ヒーロー
第四回目は
amazarashiは大好きなバンドなのに、どうして今までこの音学解で紹介しなかったのか。それは、amazarashiの歌詞はほとんど直接的で、わざわざ解釈しなくてもちゃんと聞けば解るからです。
ところがこのヒーローは、比喩的な表現があるので解釈の余白があるうえ、解釈をすることによって、ライトノベルを書く上で大変必要なものを手に入れる事ができそうなのです。
以下、歌詞と解釈です。
□□歌詞□□
食欲がないもんだからさ
別に小銭がない訳じゃないんだよ
君の横顔を見ていると
そういう事を言いたくなるんだよ
▽▽解釈▽▽
なんで生きていたいのかわからなくなっただけなんだ。
別に、生きていくためのお金はある。少ないけれど。
だから明日にでも死ぬってわけじゃあないんだ。
君の心配そうな顔を見ていると、それを言ってしまいたくなるんだよ。
□□歌詞□□
もしも明日世界の危機が来て
僕が世界を救う役目だったら
頑張れるのにな
かっこいいのにな
なんて空想だ
なんて空想だ
▽▽解釈▽▽
もしも夢をかなえなきゃいけない瞬間が急に訪れたとして、
僕にそれを叶えるための才能があったなら。
努力できるのに。
その努力すら皆が称賛してくれるのに。
なんて言うのは空想だよ。
なんて馬鹿げだ空想なんだろう。
□□歌詞□□
そしたら 僕の亡骸 君が抱いて
泣きながら
「やれば出来るんだね」って
呟いて
▽▽解釈▽▽
やり切った僕を君が抱きしめて、
泣きながら、
「やれば出来るんだね」って、
君も認めてくれるだろう。
□□歌詞□□
いつだってヒーロー
笑われたっていいよ
人生は喜劇の 一幕の様なもんだろ
「ここはまかせろ」 とは言ったものの
どうすりゃいいんだろう
断崖のヒーロー
▽▽解釈▽▽
いつだって夢を叶える為に走り出す事は出来る。
そりゃ今更そんなことしたら笑われるだろう。
けれども人生なんて他人から見たらどんな悲劇だって喜劇みたいなもんだろう?
「さあやるぞ」なんて言ってみたけれど、
やり方が分からない。
もう諦めなきゃいけないのか?
□□歌詞□□
なんて言っても世界の危機なんて
そうそう来るもんじゃないんだけど
それなりの人生の危機ってやつは
僕なんかにも訪れるもんで
▽▽解釈▽▽
都合よく夢が叶うチャンスなんて来ない。
それをしなければいけないと言う局面も来ない。
でも人生においてそれ以外の選択肢を迫られるときは、
誰にだって来るよね。
□□歌詞□□
孤独になっても夢があれば
夢破れても元気があれば
元気がなくても生きていれば
「生きていなくても」とか
あいつらそろそろ言い出すぞ
▽▽解釈▽▽
誰かが死んだり失恋したりして気が落ちた時も夢があればいいじゃないか。
夢が叶わなくても健康ならばいいじゃないか。
健康じゃなくても生きているだけでもいいじゃないか。
そういうあらゆるネガティブを無理矢理ポジティブに考える様に脅迫している世間は、直面したら逃れられないはずの「死」からも、目を逸らして生きて行けばいいとか無責任なことを言い出すぞ。
□□歌詞□□
そしたら絶体絶命の危機の淵で
起死回生の
一撃はきっと怒りか悲しみだ
▽▽解釈▽▽
世間に自身の自己同一性を封殺されて、
息苦しさを感じた時に
発露するこの感情は怒りか悲しみ。それでしか世界に抗う事が出来ない。
□□歌詞□□
いつだってヒーロー
殴られたっていいよ
垂らした鼻血の色 田舎の根雪の白
連敗続きの 擦り傷だらけの
挑戦者気取りの
断崖のヒーロー
▽▽解釈▽▽
いつだって夢を叶える為に走れる
現実見ろって罵倒されてもいいよ
傷ついて思い出すのはいつも故郷の原風景(秋田ひろむは青森出身なので)
何回も負けた(人によっては新人賞の落選) そのたび傷ついた
それでもまだまだいけるぜって言う気になってる
だからもう後には引けないんだ
□□歌詞□□
小銭数えて 逆算する人生も
追いつめられて 首括る人生も
もうよく聞く話しだ 驚かないよな
今が世界の危機かもね
誰も選んじゃくれないけど
頑張れるかもな
かっこいいかもな
ここでやれるんなら
今がまさにそうだ
どうせ「世界よ終われ」と願っても
世界はくそったれのまま
続いてく
▽▽解釈▽▽
現実を見て就職して少ない稼ぎで夢も無く人生を浪費していくだけの人も
夢を見て頑張り続けても叶えられなくて世間にも自分にも追い詰められて死ぬ人も
そんな人ばっかりだ。もう驚かないよな。
これってもう世界の危機なんじゃあないか?
誰も応援してくれないけど、
夢を叶える為に走りだす時なんじゃあないか?
夢を叶えるって事は、夢も何もない暗闇の世界に一筋の光を
それってすごくかっこいいよな
そう思って頑張れるなら
今がまさに走り出すその時だぞ
どうせ自分の未来丸ごと終われって言ったって、
簡単にはいかず、クソみたいな人生を続けて行くしかないんだ
□□歌詞□□
誰だってヒーロー
そんな訳はねえよ
いわゆる掃き溜めの ありふれた有象無象
そこで負けねえと 言ったもん勝ちの
よくある強がりの
「いつだってヒーロー」
▽▽解釈▽▽
誰だってそれができる
そんな訳はない
人に夢を見せて現実に絶望させないために世間が用意した
だけどそこで諦めない奴らが勝つだろう
強がりだってなんだって
「夢を叶える」って言い張ったらそれはもう勝ちだろう
□□歌詞□□
絶体絶命の 絶望的状況
それでも言い張るよ
いつだってヒーロー
▽▽解釈▽▽
後に引けない状況、諦めしかない状況、世間に追い詰められ、自分に追い詰められ、
それでも強がる
いつだって夢を叶える為に走り出せるって
以上です。
言葉そのままに聴いても勿論いいんですけど、このヒーローと言う言葉をただ単に「誰かを救う人」と解釈するのではなく「夢を叶えようとする自分自身」と言う風に解釈にすることで、また違った角度から歌を見る事が出来るかなと思いました。
これはラノベにも通じる事で、例えば「勇者」や「魔王」と言うのを「希望」や「絶望」の象徴とするのもいいですし、さらに踏み込んで現実社会に落とし込むのもいいかなと思うのです。「勇者」=「サラリーマン」、「魔王」=「パワハラ上司」みたいに。
で、それを作中で紹介したり説明したりするのではなく、誰かが「こういう解釈の仕方もあるんじゃあねえか」と思って各々解釈していくのを待つと言うのがラノベの在り方なのではないかと思います。
あくまでストーリーやドラマのエンターテインメント性で見させて、8割の人が何も考えずに見て「ああ、面白かった」と思い、2割の人が「なかなかに深いテーマを持った作品だった」と思ってくれればいい。
そしてその2割の中の2割の人が「こんな解釈もある」と発表して、何も考えずに見ていた人がその解釈を見た時に何も考えずに鵜呑みにして人の意見なのに自分の意見みたいに皆にドヤ顔でふれまわってくれればいいと思うのです。
その時に作者が作品に内包させた思惑が弾けるのです。
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