小赤編
第9話
荷物が持ちきれなくなった俺は、幼馴染の羽衣に車で迎えに来てもらった。
「何で私が、影虎くんの世話をしなくちゃならないのよ」
「良いではありませんか。景品をただ取り出来るんだから」
あゆみはそのあと小声で、巨乳でもないのにと続けた。小声にしたのは、気を使っているからだろう。あゆみは羽衣に対して冷たい。あゆみはどうも顔立ちと身体つきのバランスで女子の位置付けをしているようだ。羽衣の場合、顔立ちは美少女で間違いないのだが身体つきは子供っぽいというか、胸は真っ平ら。だから、バランスが悪いと、下位にランキングされているのだ。100万人に1人といわれるほどの美少女の羽衣も、ネット配信で大人気の金魚達には逆らえない。あゆみは、同じ真っ平らでも羽衣の妹のあおいちゃんのことは認めている。それはあおいちゃんが童顔だからだ。奈江も同じ理由で好位置にいる。あゆみと優姫は顔も身体も大人っぽいし、まりえはロリ顔で巨乳の美少女という、三拍子を揃え最上位に君臨している。つまり羽衣は、夏休みになってからというもの、俺の周りの女の子達のヒエラルキーの最下層にいる。ちょっと気の毒に思うこともあるが、女の子同士のことなので、首を突っ込んだりはしていない。
「マスターが当てて下さったのです。有難く思って頂かないと」
あゆみがクールに言った。いつの間にか羽衣の目には大粒の涙があった。
「私も連れて行って下さるの?」
「当たり前です。誰が重い荷物を運ぶんですか」
あゆみは羽衣の反応をみてから続けた。
「それに、車の運転だって上手ですし。羽衣さんにはいて頂かないと困ります!」
「良かったわ。私、免許取って良かったわ」
すっかり底辺にいることを受け入れてしまった羽衣は、不意にワイパーを動かす。雨など降っていないのだが、何かと錯覚していたようである。
戻ると、留守番の皆とあおいちゃんが出迎えてくれた。新しいテレビを設定した。皆で夕飯を食べ、風呂に入り、配信をしてベッドで寝た。あゆみと2人きりで過ごしたのは数十分に過ぎないのだが、あゆみの性格や行動の癖を垣間見ることが出来たし、幸運にも恵まれた。とても楽しかった。だから、アメリカから来たばかりだと言っていたキャサリンが福引きの補助券を持っていたことに、何の疑問も抱かなかった。
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