第47話 パーティー3
ゴンゴンと来客を伝えるノックの音が玄関から聞こえた
「えっと、誰か来たみたいですね。私行ってきます」
タトタトとリビングを出ていく愛衣
「……はぁーー、熱々すぎでしょ」
「はは、ごめん」
キッチンから大量の料理をワゴンに乗せて愛衣の両親が戻ってきた
「いやぁ、おまたせ。久々に紫さんと料理してたら夢中になってしまったよ」
「うふふ。健さんたら、恥ずかしいわ」
「あーーー、こっちもかーーー」
小声で本郷さんが小言をもらす
「あら?愛衣は?」
「来客みたいで、玄関に」
「そう。誰かしら?ちょっと見てくるわね」
「ああ、いってらっしゃい紫さん」
紫さんも玄関に向かうが慌てた様子ですぐに戻って来た
「愛衣が、攫われたわ」
「なんだって!?」
「えっ!?」
「はぁ!?」
玄関には一枚の紙が落ちていたらしい
見せてもらうとそこには
黒の魔女Ms.ブラック様へ
我々のお茶会へご招待致します
心より参加をお待ちしております
銀の魔女Ms.シルバーより
と書かれていた
「愛衣ったら迂闊なんだから……」
「どういう事ですか?」
「浩二さんは知らなかったわね。魔女はね定期的にお茶会っていう会議みたいなものを開くの」
「会議ですか?」
「ええ、主に仲間の魔女を集めて情報交換をするんだけど……」
「そんなものがあるんですね」
「でも、攫われたってのは?仲間の集まりなんですよね?」
「この銀の魔女は違うの、銀の魔女Ms.シルバーは過激派に属している魔女なのよ」
「え……それって!」
「ええ、私達穏健派と敵対してる魔女のお茶会に招かれてしまったの」
「た、大変じゃないですか!?ど、どうするんですか!?」
「落ち着きなさい、浩二君」
「健さん?」
「大丈夫。紫さんが直ぐに連れ帰ってくれるから」
「うふふ。そうね。健さんが信じてくれるならなんでもできちゃう気がするわ」
「紫さん、愛衣を迎えに行こう」
「そうね。浩二くん、手伝ってくれるかしら?」
「もちろんです!何をすればいいですか?」
「私の手を握ってくれるかしら?」
「え?はい」
紫さんの手を握る
「次は愛衣の所へ行きたいと心から念じて」
「はい。……愛衣」
紫さんは目を閉じて深呼吸を一回すると詠唱を開始した
「門よ、開け。
こことは異なる地点を結ぶ、魔術の門よ。」
目の前に大きな扉が現れた!
「想いに応えて繋がりなさい。
この門に如何なる障害も存在しない。
想いは如何なる障害も超えて征く」
もう一方の手で持っていた黒い日傘を扉へ向けてひねる
ガチャりと重く硬質な音がして鍵が開く音が響く
「開け、開け、開け。
黒の魔術の秘奥が一つ、『
巨大な扉が開くがそこには真っ黒な闇があるだけだった
「あの、これは?」
「ふふ、さぁ行きますわよ」
紫さんに手を引かれて闇の中へ入る
するとそこはもう見知らぬ場所だった
愛衣と見知らぬ少女が数人いる
テーブルには軽食とティーポットと人数分のカップがある
本当にお茶会ようだ
「あら?どちら様かしら?」
「愛衣の母です。娘を返してもらいにきましたわ」
「ここがどこか知っての発言かしら?ここは我が銀の魔女の屋敷ですのよ。どうやて来たのか知りませんが、無事に帰れると思ってますの?」
「ええ、勿論帰らせていただきますわ。若いって良いわね、自分の力が一番だなんて勘違いができるんですもの。愛衣?帰ったらお説教ですよ」
「はい。母様」
「まずは、愛衣を返してもらいますわ」
「はぁ?何言って」
紫さんが日傘を開き先端を愛衣に向ける
次の瞬間に愛衣は紫さんに抱かれていた
「なっ!?あたしの結界を!?」
「あの程度の結界もどきで黒の魔女を阻む事はできませんわよ」
「ふざけないで!あたしが組み上げた結界をもどきですって!?」
「ええ、あんな不完全なもの結界とは呼べませんわ」
「くっ…ならこれで!『
銀色に輝く15cmほどの針が空中に現れて紫さんに飛翔する
「はぁ……その程度の魔術でどうにかなるわけないでしょう?」
紫さんは避ける素振りも見せずただ佇む
針は紫さんに近づくと黒い穴に吸い込まれて何処かへ消えた
「なっ!?何をしたの!?結界?防御魔術?でもなんの素振りも……」
愕然とする銀の魔女
「あ、あんた達も攻撃しなさい!命令よ!」
どうやらその場にいた数人の少女は銀の魔女の仲間というか部下みたいなもののようだ
躊躇いつつもそれぞれ魔法を放つ
様々な魔法が紫さんを狙う
しかし、紫さんには一切当たらない
紫さんはただただ日傘をさして立っているだけだった
銀の魔女とその仲間の魔女の少女達が一度攻撃を止める
「あら?もう終わりかしら?」
「あんたは強い、ならあんた以外を狙えば良い!そこに突っ立ってる男を狙いなさい!一斉攻撃!」
先程まで紫さんを攻撃していた魔法が今度は俺目掛けて放たれる
「う、うわーーーー!」
あ、これヤバいやつだ!避けるのは…無理か……少しでもダメージを減らさないと!
