第6話 新入部員が欲しい!(中編)
学校に着き、先輩は先生を呼びに職員室へ、俺と心海は先に部室へと向かった。
部室に着いたら中から声が聞こえた。声からしておそらく薫だな。だったら問題ない。知らない人だったら話を遮るようで申し訳ないが、薫なら許してくれるはずだ。
俺は勢いよくドアを開け中に入る。
「あ、正一、それに藍川さんも、おはよう」
俺達を見た薫が助かったと言わんばかりの顔をしてこっちに来た。
「おはよう薫、どうかしたのか?」
「いやそれが――」
「お、いい所に来たな正一! 聞いてくれよ、こいつが私に早く帰れって言うんだ、何とかしてくれ!」
この人は文芸部のもう1人のメンバー、3年生で雪島先輩の幼なじみの
性格は明るく素直で、いい人なんだけれど、どうやって高校に入学出来たのか、それとどうやって3年生になれたのか不思議なくらい頭が悪く、この間も新学期一発目のテストで0点をとってしまったので、補習に追われている。
まあもちろんこの人も異能力者な訳で、能力は「瞬間移動」、手に触れているものを別の場所に瞬間移動させる。最大重量は60kgだが、この人の場合体重が軽いので自分ごと移動出来る。1番便利なのは移動が楽になることなんだよな、羨ましい……。
まあ、それは置いといて……。
「雪島先輩に部活に来るなって言われてるじゃないですか。少なくとも赤点回避出来るまではって、怒られないうちに早く出てった方が身のためですよ」
「お前までそんな事を言うのか!? 大体、私を呼びだしたのは花蓮なんだぞ!」
「「えっ?」」
俺と薫の声が重なる。そりゃそうだ、自分で来るなって言っておきながら、今度は来いって言ったり、あの人言ってることがめちゃくちゃだぞ。
そんな事を考えていたら、急に後ろのドアが開いて、顧問の鷺宮先生が入って来た。
「おーし、全員揃ってんな、んじゃまず図書室に行くぞー」
「いやちょっと、雪島先輩は? それと呼び出した理由をそろそろ教えて欲しいんですけど」
「あいつなら先に行ってるし、理由なら後で教えてやるからとっとと来い、ただでさえ面倒な案件なんだから」
「はぁ、分かりましたよ……」
この人が、俺ら文芸部の顧問で俺のクラス担任の
でもこの人の場合、ルックスとか全体的なスペックは高いんだが、何というか性格が残念な人なのだ。
ちなみに、この人は文芸部員が異能力者だと知っている。というか、俺らが異能力者になった時、この人は同じ場所にいた。色々あって、先生には他の先生や生徒には内緒にしてもらっている。
「おい、何ぼさっとしてんだ、早く行くぞ」
「あ、はい、すぐ行きます」
そんなことを考えていたら皆に置いて行かれてしまったので、俺は急いで部室を出た。
そういやさっき面倒な案件とかなんとか言ってたな。うへぇ、嫌だな。大体面倒事を生徒に押し付ける教師というのはどうなんだ? ろくな大人じゃねえ。そんなんだから結婚できないんじゃないのか?
そして、図書室に着いて中に入った瞬間、とんでもない物を見てしまった。
「なんじゃこりゃ!?」
図書室にあったのは大量に積み上げられた本だった。ざっと見積っても1000冊はある。
やべえ、なんか嫌な予感がする。
「一応聞いておきますけど、用事ってまさかこれですか?」
「察しがいいな、お前達にはこれの整理をして欲しいのだが、出来れば今日中に終わらせてくれ」
「いや流石にこの量を一日でやれと言うのは無理がありますって、そもそもなんでこんな事になってんですか」
「先週、図書委員会で蔵書点検があって、全部出して整理したのはいいんだが今度は戻すのが面倒くさくなったらしくて、そしたら委員会の先生が私に丸投げしてきてな」
「それって図書委員の後始末じゃねーか! 冗談じゃない、そんな事に費やす時間なんてないぞ!」
いや、別に特別忙しいわけでもなんでもないけど、図書委員の後始末で働かされるってのは癪に障る。
「……」
誰も何も言わない。そりゃそうだ、この量を一日で出来るなんて誰も思ってないんだから。
「あっ! いい方法があるぞ!」
その沈黙を破ったのはまさかの暁美先輩だった。
「「えっ?」」
暁美先輩以外のこの場にいた全員が何言ってんだこいつみたいな反応する。
正直、暁美先輩が口を出すとは誰も思ってなかったし、あの雪島先輩でさえ驚きが隠せてない。いや、そもそもこの人ちゃんと話を理解して言ってるのか?
「なんだその反応は、失礼な連中だな!」
「いやだって、正直君にはあまり期待していなかったから……」
「呼んどいてそれはないだろ葵ちゃん!」
「先生をちゃん付けで呼ぶな! 勿体ぶってないで、さっさとその方法をおしえろ!」
「フッフッフッ、しょうがないな、教えてやろう!その方法とは……」
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