「拝み屋怪談」シリーズ

郷内心瞳/KADOKAWA文芸

拝み屋怪談 逆さ稲荷

怖い話

怖い話

 松坂さんが高校三年生の時、こんなことがあったという。


 部活の時間、体育倉庫で仲間たちと怖い話をすることになった。

 五人ほどのメンバーで薄暗い体育倉庫のまんなかに陣取り、車座になって話を始める。

 テレビや深夜ラジオで見聞きした怪談話の再現を始め、学校に伝わる七不思議などが思いつくままに次々と語られ、弥が上にも顔は強張り、総身がぶるりと震えあがる。

 小一時間ほど語り倒し、怖い気分が最高に盛りあがっていた、まさにその時だった。


「お前ら、いい加減にしろよ!」


 倉庫の扉が突然がらりと開かれるなり、頭の禿げた男性教諭が中へと飛びこんできた。

 松坂さんたちが言いわけするまもなく、男性教諭はその場にいたメンバー全員の?を次々と引っぱたくと、ずかずかとした足取りで体育倉庫を出ていった。


「痛ってえなあ、いきなり何すんだよ……」


 頬を押さえながらみんなで毒づくさなか、一同揃って「ああっ!」と叫びをあげる。


 松坂さんたちを引っぱたいたのは、昨年首を吊って死んだ男性教諭だったのである。


(終)


* * *


ドラマ化も決定した郷内心瞳「拝み屋怪談」シリーズ全5作、好評発売中

他のエピソードを読む: https://kakuyomu.jp/special/entry/kaidan2018

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る