第41話 それから

専属契約の話から1週間ほど経って市長とブックメーカーこと本郷さんがお見舞いにきてくれた

「調子はどう?ブックマーカー」

「退屈で死にそうだよ、ブックメーカー」

「元気そうでなにより」

「それで?なんの用だ?」

「私は付き添いでして、本郷さんが話があるそうです」

「あのさ、私たちの製作者名って紛らわしいじゃん?」

「あ~、確かにな」

「だから、私の製作者名を変えることにした」

「いいのか?」

「いいのいいの。それで新しい製作者名は製本屋せいほんやにしたから」

「製本屋、か」

「そう、製本屋の本郷」

「そうか。わざわざ伝えにきてくれたのか?」

「実はもう一つ大事な話があるんだよね」

「大事な話?」

「そう。私、Ms.ブラックの派閥に入ることにしたの」

「え?それって」

本郷って魔女の世界を嫌っていたんじゃないのか?

「あなたが眠っている間に色々あったのよ」

「あんなに嫌ってたのに?」

「そう。今でも魔女の世界は嫌い。でも、Ms.ブラックは信用できる。そう思ったの」

「そっか。……ありがとう」

「別に浩二の為じゃないの!愛衣ちゃんが勝たないと世界が大変な事になるって聞いたから」

「そっか。それでもありがとな。愛衣の力になってくれるのは嬉しいからな」

「そ、そう……。話も終わったし、私は帰るわ。じゃ、またね」

「派閥に入れてよろしかったので?」

「大丈夫だろ」

「そう、ですか。では私も帰らせていただきます。お大事になさってくださいませ」

「ああ。ありがとう」


二人が帰ってから俺は紙とペンを取り出して新しい魔力栞のアイディアを考える

入院中はカッターが使えないのは盲点だった。仕方なくアイディア出しをひたすら繰り返している

今の所、5種類の候補が決まった

しかし、これがトリプルの能力を有しているかは作ってみないとなんとも言えない

だから、もっとアイディアのストックを増やさなきゃいけない

焦る必要はない、退院まで後2週間くらいあるんだ……

退院したら、急いでカッターを扱う練習をしないとな

それで、大量に作っては片っ端から試さないと……

三か月のロスを取り戻さないと……間に合わなくなる

1年のタイムリミットは着実に迫っている

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