新潟
第37話
「ソレニシテモ、今日ハ暑イデスネ」
「どこかの避暑地に行きたーい」
キャサリンの一言を呼び水に、鯛焼き7つをペロリと平らげた奈江がいつもの調子で言った。たまには言う通りにしてあげたいと思っていると、また電話が鳴った。
「社長の息子さん、助けてください。田圃が……。」
いつもの調子で依頼を受けた俺達は、直ぐに旅支度をした。依頼主は新潟の一般農家だった。今回は、大型バスに12人での大移動となった。バスを用意したのはキャサリン。いてくれて助かった。そう言えば、キャサリンはアメリカ大使館に住んでいる。キャサリンのボスって、どんな人なんだろう。俺はぼんやりと考えていた。
「じゃあ、お船やー、飛行機にも乗れるの?」
「ハイ。戦艦大和モエンタープライズモ、F15モエアフォースワンモ、OKデス」
「すごーい!」
ふと気付くと、奈江は1番前に座ってキャサリンと話していた。どうも奈江は、ヤマトやエンタープライズを宇宙戦艦か何かと勘違いしているようで、余計に興奮していた。冷静に突っ込んだのは羽衣で、いつもなら優姫とあゆみも同調するのだが、この時は少し違っていた。
「さすがに大和はないんじゃないの」
「でも、大和って響き……。」
「……。何だか懐かしいわね」
俺は知っていた。日本一の金魚の生産地の名前を。それは、奈良県の大和郡山市だ。優姫やあゆみが懐かしさを感じるのは『ヤマト』という言葉の響きのせいだとすれば頷ける。
「日本海側……。」
「行くの初めて」
「遺伝子レベルで……。」
「行くの初めて」
メダカ達が不思議なことを言った。メダカは日本中に広く分布する在来の淡水魚だと聞いたことがある。遺伝子レベルで初めてというのは大袈裟な気もする。
「ミナミメダカとキタノメダカ。日本には2種類のメダカがいるんですって」
あおいちゃんがスマホを片手に説明してくれた。それで合点がいった俺は、何だか嫌な予感がした。これ以上、同居人を増やしたくはないものだ。
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