第10話 一大事じゃねえか!(前編)
差出人は
『今から5分以内に部室に来ないとあなたの黒歴史を1つ公開します』
というものだった。
この脅迫メールに対して俺は
『そんな脅し文句に引っかかるわけないじゃないですか』
と返信した。
すると直ぐに先輩から返信があり、そこには
『あれは小学校4年生の冬休みのこと――』
そこまでしか書いていなかったが、なぜ雪島先輩が俺の黒歴史を知っているのかという疑問よりも先に体が動き、一目散に部室へ走った。
文芸部の部室は昇降口と同じ棟の1階にあるが、この学校の校門は一つしかなく、しかも昇降口からやたらと遠い。正直、5分で部室まで行くのはかなり厳しい。
部室に着いた俺は勢いよくドアを開け、中に入った。
「はぁ、はぁ……ま、間に合ったか?」
「あら残念、惜しかったわね」
「えっ? まさか時間切れ?」
「あと30秒で
「そ、そうですか……」
まじで危なかった。冗談っぽく言っているが、この人なら本当に公開しかねない。
俺が部室に来た時には既に部室には俺と同じく先輩に呼び出された
この3人の前で俺の黒歴史を公開されたら俺もう二度と部活へ顔を出せなくなるところだった。
まあ俺の黒歴史についてはまた今度――じゃねえよ! 話すわけないだろ、絶対に話さんぞ、一生話さんぞ!
「じゃあ、全員揃ったし始めましょうか」
そこで俺はこの場に
「あれ? 暁美先輩は?」
「あの子なら補習してるわ」
「さいですか……」
まああの人の場合、補習していない方が珍しいが、それにしたって少しぐらい部活来てもいいと思うんだが。
「じゃあ始めるわよ」
「そう言えば何をするんですか?」
「蝶野さんが話があるみたいだけど、覚えてるかしら? 昨日彼女が来た時最初に言ってたこと」
「えっと……」
何か言ってたっけ? あまりにも酷い出来事が印象に残ってるせいで他のこと何も覚えてないんだけど。
「いいですよ部長、あとは私から話します。どうせ篠崎先輩が覚えているわけないですし」
「はい……すんません」
最初に会った時にも思ったが、なぜ俺はこんなにもバカにされているんだろうか。
「私は相談、もとい頼みがあって文芸部に行ったんです」
あぁ、そういえばそんなこと言ってたような気がする。けど脅し用の写真持ってきてたよな……。もしかして先輩に断られることが分かっていたのか? だとしたらすげえ可哀想だなこの子、見事に返り討ちにされてる。
「それでその内容は? 出来れば手短に話してくれと助かるのだけれど。それと引き受けるかどうかは内容を聞いてからにするわ」
内容によっては引き受けないつもりなのかこの人。
「分かりました、では単刀直入に言います。私の友達を助けて下さい」
「…………」
あの先輩が考え込んでいる所を見ると、一応真剣に聞いてくれていると言うことだろう。
いやまず助けるってどういうことだ? 何かの事件に巻き込まれたとか? いや、だとしたら警察に行くべきだしそれは無いか。
「詳しく聞いていいかしら」
「はい、まず私の中学校からの友達で
「1ヶ月前ってことはもしかして……」
「彼女は入学式以来学校に来ていないんです」
「ということは、少なくともいじめという可能性は無いわね」
まあ確かに入学初日からいじめとかありえんだろうしな。それにいじめが原因なら俺達を頼ろうとはしないだろうし。というか俺達を頼って来たってことはおそらく原因は――
「異能力ね」
先輩と同じ結論に至ったって事は予想は合っていると思うけど、俺の心の声に合わせて喋ってるようにしか思えないタイミングの良さ。
「何か文句でも?」
「別に無いですけど……って、さっきから俺の心読むのやめて下さいよ!」
怖ぇな! この人の時間止める以外にも能力使えるのかよ!
「そんなわけないでしょう」
「だから心を読まないで!?」
「あの……続けていいですか?」
「ああ、ごめん、どうぞ」
「先輩達の予想通り、不登校になった原因は異能力です。いえ、正確には異能力によって発生したある出来事が原因です」
「ある出来事?」
「私が実際に見た訳では無いですけどかなり大きな問題です」
異能力で問題が起きるとすれば、能力の暴発とかだろう。でも俺たちの時は1週間もしない内に治まったんだけどな。
「本人
「…………は?」
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