第34話


「ねぇ、景虎くん。今日は何だか臭わない?」


 朝から遊びに来た羽衣が言った。居合わせていた奈江とあおいちゃんは鼻でくんくんと嗅ぎ始めた。


「本当だよ、マスター。お庭が泥臭いよ」

「私には、何も感じないよ」


 俺もくんくんしてみたが、何も臭わなかった。羽衣と金魚達に嗅ぎ分けることが出来て、俺やあおいちゃんには出来ない臭い。俺は知っている。メダカ達の発する臭いだ。気になって庭を見ると、メダカ達はやっぱりいた。既にテントを張りはじめている。


「貴女達!」

「メダカだー!」


 俺の視線に誘われて庭を見た羽衣と奈江が、俺より先に声を出した。


「ぎょぎょぎょ、金魚だ!」

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