第5話
気がついたら、そこにいた。
デジャヴ。
俺はさっきとは打って変わって今度は真っ黒な部屋に来ていた。暗いのではない。とにかく黒いのだ。
おまけに俺が座っている椅子も黒く、座っていなければ、そこに椅子があることすら分からなかっただろう。
「はぁ…まだなんかあるのか…おーい、ルド〜、できるだけ早くしてもらえないか〜」
「残念!ルドじゃありませんっ!」
「うおあっ!!」
俺がルドを呼ぶと何故か黒い布を……何故かじゃないな、俺を驚かすために黒い布を被った男の子が突然現れた。
「あははははっ!うおあっ!!だって!あははははっ!」
「いや、何もないと思ってたところから急に人が出てきたら驚くだろ…」
「ごめんごめん!そんなに拗ねないでって!」
別に拗ねては無いけど…いや本当に。
「別に拗ねてはいないんだが…まぁいいや。手短に話してくれないか?俺早く異世界行きたいんだけど」
「…いやー、死ぬつもりで異世界行こうとしてる人見たらついつい、ね?」
「っ!…なんだお前、心でも読めるってのか?」
「いやいや心は読めないよー。正しくは読めるけどそれじゃプライバシーの侵害でしょ?」
プライバシーて…異世界にもそんなのあるのか。
「あ、いや、地球ほど明確にはないよ?」
「読んでんじゃねぇか!!!!」
「あははははっ、ごめんごめん!そっちの方が面白そうだったから」
この野郎。
「それより、話を戻すけど、君の顔見たら死のうとしてるなんて否が応でも分かっちゃうよ?絶望と悔恨って書いてあるみたいだったもん」
「え゛、マジか…ポーカーフェイスは得意だと思ってたんだが…」
見破れたのはあのムカつく後輩だけだったのになぁ…
「いや、君のポーカーフェイスは完璧だったよ〜。…怖いくらいにね」
「そうなのか、じゃあなんでバレたんだ?」
「いやいや君異世界に飛ぶ瞬間素になったでしょ」
あー…なるほどね、確かにそんな気もする。光で隠されたっぽかったから油断した。
まぁどうでもいいが。
「で、もういいか?もうお前の知的好奇心は満たされただろ?」
「はーあ、せっかちだねぇ。女の子に嫌われるよ?」
「…ガキに言われたかねぇよ」
「ガキじゃなーーい!僕は君の何百倍も長く生きてるんだぞ!失礼だな!!」
「じゃあジジィに言われたかねぇよ」
「ジジィでもないよ!!なんなのさ!!泣くよ!!!」
「ごめんてw」
「草を生やすなばかやろーー!!!」
そう叫ぶと少年は座り込んでしまった。どうやら歳の話はあまりしないほうがいいみたいだ。
「で、お前って何者なんだ?」
「軽いなぁ…。まぁいいや。えーと、僕について、か。僕の名前はシオン。君が今から行く世界の神さ。」
「ほーん、ルドとは違うのか?」
「違うよ。僕はあの女神たちに作られた存在さ。というか神に会ってるのに反応薄すぎない?」
「女神たちって…女神って何人もいるのか?というか、今から行く世界は女神に作られた世界なのか?」
「おう…無視なんだね…。どっちもYESだよ。けど安心して。あっちの人間はちゃんと自分の意思で動いてる本当の人間だよ。これ以上は女神たちの目的にも関わってくるから話せないけど」
「あーそうか。すまん、単なる好奇心だ。ていうかこれから死ぬのにこんなん聞いても意味ないし」
「それ、間違ってるよ。」
「は?」
「君は死なない。死ねない。」
何を言っている?
「…どういうことだ?あっちの世界では死ねないようになっているってことか?」
「違うよ。それはない。そういう意味では君はいつでも死ねる。だけど、君は君の意思で死ねない。なぜなら…君はとっても優しいからね」
「なんで、わかる?」
「未来視だよ。これでも神なんでね。この目で見た人の近い未来についてはわかるのさ。」
「………初めて神らしいところ見せてきやがって」
「はぁ…君の悪態いちいち心にくるんだけどなんとかならない?」
なんとかするつもりはない。
「ああ、ついでにもう一つ神らしいことをしとこうかな。」
シオンはそう言うと何やらぶつぶつ呟き出した。すると俺の足元に魔法陣が現れ、光り出した。
「じゃあ異世界に連れてくよー」
「いや神らしいことしょぼいな!ここから異世界に連れてくなんて確定事項だろ!」
「ん?ああ、違う違う。君が異世界に行く瞬間にお告げでもしてあげようと思ってね」
「お告げ?」
「そ。ああ、もうそろそろだね。じゃあ、よく聞いて。君の中の一番大きな悩みは少なくとも一年とちょっと、長くて……ああ、意思疎通ができない可能性があるか。じゃあ三年半以内に解決するよ。だから、そこまでは生きてみて。」
「おい、それはどういう…」
「あ、あと君に『体技』でもあげようかな。チート程じゃないけど強いよ。まぁ僕は使いこなすまでに150年かかったけど」
「お、おい!そんなことより!!」
「ざんねんながら、もう時間だよー!ではでは!」
「待てって!!」
その瞬間、既に何度か味わったことのある浮遊感が訪れる。
「良い異世界ライフを!」
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この主人公いつも誰かと口喧嘩して遊んでますね……書くのすごく楽しいけど。
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