第8話 のんびりと釣り
「つれないなぁ」
ぼんやりとたらした釣り糸を見つめる。餌がよくないのかな?やっぱりコボルトの内臓じゃきつかったのかな。そう考え釣り竿を引き上げた。小物入れから新たな餌を付けなおし、再び池に釣り糸を垂らす。
「社長さんは釣れました?」
「だから社長じゃないって」
何度言っても隣にいる彼は覚えてくれない。ここにいるほとんどの人が勘違いしているが私は社長じゃないぞ。そう思うがもう説明するのもめんどくさい。
サンサンと大地を照らす日光を浴びて大きくのびをする。あぁ穏やかな午後だ。ここには仕事を求める悪魔も問題ごとを起こすドワーフもいないのだ。
「はぁ日焼けしちゃいそう」
「いや吸血鬼だよね君」
「ハーフですよ」
「そうでしたっけ」
どうやら他人を覚えていないのは私もらしい。種族多すぎるから仕方ないねとさりげなく自分の罪をすっとぼける。釣竿を一度湖面から離し辺りの岩場に腰かける。ちょっと疲れたから一休みしよう、そう思いポシェットから水筒を取り出す。
「やっほー釣れてる?」
水を飲んでいると空から少女が降ってきた。羽を振りまきつつこちらへやってくる彼女はハーピー族。少女は私の隣に腰かけると私のそばにぎゅっと寄り添ってきた。
「ちょっとあついですよ」
「えへへただのスキンシップだよ」
別に差別とかしないけどハーピー族ってなんでパーソナルスペースが近いのだろう。この間の人間の少年とか絶対気があると勘違いしてたぞ。体温高いからこういう温かい日は近寄ってほしくないのだ。逆に冬場は抱きしめて湯たんぽにしたい。
「おっすハーピーさん」
「吸血鬼もいるの?日光あるけど平気なんだ」
「だからハーフだって」
吸血鬼の彼が話しかける。ハーフでも日光がきついと思うのだが大丈夫なのだろうか。吸血鬼の血が薄いのか夜中に血が高まるタイプのハーフなのだろうか。疑問もよそに彼は釣竿をふりつつハーピーと会話を弾ませる。
「もしよければ魚採ってきてくれません?」
「えーめんどくさい」
「そこをなんとか…お願いしますよぉ」
「魚釣りとか自分で捕まえればいいじゃん」
「空飛べたら苦労しませんよ」
「吸血鬼って不便だね」
「だから僕はハーフですって!」
おぉなんという鳥頭。とはいえ彼女は決して頭が悪いわけではない。ただ自分に興味がないものは覚えないだけなのだ。
ハーピーと吸血鬼の歓談を眺めつつ穏やかな日光と森林の空気に身をゆだねる。自然の偉大さを全身で感じているとハーピーがお土産を渡してくれた。
どうやらお昼ご飯を分けてくれるらしい。彼女お手製だというサンドウィッチをほおばる。うん、美味しい。野イチゴのジャムがいい味を出している。
どうでもいい話をしつつ笑いあう私達。ポジティブな二人を見ているとなんだかこっちまで楽しくなってきてしまうから困る。そういえば魔界にいた時はこんな風に笑いあえる友達なんてなかったな、そんな事を考えてしまう。
昼食後はお昼寝もいいかもしれない
こんなのどかな日も良いものだな
特にやまもおちもないがそんな事を考えてしまう
そんなとある日の午後
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