第27話

 メダカ達が出て行ったあとしばらくは、金魚達は大いに警戒していた。ほとぼりが冷めてようやく奈江が元気に叫んだ。


「マスター、寝るー!」


 今は元気だが、あと5分と持たないだろう。奈江はいつもバタンキューなのだ。


「ちょ、ちょっと待ってよ」


 羽衣が慌てて言った。


「景虎くんは、車で寝なさいよ」


 当然だ。


「でも、私達はいつも一緒に雑魚寝しているのよ」

「そうよ。いくら羽衣でも、邪魔はさせないわ」


 あゆみと優姫が食い下がる。優姫が不満を漏らしたが羽衣には意外だったようだ。


「私は、一緒で構わないわよ」

「面白ソウデス。雑魚寝ハ日本ノ文化デス」


 あおいちゃんもキャサリンもどうかしている。俺が1人で寝ると言ったところで収まりそうにない。俺は黙って話の行方を見守るしかなかった。羽衣は1人で反対している。それが当然だろうとは思う。


「冗談じゃないわよ! 公序良俗ってのがあるでしょう」

「羽衣は無理しなくてもいいわ。私達だけでマスターと寝るから」


 誤解を招きそうな表現で、最後にまりえがそう言ったとき、優姫があっそうかというような顔で、自分の胸を見て、その弾力を自分の腕で確かめた。それが羽衣の目に入り、またしても羽衣におかしな決断をさせた。


「分かったわよ。寝ればいいんでしょう!」


 開放感のある夏の珍事はまだまだ続きそうだった。

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