第8話 予想してないのが来たんだけど…(前編)
文芸部が新入部員の募集をかけてから3日目の朝。入部希望者は0人。今は部室にて今後の方針を立てている。
「やっぱりこの時期に新入部員なんて来ませんよ」
「いや、もしかしたら運動部の厳しい練習についていけなくて、部活を辞めた人がいるかもしれないじゃない」
「仮にそんな人がいたとしても、元々運動部だった人が文芸部なんて来ると思います?」
「大丈夫よ、最悪私が部活に入っていない生徒全員に個人的に勧誘に行くから」
「いや誰が部活入ってないかなんて分かんないでしょ」
「私を誰だと思っているの? 全校生徒の情報ぐらい入手しているに決まっているじゃない」
「それは凄いですけど、その情報をどうやって入手したのかが気になるんですが」
「細かい事をいちいち気にしてたら女の子にモテないわよ」
「ほっといてくださいよ!」
全く、何かとつけて俺に彼女いないこと馬鹿にしてくるんだから。……それにしてもどうしよう、全然入部希望者来ないし最悪このまま誰も来ないということも想定しないといけない。
そんな事を考えていたら、部室のドアをノックする音が聞こえた。中にいる全員がそちらを注目し、雪島先輩が「どうぞ」と言うと
「失礼します」
そう言って一人の女子生徒が入って来た。小さな封筒を手に持って真っ直ぐに雪島先輩の座っている方へ歩いて行く。そして先輩の正面に立って、机に向かって封筒を叩きつけた。
「お願いがあります」
「断らせて貰うわ」
はやっ! まだ内容を聞いてもないのにそんなノータイムで断れるとか、色んな意味でこの人凄すぎだろ。
「そんな事言っていいんですか?」
「何が言いたいのかしら」
「私は先輩たちの秘密を知っています」
「……なんの事かしら?」
先輩が顔をしかめている。珍しく動揺しているらしい。
「しらを切っても無駄です。そこの封筒の中身を見ていただければすぐに分かると思いますよ」
「悪いけど私は忙しいの、そんなくだらない冗談に付き合ってられないわ」
「そうですか、しょうがないですね……。じゃあそこの頭悪そうな先輩、封筒の中身を確認して貰えませんか?」
「えっ、俺?」
まさか初対面の人にいきなり頭悪そうとか言われるとは思わなかった。いやまあ、否定はしないけれども。
「しょうがないわね、篠崎君、開けなさい」
「はぁ……、分かりましたよ」
俺は渋々封筒を開けた。
「……なっ!?」
そこに入っていたのは1枚の写真。問題なのはそこに写っていたものだった。なんと手から炎を出している俺の姿がバッチリと写っている。
「こ、これは……?」
「よく写ってるでしょう、この間放課後撮ったんです」
思いっきり盗撮じゃねーか。いや待て、そんな事よりも、問題なのは中身の方だ。これこの間の検診の時のやつだよな。何でカーテン開けっ放しでやってんだ俺は、アホか。
「これで分かってもらえましたよね。先輩たちに拒否権なんて無いんですよ」
「つまり言う事を聞かなければ、この写真を公開すると言いたいわけね」
「ご理解頂けたようですね」
「あなたバカなの? 証拠の写真をわざわざ持ってきて、この場で破り捨てる事もできるのよ」
「ご心配なく、既にデータはうちのパソコンに保存してますから」
「じゃあ盗撮で訴えさせてもらうわ」
「それをして困るのは先輩たちじゃないですか? 警察にその写真が渡ったら先輩達のことがバレちゃまいますね」
「こんな
「そうでしょうか? 専門の人に見せればCG加工したかどうかなんてすぐに分かる話です。それに写真はこれ1枚じゃないんですよ。全部公開すれば一般人が見ても信用すると思いますよ」
「……」
す、凄いなこの子、あの雪島先輩をここまで言い負かすなんて。って関心してる場合じゃない、何か反論しないと。
そう思って俺が口を開いた瞬間、
「いいわよ、篠崎君」
そう言って先輩はゆっくりと立ち上がった。
「念の為聞いとくわね。今ならまだ写真を削除すれば許してあげるけど」
「そんなつもりは毛頭ありません」
「そう、じゃあ仕方ないわね。篠崎君、桜木君、少し外に出てなさい」
「「えっ?」」
「大丈夫、すぐに済むから。さっさと出なさい」
「「はぁ……」」
そんなこんなであっという間に外に追い出されてしまった。と言うか中で何するつもりなんだろう……。何か物凄く嫌な予感がするんだけど。
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