第6話

「詳しく、か。

話してもいいが、あまり参考にならないと思うぞ」


困ったようにミリーが笑う。


「うん。

それでも、異世界について詳しい人を知ってるなら、ぜひ教えてほしい」


桜が食い気味に返した。


「わかった。何か事情がありそうだし、隠しているわけでもないしな。

私たちが知っているのは、迷宮学者のサマーという女性だ。

彼女は、『迷宮が異世界と繋がっている』と、主張していた」


「前に、サマーさんの依頼を受けたことがあるんです。

その時に、色々講義してくれたんですけど、その時に言ってたんです。

『本当の専門分野は、異世界だ』って」


桜がピクッと反応した。


「その人、紹介してもらえない?」


「何か理由がありそうだな。

うーん、桜。

そういえば聞くのを忘れていたが、君は冒険者なのか?」


「まだ違うよ。

資金稼ぎに、登録するつもりだけど」


「そうか、それなら彼女の依頼を見つけたら教えよう」


「あと、登録に付き添いますよ」


「ありがとう」



街の検問を抜け、4人でギルドにやってきた。

ギルドの中は綺麗に掃除されている。


「思ったより綺麗だね。

お酒飲んでる人とかいないし」


桜がキョロキョロと中を確認している。


「ギルドにどんなイメージを抱いてるのか……。

依頼者は普通の街の人だ。

酔った冒険者がいるような場所に、普通の人はこないよ。

危険だからね。

冒険者以外を守るため、ギルドがふざけた真似はできないように、目を光らせている。

ギルド内でおかしなことは、そうそう起きないさ」


「まあ、たまぁに、お酒を飲んでから報告にくる、問題のある人たちもいますけど」


メイが笑った瞬間、空気が変わった。


「よう、お嬢ちゃん。

その問題のある奴ってのは、俺たちみたいな奴か?」


メイたちの後ろから、男が声をかけてきた。

振り返ると男が3人立っていた。

3人とも顔を赤めていて、酒の臭いを漂わせている。


「これぞ、異世界の冒険者ギルドって感じだね。

チンピラが絡んでこそ、異世界に来たって感じがするよ」


桜が、メイを庇うように前に出た。


「桜、彼らは素行にこそ問題はあるが、このギルドではトップクラスの実力者だ」


ミリーが桜の耳元で囁いて、桜を背で庇う。


「すまない、気に障ったのなら謝ろう。

あなたたちのことを言っていた訳ではないんだ」


「へへっ。

誠意さえ見せてくれれば、許してやるよ」


「誠意とは?」


「ちょっと俺たちと寝てくれればいい。

ちょうど、3人いるだろ」


「おいおい、いくらなんでも、それはまずいだろう。

おっぱいを揉ませてくれればいいよ。

こんな風にな」


男の1人が、ミリーの胸に手を伸ばす。

桜が、ミリーとさっと入れ替わった。


「固ぇ。なんだこれ。

突指した」


桜が常に張っている、魔法障壁で男の指が曲がった。


「ははっ、絶壁にもほどがあるだろ。

どれ、俺が大きくしてやる」


別の男が手を伸ばしたのを、メロスが受け止めた、大胸筋で。


「大きく出来るなら、ぜひとも頼む。

我は数十年前から、全く大きさが変わらないのだ」


「あっ、なんだてめえ」


「どうした、早く大きくしてくれ」


メロスが男の腕を掴んだ。

そして、そのまま握る力を強めていく。


「痛ぇ。なんだ、超痛ぇ」


メロスに掴まれている男の腕が変色してきた。

それを見て、つき指していない男が剣で切りかかってきた。


「離せこの野郎」


切りつけられた剣は、腕にかすり傷すらつけられずに止まった。

当然、全く痛くない。


「なんだ、お前も我の大胸筋を味わいたいのか」


掴んでいる男と切りかかってきた男を抱き寄せてやる。


「固い。痛い。万力みたいに締め上げられてる」

「外れねぇ、なんだこの化け物」


「「ああああああああああ」」


最後は2人とも叫んでいたが、だんだん静かになっていき、2人の男は意識を失った。

唯一、無事な突指した男が、立ち尽くしている。

仲間はずれは可哀想だな。


「さて、お前も我が大胸筋を味わうか」


「いや、いい。

俺たちが悪かった。

許してくれ」


男が膝をついて謝った。


「遠慮するな。

桜よりも、我が大胸筋の方が触りごたえがあるはずだ。

ぜひ試してくれ」


男を抱きしめてやる。

我が大胸筋を独り占めだな。


「ああ、ああああああ」


「なあ、桜。

メロス殿は、桜を助けたのか?

それとも、本気で桜に張り合っているのか?」


桜は、ミリーの質問に答えなかった。

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