第28話
未明。俺達のテントの中にはもう1つのテントが張られていた。いつも通り1番早起きの奈江が御構い無しに俺に乗っかってきた。
「マスター、おはよう。頂きます」
そう言って、テントの真ん中の柱を口に運ぶ。
「ちょちょ、ちょっと待ってよ」
羽衣が慌てて言った。
「何で口に運ぶのよ」
当然だ。
「でも、私達はいつも口に運んでいるのよ」
「そうよ。いくら羽衣でも、邪魔はさせないわ」
あゆみと優姫が食い下がり、食いつこうとする。優姫が不満を漏らすことも、羽衣にはもう、受け入れられないことではなかった。
「私は、構わないわよ」
「コレモ、日本ノ文化デス」
あおいちゃんもキャサリンもどうかしている。俺が1人で処理すると言ったところで収まりそうにない。俺は黙って話の行方を見守るしかなかった。羽衣は1人で反対している。それが当然だろうとは思う。
「冗談じゃないわよ! 公序良俗ってのがあるでしょう」
「羽衣は無理しなくてもいいわ。私達だけで、するから」
誤解どころか疑惑を浮き彫りにする表現で、最後にまりえがそう言いながら自分の胸を見て、その弾力を自分の腕で挟んでは潰し、力を緩めては揺らし、確かめた。それが羽衣の目に入り、またしても羽衣におかしな決断をさせた。
「分かったわよ。口に運べばいいんでしょう」
開放感のある夏のチン事。それは夢だった。まだ表は薄暗い。俺の上に柔らかいものが乗っているが、この暗さで、それが何なのかを確かめる事は出来ない。眠気に正直にもう1度目を閉じると、柔らかいものが呟いているのが聞こえた。寝言のようだ。
「マスターさん、貴方、やっぱりすごい!」
キャサリン? 俺は夢現のなか、そう思った。日本語が流暢なのが気にはなるが、柔らかさといい、声の高さといい、そうとしか思えなかった。雑魚寝しているからいつのまにか俺の上に乗ってしまったのかも知れない。確かめるのは面倒なので、そのまま目を閉じているといつの間にか入眠していた。
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