必死に防御姿勢をとる
「させません!」
愛衣が凛とした声で宣言する
「その炎は魔女を焼き断罪した!『犠牲の炎』!!」
すると俺の前に炎の壁が出現し飛来する魔法を焼き尽くす
「なっ、魔女のくせに魔法図書ですって!?」
「浩二さんに手を出したら許しません!」
「たかが魔法図書で私達の魔法が防げると思ってるの?直ぐに魔力切れで使えなく…」
轟轟と燃え盛る炎の壁は一向に衰えない
「まさか、クアッドを使って?」
「いいえ、これはダブルですよ」
「そんなはずないわ!そんなのありえない!ダブルの魔力貯蔵量ならとっくに魔力切れを起こして!」
「銀の魔女さん。なんで魔力切れが起こるか、知ってますか?」
「そんなの魔力の貯蔵量がなくなるから」
「なくなるなら補充すればいい、それだけでしょう?」
「そんな早く補充するなんて不可能よ!魔力栞の効率がどんなに良くてもいつか限界が来るはずよ!」
「無知、ですね。まぁ、教える必要も無いですし。そろそろ魔法を止めてくれませんか?いい加減我慢の限界です」
「はっ!そっちこそ!魔力栞の限界なんじゃないの!?」
「そうですか。止めませんか。母様、この子達に少し怖い思いをさせてもよろしいでしょうか?」
「うふふ、仕方ないわね」
「何よ!やるっていうの?」
「防御魔法が使えるなら全力で使いなさい。じゃないと危ないですから」
「脅しのつもり?そんなの」
「いえ、警告です」
「……」
「いきます。魔法図書【魔女裁判の歴史~魔女たちの無念~】『
1mくらいの炎でできた十字架が一つ出現した
炎の熱で床が黒く焦げ、室内に異臭が広がる
室温がどんどん上がり汗が頬を伝う
銀の魔女目掛けて放たれる炎の十字架に銀の魔女は咄嗟に防御魔法の盾を発動する
しかし、白銀に輝く盾はあっという間に赤熱し融解する
銀の魔女は横に飛びギリギリ直撃を避ける
盾を完全に溶かし先程まで銀の魔女のいた位置で爆発する
爆風に煽られて銀の魔女が床を転げる
爆風に煽られて他の魔女達も魔法を放つのを止める
そして爆発した地点の床は溶けて抉れ、壁から天井にかけてヒビが入ってパラパラと破片が落ちてくる
とてつもない威力の魔法だった。俺にはそれしか分からなかった
「まだ、続けますか?」
愛衣の静かな問いかけに応える声はなかった
どうやら戦いは終わったようだ
「浩二さん!怪我はないですか?」
愛衣が心配そうに声をかけてくれる
「ああ、どこも怪我してないよ。愛衣が守ってくれたから」
「えへへ、よかったです」
「愛衣、ちゃんと加減できましたね。偉いわ」
「はい!」
あれで手加減してたのか!?
「さて、そろそろ帰りますよ」
「はい、母様」
「はい」
俺たちは紫さんの魔法で無事黒坂邸に帰ってきた
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