、支援・付与魔法、

  罠魔法、回復魔法、結界魔法、鑑定眼

  危機感知、直感、状態異常無効、蜘蛛

  耐性(番人限定)、複製(1日5回、異

  世界品限定)、低級薬師


 少し湿った気持ちでスキルを確認する。

 希望していた幻影魔法はなかったが、くれると言っていた耐性が無効になり、結界魔法が増え、回数制限と物の限定はあるものの複製もある。収入を得るための薬師は無いかもしれないと思っていたが、ちゃんとある。

 因みにだが、魔法は全てレベル1。他のスキル、はレベルが無いかMaxだ。どうやら魔法のレベルは上げられるようだ。

 ―魔法のレベルは、頑張って上げよう

 努力を惜しむと、死にそうだ。

 「・・・・複製があるから、レベルが固定になったとか?まぁ、魔の神様も仕方なしに付けてくれたようなもんやし、仕方ないかも。ああ、でも薬師のスキルはもしかしたら使わんかもしれんなぁ」

 薬師スキルは、現金を稼ぐ為にもらったのだが、此処での生活は現金が必要ない。回復魔法もあるので、薬師スキルの出番は無さそうだ。

 ―まあ、でも練習はしちょこ

 「あれ?続きがある」


魔の神の加護

  魔法効率向上、魔力耐性、魔力消費減少

  魔力回復率向上


******

  ********、******、*

  **、****、******、**

 

 「おおう」

 何だかものすごいおまけが付いていた。

 ―魔の神様、ありがとうございます。でも、この*は何なのですか?

 心の中で、魔の神様に向けて土下座をして、首を傾げる。

 とても、とても素晴らしいものをいただけて嬉しいのだが、読めない所がとても気になる。

 いや、相手は神様なのだ。人には理解できない理由がきっとあるのだろう。気にしない方が、精神衛生上良いに決まっている。気にしない事が一番だ。 

 そうそう、魔の神様は守り石なるお守りもくれると言っていた。ステータスにはないが、イベントリにでも入れてくれているのだろう。守り石があれば、弱くてもなんとかなりそうだ。

 土鍋に水を入れ、蓋をしてから火に掛ける。

 そうだ、残り3回の複製をしておこう。

 ふりかけを3種類、複製した。

 「守り石って、なんだろうねぇ」

 イチがふと漏らしだ呟きに、足もとをかさかさと歩いていたクーが足を止め、脚でぴっと何かを指し示す。

 「ん?」

 首を傾げると、ぴょんっと膝に飛び乗り、再び脚で指し示す。

 「左腕?・・・・なにコレ」

 「どうした」

 驚いて、思わず出てしまった声に応える声。

 「あ、ごめん。うるさかった?」

 眠っていたレオが目を覚まし、のそりと起き上がってイチの隣に座った。

 再び眠るつもりはないようだ。

 「いや、おまえの気配が動揺した」

 よく分からないが、どうやらイチの心配をしてくれたようだ。

 「お茶飲む?」

 「ああ」

 イベントリからカップをもう1つ取り出して、やかんから茶を注ぐ。 

 「で?どうした」

 「ああ、うん。あんまり大した事やないがやけどね」 

 いつの間にか左腕にはまっていた、灰色と青のマーブル模様の腕輪を、レオに見せる。

 「クーちゃんに指摘されるまで気が付かんかったき、びっくりしただけながよ。起こしておいて、アレやけどね」

 「これは、ずいぶん質の良い守り石だな」

 「え?」

 「うん?」

 「守り石?」

 「ああ」

 「これが?」

 「ああ」

 「おおう」

 守り石は、気付かなかっただけで、すでにイチの手元にあった。

 ―抜けてるにも程があるやろ、私!

