第6話


「最低ですね」


 あゆみは、ドン引きしているというよりも、怒った様子で言った。俺の身体は直ぐ様左に傾いた。あゆみが体を強く引いたのだ。


「ウバワレルホウガ、ワルイノデス」


 今度は、右に大きく引っ張られた。キャサリンは相当な馬鹿力である。


「略奪だなんて、はしたない」


 またまたあゆみが引っ張ると、俺の身体は『子争い』の子供のように、右に左に揺れた。違うのは俺の顔で、緩みまくっていた。なんせ、女性の体の柔らかさというものをずっと感じていたのだから。気持ちが良いのだ。


 左右のバランスがようやく保たれ、数百メートル歩いた。それだけにここまで時間が掛かったのは初めてだった。右に引っ張る力が不意になくなり、身体が左に傾いた。


「アリガトウゴザイマス。ココマデクレバ、ダイジョブデス」


 キャサリンはアメリカの旗を見つけると数歩駆け、振り向いて言った。そしてさらに続けた。


「コレハホンノオレイデス」


 そう言って差し出されたのは、福引きの補助券だった。福引きは今日までなのだが、今は補助券が手元に14枚ある。昨日、サバゲーをした時にもらったのだ。5枚で1回引けるから、これで丁度3回分になった。なんてラッキーなのだろう。


「オジョウサン。アナタハエライデス。チャントタイセツナヒトヲ、マモリマシタ」

「当然です。私の大切なマスターですから」


 キャサリンの一言に、あゆみは一瞬考えた後、勝ち誇ったように自信満々で返した。俺には嬉しさと照れくささがあった。

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