第45話 パーティー1

ドアをたたき少し待つと中から知らない男性の声が聞こえてきた

「はーい。いらっしゃい」

ガチャリと開いた扉の先には見知らぬ男性が立っていた

「えっと…初めまして。塩谷浩二です」

「ああ、君が塩谷君か。ふむふむ。なるほど。」

値踏みするような視線に居心地が悪くなる

「ああ、ごめんごめん。初めまして、僕は黒坂くろさか けん。愛衣の父親だよ」

「はっ!初めまして!えっと、そのっ」

「ははは、そんな緊張しなくてもいいよ。紫さんが大丈夫だって言ってたからね。僕が反対するようなことは無いよ」

「えっと、よろしくお願いします……?」

「ああ、よろしく。申し訳ないけどちょっとこのまま待ってもらえるかな。準備が少し遅れててね。僕が話し相手になるからさ」

「は、はい。」

「いやぁ、安心したよ。君が怖い人だったらどうしようかなって」

「はぁ」

「愛衣の婚約者が優しそうな人で本当に良かった!」

「ありがとうございます」

「そういえば、君…じゃなくて浩二君。仕事は何をしているんだい?」

「仕事、ですか?」

「ああ、因みに僕はこう見えて傘を作る職人なんだよ」

「傘職人ですか。凄いですねっ!」

「そうかな?」

「はい!尊敬します」

「ははは。ありがとう、浩二君。そんな反応したのは君が二人目だよ」

「二人だけ、ですか」

「ああ、一人目はもちろん紫さんなんだけどね。それで?僕の話しはこの辺にして、浩二君はどんな仕事をしてるんだい?」

「えっと、栞を……作ってます」

「本に挟む?」

「はい」

「ふむ。どんな物を作っているのか、気になるな。今度1枚作ってもらおうかな、いいかな?」

「も、もちろんです!お金とか要らないので、是非作らせてください!」

「僕はお金を受け取らない職人は信じないんだ。どうしてか分かるかい?」

「……?」

「職人は自分の作る物に誇りを持っているものだよ。それを安売りしたり、ましてやタダでなんて職人として信用できるわけないじゃないか」

「そう、ですね……」

「まぁ、浩二君がいい人だってのは分かったけどね」

「はは、は」

気まずい……

そんな時……

ドアを開けて紫さんが顔をひょっこり出した

「あなた、準備できましたからもう入ってもらって大丈夫よ」

「紫さん、わかったよ。お待たせ、浩二君。さぁ入って」

「はい、邪魔します」

愛衣の両親に連れられて黒坂邸に入る


中は前に来たときと何も変わってなく綺麗だな

リビングに案内され、中に入るとそこはパーティー用に飾り付けられていた

そして、一際美しく着飾った愛衣がいた

「……………………」

言葉が出ない。綺麗だとか、美しいだとか、そんな言葉で表現できない……それほどに魅せられていた

「浩二さん。どう、ですか?」

「えっと、その…すごく似合ってる……」

「そう、ですか…よかったです……」

「あ、ああ」

「浩二さんも似合ってますよ。その服」

「あ、ありがとう」

二人して照れながら褒め合う


「うん。二人ともとても似合ってるんだけどさ。私らもいるんだけど?そろそろ二人の世界から帰ってきてくれないかな?」

本郷さんが呆れ半分羨ましさ半分で声をかけてきた

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