第15話
おっぱい星人は人目を憚らずに俺に抱きついてきた。俺の顔は一気に緩みまくった。あぁ、柔らかい、幸せ! 皆あっけにとられていたが、おっぱい星人に会ったことのあるあゆみが声を上げた。
「あーっ、キャサリンさん!」
「じゃあ、この人が……。」
「妻子ある方のハートを掴んで……。」
「何でも略奪してしまう……。」
「伝説のおっぱい星人……。」
「アメリカ大使館の人!」
「コンニチハ! アユミさん、ゴキゲンヨウ」
あゆみは俺と買い物した時の様子を面白おかしく皆に話していた。キャサリンのこともだし、それに対する俺の反応もだ。だからその場にはいなかった皆もその話を憶えていたようで、聞いた通りのおっぱい星人振りと、俺の顔の緩み振りに納得していた。このおっぱい星人の出現によって、水草姉妹や金魚達から俺への口撃がなくなったのは、俺にとっては好都合だった。まるで共通の敵の出現に、皆が団結したような感じなのだ。もっとも、キャサリンには敵対する意思はないようで、しかもマイペースに俺達の話の中にどんどん入り込んできた。
「マア、キンギョニ水ヲクミニイクナンテ、キグウデスネ」
キャサリンは続けた。
「キレイナ川ナラ、ワタシモ行クトコロデス。ゴイッショシテモイイデスカ?」
突然のキャサリンの申し出に、一同は唖然としていた。それでも直ぐに行き先を決める係のあゆみが正気を取り戻したようで、キャサリンを遠ざけるようにして言った。
「私達の行き先は、もう決まってますから」
あゆみはキャサリンに対して、あえて哀れんだような目をしていた。それを見たキャサリンは残念そうに言った。
「ワカリマシタ。『きれいな川の側キャンプ場』ニハ、ワタシヒトリデイキマス」
「キャサリンさんも『きれいな川の側キャンプ場』に行くの」
「ソレデハ、ミナサンモオナジナノデスネ! キグウデスネ」
奈江が口を滑らせ、行き先がキャサリンと同じだとバレてしまったのでは、キャサリンの同行を拒みきれなくなった。それに、現地で再会しても気まずいばかりだ。結局キャサリンを含む8人で『きれいな川の側キャンプ場』に行くことになった。
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