第46話 パーティー2

「うふふ、浩二さんも愛衣も初々しくてかわいいわ」

「母様!からかわないでください」

「あらあら、さっきまで不安そうにしてたのに今は元気いっぱいね」

「母様ぁ!」

「確かに、さっきまでしおらしくしてたのにさ」

「本郷さんまでっ!?」

「ははは、いいじゃないか。本当のことだろう、愛衣」

「パ、父様まで!」

「ううー……」


 からかわれている愛衣も可愛いな

 そんなワイワイとした空気からパーティーは始まったのだった


 基本的に服装以外は畏まったものではなく、ホームパーティーの延長上のような感じで多少気軽に楽しめている。まぁ緊張はするが……


「そろそろ料理を出しましょうか」

 紫さんがリビングからキッチンへ向かう

「僕も手伝うよ」

 そう言って健さんも一緒にリビングを出ていった


 これで一息つけるなぁ

「ふぅー」

「お疲れですか?浩二さん」

「あ、ああ、まぁね。パーティーなんて慣れてないからね」

「ふふ、そうですか。これからは慣れてもらいますよ?一緒に魔女のパーティーに参加してもらいますからね」

「あーー、そっか。そういうのもあるのか……」

「イヤに、なっちゃいましたか?」

「そんな事ないよ。頑張って慣れるようにするから、色々教えてくれるか?」

「はい!もちろんです!」

「甘いわー……甘すぎて胸焼けしそうだわー…」

「あ、ごめん」

「ていうか、なんでそんなラブラブなの?浩って愛衣ちゃんの事元からそんな好きだったの?」

「……いや、そういえば最初はそうでもなかったような……」

「えっと、それはですね、なんと言いうか、その……」

「愛衣ちゃん…?何かあるの?」

「……はい」

「愛衣……?」

「説明します……。私と浩二さんが交わした専属契約というのは、人の感情に作用するものなんです」

「感情に作用するって、まさか魔法の力で魅了するとか?」

「ち、違います!魔法はそこまで万能ではないですから」

「じゃあ、なんで?」

「専属契約というのは、他の魔女から奪われたくない…という想いからできた魔法というか儀式なんです」

「奪われたくないって、俺が他の魔女の所に行かないようにするってことだよな?俺は愛衣以外の魔女なんて知らなかったのに?」

「おいコラ、私だって魔女なんだけど」

「あ、そっか。てことは、愛衣は本郷さんに取られると思ったのか?」

「いえ、専属契約をしたのは取られる心配ではなくて…浩二さんの命が危なかったから……と、その……」

「そっか、命の恩人だから愛衣の事をこんなにも愛おしく想うのか」

「いえ、そのですね……」

「違うのか?」

「はい。浩二さんが私を慕うのは私が……浩二さんを……だ…大、好きだから!……です」

「愛衣ちゃん?今更そんな告白聞かされても……」

 ややうんざり気味に本郷さんがこぼす

「あ、その、えっと……専属契約というのは、その、好意が触媒なんです」

「こうい?」

「好きって感情の好意です」

「ああ、好意か」

「はい」

「それで触媒ってのは?」

「それなら私も知ってるよ」

「本郷さん知ってるのか?」

「浩二は聞いたことない?魔法を使うのに血を使ったりするって」

「あー、漫画とかでなら聞いた事ある。けどあれってフィクションだろ?」

「まぁね。でも、中には正しい魔法の知識を持った人が書いたものもあるんだよ。それがじわじわと浸透していって定着したの。よくある魔法の設定としてね」

「て事は、真似すれば魔法が使えたりするのか?」

「それはありえません!」

「愛衣?」

「あ、ごめんなさい。その、基本的に魔法の行使には血が必要だからです」

「血って魔女の血って事か?なんか物騒だな」

「いえ、どちらかというと血筋です。私は黒坂家の血筋として、黒坂家に伝わる魔法は使えます。でも本郷さんの家に伝わる魔法は使えません」

「そうなのか」

「はい。なので一般人が真似しても魔法は使えません」

「なら、安心だな。えっとなんの話しだったっけか?」

「専属契約の触媒が好意だって事ね」

「ああ、そうだった。それで愛衣、専属契約をした結果俺が愛衣を好きになったのか?」

「えっと、少なくとも浩二さんは私を嫌ってなかったと…思うんです」

「そうだな。嫌ってはなかった。どちらかというと好感を持っていたな」

 ホッとする愛衣ともういい加減にしてという表情をする本郷さん

「よかった……。えっと、まず専属契約という儀式はお互いを奪われたくないからする……ある意味では縛る儀式です」

「離れないようにするってことか?」

「はい。そしてもう一つの副次効果があります。それは、お互いの好きと嫌いを足して、半分ずつにするんです」

「好きと嫌いを半分ずつに?」

「あーー。なるほどね。愛衣ちゃんが説明しづらかったのわかったわ」

 本郷さんが理解したとたん愛衣は顔を真っ赤にして瞳をうるうるさせた

「ん?どういうことだ?」

「つまり、愛衣ちゃんが浩二をとんでもなく大好きってこと」

「…………っ」

 愛衣は耳まで真っ赤にしてとうとううつむいてしまった

「ん?」

「塩谷くん鈍いなぁ……契約前の浩二はパーセンテージで表すとどれくらい愛衣ちゃんに好意を持ってた?」

「んーー……40%くらいかな」

「結構好きだったんじゃん……で、愛衣ちゃんは多分だけど100%好きだったんだよね」

「そうなのか?」

 小さくコクりと愛衣が頷く

「でだ。二人の好意の総量は140%でその半分は?」

「70%?」

「正解。つまり、儀式の前と後で30%もの違いがある。でも浩二はそれに違和感を抱かなかった」

「そういえば、そうだな」

「つまり!浩二も愛衣ちゃんの事を元から好きだったって事だよ」

「「えっ!?」」

「なんで二人して驚くのさ。はっきりいって30%も感情がぶれたら違和感があるはずよね?でも違和感を抱かなかった…つまり浩二は実際の所、無意識ではあるけど愛衣ちゃんの事が好きだったって事だよ」

「そう、なんですか?」

 愛衣が瞳を潤ませ見つめてくる

 うん。可愛い

「違和感が無いってのは事実だよ。でも、よく覚えてないんだ」

「そう、ですか……」

「覚えてないけど、今は間違いなく愛衣の事が好きだよ」

 愛衣の目を見てはっきりと断言する

「っ!ありがとう、ございます」

 見つめ合う俺と愛衣


「まーた、二人の世界に旅立っちゃったかぁ……早く親御さん戻ってこないかなぁ……」



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