第38話

 新潟県、魚沼市。日本有数の米どころだ。長い旅の途中で、俺はうとうととしてしまった。そして、夢を見た。昔あったことだ。そのことを俺はすっかり忘れていたのだが、半分くらいは思い出した。夢に見たのは父との会話、遠い昔の記憶だった。


(ホワンホワンホワワワワーン)


「景虎よ、お前が魚や自然の中で暮らすことを禁止する」

「父上、どうしてですか? 父上!」

「お前には不思議な力がある。その力を封じねばならない」

「そんな力、持ってはおりません。父上、お許しください」

「いや、許されることではない。儂とて、お前が不憫でならない」

「では、父上。お許しくださるのですか」

「そうもいかぬ。魚や自然の中で暮らすことを禁ずる代わりに、授けよう」

「嫌です、父上。僕は、僕は……。」

「美少女とロリ顔の幼馴染と、巨乳の妹だ。」

「幼馴染が2人と、妹が1人? 父上、とってもかわいいです」

「ああ、そうだ。とってもかわいいだろう。それと、もう1人」

「もう1人いるのですか? 父上!」

「この子は、アメリカの親しい友人に預けておく」

「アメリカ? 遠い国ですね」

「案ずるな、景虎よ。いつかは再びお前の元に現れるであろう」

「分かりました、父上。景虎はもう、自然の中で暮らすことは致しません」

「それで良いのだ、景虎よ。お前はとっても良い子だ」

「はい、父上。景虎は、良い子です。妹や幼馴染を守ります」


(ホワンホワンホワワワワーン)


 遠い遠い、昔の記憶だった。それからだった。俺達一家が今の場所に住むことになったのは。

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