第50話 紫さんの魔法

リビングに戻ると三人が談笑していた

「さっきの話しは愛衣には内緒だよ」

「はい」

小声で受け答えする


「紫さん、おまたせ」

「うふふ、お話しはできたみたいですわね」

「ああ。浩二くんは良い人だね」

「ええ、そうね。なんと言っても愛衣が選んだ人ですから」

「はは、そうだな」


「それでは、私達もお風呂入りましょうか」

「はい、母様」

「え、私も?」

「もちろんよ。ささ、行きますわよ」

三人は揃ってお風呂に向かった


さて、どうしようか……お義父さんとまたしても二人っきりだ

何か会話しないと……


「えっと、お義父さん」

「なんだい?」

「気になった事があるんですが」

「何でも聞いていいよ。紫さんとの馴れ初めかな?それとも愛衣の小さい頃の話しかな?」

「えっと、紫さ、お義母さんの持っている日傘についてなんですど」

「ぷっ、ははっ、大丈夫だよ、今まで通り紫さんって呼んでいいと思うよ。紫さんならそう望むだろうから」

「は、はい」

「ああ、それで質問の答えだけど。あの日傘は僕が造ったものだよ」

「そうですか」

「どうしてそんな事を?」

「専属契約についてもう少し知りたいと思いまして」

「そっか。うん。じゃあ話そうか」

「お願いします」

「紫さんの魔法について浩二くんは知ってるかな?」

「直接聞いたわけではないですけど、見て体験しましたから予想なら」

「聞かせて」

「はい。おそらく、空間転移とか空間跳躍とかそういった魔法だと思います」

「うん。大まか正解だね。凄く便利な魔法だと思うだろ?」

「はい」

ワープできるなら何処へでも自由に行ける

攻撃も防御も隙きがない

「でも、実はそこまで便利な魔法じゃないんだよ」

「え?」

「あの魔法には制限があるんだ」

「制限、ですか」

「うん、一度行ったことのある場所にしか行けないし。しっかり詠唱しないと二人以上の通れる門は開けない」

「だからあの時は詠唱を」

「そうだよ」

「じゃあ紫さんは銀の魔女の屋敷に行った事があるんですか?そんな素振りはなかったようですけど…?」

「多分行った事ないんじゃないかな」

「じゃあどうやって」

「そもそもあの時、銀の魔女の屋敷に愛衣がいるって決まってたわけじゃないからね」

「ん?えっと?」

「愛衣は娘だから魔力的な繋がりがあるんだ」

「それを利用して……」

「でも、それだけじゃ足りないんだ」

「足りない?」

「うん。今、愛衣の中で一番は浩二くんなんだよ。だから紫さんだけだと繋がりが弱いんだ」

「俺が……」

「そう、言わば浩二くん自身が愛衣のいる場所と繋がるための魔法の触媒ってわけなんだ」

「だから俺も連れて行ってもらえたんですね」

「うん。因みに僕の所へはいつでも来れるんだって、嬉しいよね」

「そ、そうですね」


最後に惚気けられた

いや、健さんて惚気話ばっかりじゃないか?

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