第26話

 テントに戻り、あとは寝るだけと思っていたが、次なる事件が待ち構えていた。


「あれ? 誰かいるのかしら」


 最初に異変に気付いたのは羽衣だった。これも美少女センサーによるものだとしたら、高性能にもほどがある。何せテントまではまだあと200メートルくらいある。奈江が興奮気味に言った。


「くんくん。本当だ。泥臭い」


 直ぐに戻ろうということになり、足早にテントにたどり着くと、家から持って来た特注のウォーターベッドのマットレスの上には、4人の女の子が雑魚寝していた。野生味溢れるダイナミックな雑魚寝だ。まりえとキャサリンの服を着ている。


「あっ、メダカ!」


 奈江が叫んだ。


「どうしてメダカが……。」

「私の服!」


 金魚達は、驚きながらも敵意を露わにしている。相手がメダカだからだろう。その警戒心は俺にも伝わった。俺からしたらかわいい女の子なのだが。その中で1番大人に見える子が騒ぎに目覚めて言った。


「ぎょぎょぎょ! 金魚だ!」


 金魚とメダカ。日本の風土にぴったりの観賞魚の2大勢力の対立構造が、今俺の目の前で浮き彫りになっている。この2大勢力が相容れないものであることは、この時の俺に知る由もなかった。羽衣が望むようなお友達にはなれないのかもしれない。それにしても、金魚達に続いて今度はメダカの人化である。この世は一体どうなっているのだろうか。


「逃げるよ」


 1番大人に見える子は残りの3人を引き連れてどこかへ消えてしまった。

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