第8話

 その日、俺はまた図書館に来ていた。


 大体のことは調べ終わり、これ以上は今調べるべきことはないと思っていたが、面白い本を見つけたのである。


 その本は昔から語り継がれているおとぎ話のようなものだ。


 内容はこんな感じ。


『昔々、星からの恩恵を得て生まれた二人の少年がいた。その二人は不思議な力を使えた。

 一人は正しいことにその力を使ったが、もう一人は悪事にそれを使っていた。

 正の少年は悪の少年をなんとかしようと戦ったが勝てなかった。

 正の少年は悪の少年に勝つために修行をした。そして彼は強くなった。

 しかし、強くなりすぎた。

 悪の少年は倒すことができたが、彼の一挙一動が世界に影響を与えてしまっていた。

 それはマズイと思った少年は自分の力を全人類に少しずつ発現するように分け与え、自分は世界に影響を与えないように、天に昇って神となり世界を見守ることに決めた。


 ーーー神の名はシオンと言う。』


 そう。シオンについて書かれているおとぎ話だ。

 自分を神だと言ってたし、このおとぎ話は本当なのかもしれないな…。シオンってすげー人だったんだなぁ。まぁ神だから当たり前なんだが。


 他のおとぎ話も読んでみたが、余りにもリアリティが無いため、これ以上漁るのはやめた。

 だって他の話あまりにもフィクションなんだぜ!?

 魔法が発動すると相手が死ぬ魔法とか、この世の全てのものを破壊できる魔法とか…。

 どこのぼくがかんがえたさいきょうのまほうだよ…。


 そんなことを調べていると、図書館のドアが勢いよく開き、慌てた様子でヘンリーが入ってきた。


「ラン!!産まれるぞ!!」



「いや初耳なんだけど!?!?!?!?」


 いやいやいやいや昨日までエマの腹なんて膨らんでなかったぞ!? なに? 魔法パワーなのか? また魔法でなんとかしたのか!?


「お、弟??妹??」


 もっと他に聞くことがあるだろうと思ったが、気がついたらそんなことを聞いていた。

 前世で一人っ子だったために、兄弟というものに憧れているふしもあったのだろう。

 あー、弟だったら外で一緒に遊ぶとかしたいなぁ…かわいいんだろうなぁ……。

 でも、妹もいいなぁ…兄さんとか言われてみたいなぁ……。


 そんな妄想をしながら、期待に胸をふくらませていると、ヘンリーが言った。



「ん?ああ、違うぞ?私と昔からの学友である二人の間に子供が生まれるらしいんだ!」




 ヘンリーてめぇぇ!

 紛らわしい言い方してんじゃねぇよ!

 弟だったらとか考えちゃった自分めっちゃ恥ずかしいじゃねぇか!!!


 俺からの怒気と羞恥を感じ取ったのか、ヘンリーが言った。


「ま、まあまあ、そんなに残念がるなって。それに家が近いしあいつらはよくここに遊びに来るからほぼ兄妹みたいになると思うぞ?あ、ちなみに女の子だそうだ」


 …そうじゃないんだよヘンリー。俺はただただ恥ずいんだよヘンリー…。


 まあ、こんなことを言っていても話が進まない。


「で、その出産を今から見に行くの?」


 俺の出産の時も多くの人が見にきてたみたいだしそうなんだろうと思ってそう聞いたが正解だったようだ。


「そうそう、それだ。で、私とエマは今から行くが…ランも来るか?」


「僕?行っていいなら行きたいけど…。いいの?」


「ああ、これからランとはよく遊ぶことになると思うし、来て欲しいらしいぞ」


 ほえー。にしても、幼馴染ってやつかー。

 実は同じ年代の子が近所にいなくて寂しかったんだよなー。

 これからよく遊ぶことになると思うし、顔出しに行ったほうがいいよな。


「行く!今から支度するから少し待ってて!」


「分かった。準備ができたら玄関まできてくれー」


 了解、と言って自分の部屋に戻ろうと図書室を出る。すると、ヘンリーの独り言が聞こえてきた。


「それにしてもうちの子は…話せるのが早すぎないか?いつも図書室に入り浸ってなにか調べてるようだし…」


 あ、やべやべ。やりすぎたか?


「全く、うちの子は優秀だな!はっはっはっ!!!」


 良かった。

 ヘンリーは馬鹿だった。







 外行きの服に着替えて外に出ると、エマとヘンリーが待っていた。相変わらず並ぶと絵になるな、この両親。


「おっ、来たな。じゃあ行くか」


 そう言って馬車に乗り込む。

 …馬車なのか。

 そういえば敷地の外に出るの初めてじゃね? あまりにも敷地が広すぎて満足してたから気づかなかった。やばい、ちょっとワクワクする!


 期待しながら窓の外をキョロキョロと眺めていると、エマが、


「ふふ、こういうところはまだまだ子供なのね。安心したわ。いつも大人びていたものだから」


 しょうがないじゃん、異世界の植物がそこら中に生えてるんだぜ?

 うおっ、なんだあの虹色の木! 目に悪いな!!


 そんな風に外の景色を楽しんでいると、目的地に着いたようだ。

 え、近っ。これ馬車使う必要あった?

 あ、俺のために今日は馬車使ったのか。ありがとう。


「おーい、イーサン!いるかー?」


 へー、ヘンリーの友達はイーサンって言うのか。なんか強そうだな。


 少し待つと、家の中から慌てた様子でガタイのいい男性が出て来た。いや、強そうだな!?


「おお、来たかヘンリー。エマさん。そして、ランくんだね?二人からよく聞いているよ」


 おおう…近づかれると迫力ある…。

 それにしても両親、俺のことって何を話しているんだろう?なんか恥ずかしいことを言われてなければいいが…。


「こんにちは。イーサンさん。本日はお呼びいただきありがとうございます」


 取り敢えず外向きの顔で挨拶しておいた。

 するとイーサンは驚いたように、


「おお、聞いている通りだね…。本当に君1歳かい?」


 と言った。


 笑顔でごまかした。


「ところでイーサン、こんな話をしている時間はあるのか?」


「そうだ!もうすぐ産まれそうなんだ!取り敢えず中に入ってくれないか?」


 そう言われ、家の中には上がると、見たことの無い工具のようなものが大量に置いてあった。


 職人さんなんだろうか?強そうなのに…


「僕は妻のそばに居るから、ここに座っていてくれないかい?すまないね、客人なのにもてなせなくて」


「ああ、気にするなって」


「…ありがとう」


 ………やだヘンリーちょっとイケメン。




 イーサンが部屋を出て言ったのを確認し、ヘンリーが言った。


「あいつは魔法具を製作する職人なんだ。驚いたろ?あの見た目なのにな」


 やっぱり職人だったか。あの見た目なのに…。しかし魔法具とは…俺も使える時が来るのかな?


「しかもイーサンは実用的な小物を大量に作って、大量に売ってるからな。それなりに名が売れてるんだ。なかなか凄いんだぞ?」


 ヘンリーはまるで自分のことのように自慢してくる。

 どうやら本当に仲がいいらしい。


 その後もイーサンについての話や、魔法具についての話を聞いていると、おぎゃぁぁぁ!!!と、元気な声が聞こえてきた。




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 いーさんさん…(´・ω・`)

 そして幼馴染()のご登場です。

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