第22話

「それじゃー、お風呂入ろう!」


 配信を終えた奈江が元気に俺を誘う。他の金魚達も待ってましたという感じに、俺の手を引いた。普段、俺は金魚達と一緒にお風呂に入っている。金魚達に言わせれば人化する以前からの約束だ。だから、この日も当然一緒に入ろうと言うのだ。貸切なので不可能ではないが……。


「ちょっと、待ってよ!」


 羽衣が慌てて言った。


「貸切だからって、それは不味いわよ」


 当然だ。


「でも、私達はいつも一緒に入っているのよ」

「そうよ。いくら羽衣でも、邪魔はさせないわ」


 あゆみと優姫が食い下がる。優姫が不満を漏らしたのが、羽衣には意外だったようだ。


「私は、構わないわよ」

「面白ソウデス。混浴ハ日本ノ文化デス」


 あおいちゃんもキャサリンもどうかしている。今更俺が1人で入ると言ったところで収まりそうにない。俺は黙って話の行方を見守るしかなかった。羽衣は1人で反対しているが、それが当然だろうと思う。


「冗談じゃないわよ! 公序良俗ってのがあるでしょう」

「羽衣は無理しなくてもいいわ。私達だけでマスターと入るから」


 最後にまりえがそう言ったとき、あゆみがあっそうかというような顔で、自分の胸を見て、その弾力を自分の腕に挟んで確かめた。エロい。それは羽衣の目にも入り、羽衣はおかしな決断をした。


「分かったわよ。一緒に入ればいいんでしょう!」


 開放感のある夏の珍事の始まりを告げた。

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