 内心で、悶えまくる。

 「気付かなかったのか?あ、いや、まあ、そういう事もある」

 「・・・・・・」

 頭をポンポンとされて慰められるが、それが益々居たたまれない。

 ダメージ、倍増である。

 「ん?どうした?」

 悪気がない分、威力が大きい。

 「な、なんちゃあない」

 「そうか?それにしても、本当に質の良い守り石だ。大事にしろよ」

 「あ、はい」

 神様から頂いた物を、粗末には扱えない。

 しかし、それにしてもこの腕輪、ぴったりはまりすぎていて、隙間が一切ない。

 ―流石は、神様からの頂き物

 「!?」

 じっと眺めていたら、視界に吹き出しが現れた。

 「今度はどうした?」

 ―え、何コレ。もしかして、これが鑑定眼?見るだけで説明が出てくるって、びっくりするわぁ


守り石

 物理攻撃無効、魔法攻撃無効、使用者指定

 効果偽装


 「やり過ぎじゃね?」

 素晴らしい物だが、とんでもない代物を頂いてしまった。

 「イチ」

 「う゛ぇ」

 下顎を掴まれ、ぐいっとレオの方を向かされる。

 舌を噛んでしまい、イチ涙目。

 「すまん」

 慌てたレオはさっと顎から手を離し、イチに口を開けるよう促す。

 「血が滲んではいるが、大丈夫そうだな」

 イチの口の中をじっと観察し、レオはホッと一安心。改めて、己の同居人に問い掛ける。

 「何がやり過ぎなのだ?」

 「これです」

 鑑定眼で見えた内容を聞かせる。

 「それは確かに、やり過ぎだな」

 「やろ!」

 「だが、此処にいる限りは何の問題もない。万が一誰かに見られた所で、効果偽装がある」

 「ああ、確かに」

 レオの言う事に納得して、一安心

 「それに、その腕輪があれば、おまえの身がある程度守られるから、私も安心だ。だが、守り石は攻撃以外には反応せん。気をつけろ」

 つまり、転ぶと怪我をする。魔法の直撃は平気でも、爆風の影響は受ける。直接攻撃以外からは守られないということだ。

 「分かった。気をつける。所で、レオ君」

 「なんだ?」

 「ちょっと立ってみて」

 「?」

 レオを立たせて後ろに回り、昼間渡したものの戻ってきたカーディガンを、ぎゅっと腰に結びつける。

 「前は隠して!」

 レオは、今まで真っ裸だった。これで彼の 前は隠れたが、お尻は丸出しだ。

 「ぬう」

 レオの尻尾が不満げに揺れる。

 「後で少しはましな下着作るき、」

 「ぬ」

 「さすがにね、同居人がおるのに、下半身丸出しはどうかと思うがよ」

 「・・・・・尾には触れないようにしてくれ」

 がっくりと肩を落とし、レオは下着を了承した。イチは、どさくさに紛れて一歩前進するのだった。

 「分かった、頑張る。あ、おにぎり食べる?」

 「食べる」

 おにぎりが何なのかレオには分からなかったが、イチの作った夕飯は美味かったので、また美味しい物を期待していた。

 「はいよ、ちょっと待ってや」

 鮭若布と青菜若布のふりかけで、土鍋2個分の米を全ておにぎりにする。だいたい土鍋1個分の米が、レオの胃袋に消えた。

 この調子でレオの胃袋をつかみ、少しずつレオの野生化をマイルドにしていくのだ。取りあえず前は隠してくれたので、まずは褌を1本作ってみよう。

 野外生活対策に、裁縫道具を持ち込んでいて本当に良かった。後はイチの裁縫の腕次第だ。

 「ふあ」

 「眠いなら寝床に行け」

 「そうする、おやすみぃ」

 土鍋やら何やらを片付け、あくびを一つ。レオの言葉に従ったイチは、全身に浄化と清潔をかけてフラフラとテントへ入って行った。

 しばらくして、寝息が聞こえてくる。

 眠れるのならば、ひとまずは大丈夫だろう。

 火の始末をして、レオも眠った。


 

 私が世話になっている世界樹の聖域に、我等魔族の神によって、1人の人族が放りこまれた。

 神により守りは施されているものの、女王の支配域を出れば、直ぐに死んでしまいそうな程脆弱な女。

 神から託されたのだ、否はない。

 しかし、私の世話を焼いてくれるのはありがたいが、何かを身に付けるのは、妙な感じがして落ち着かないのだが・・・・・

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