第34話 市役所前で

翌日、昼前に目が覚めた俺は市役所へ向かった

市役所なら、研究所の場所も教えてくれるはず!

受付カウンターで待っていたのは、エレベーターがあるのに階段を使わせるあの人だった

「本日はどの様なご用件でしょうか?市長なら公務でお忙しいですよ」

「いや、市長に会いに来たわけじゃないです。研究所に行きたいんですけど、場所が分からないんで教えてほしいんです」

「研究所?どこの研究所ですか?」

「どこの…?」

「ライメイ市内には研究所と名の付く場所が3カ所あります」

「3カ所もあるのか……」

「はい。まず、総合魔法学研究所、そして魔法図書研究所、もう一つは魔力栞研究所です」

「えっと……、じゃあ総合魔法学研究所の場所教えてください」

「申し訳ありません。お教えできません」

全く申し訳なく思ってない口調で言い切る受付の人

「え?なぜに?」

「一般の方には場所は秘匿されてますので」

「え?何で?」

「はぁ…いいですか、総合魔法学研究所は国内トップの研究機関であり、最重要機密の研究もされている場所です。なので、一般の方の立ち入りは禁止されています」

「そうだったのか……」

「一般の方が入れるのは魔法図書研究所か魔力栞研究所です。しかし、どちらも事前予約が必要です」

「予約かぁ……」

「どうされます?おそらく1週間ほどかかりますけど」

「いや、今回はやめておきます。ありがとうございました」

カウンターを後にして、市役所から出る

昼過ぎの市役所前に見覚えのある人物がいた

が、声を掛けるのは躊躇われた

子供服の似合うこの人はブックメーカー……この見た目で既に20才を越えている、ある意味魔女のような人だ

そーっと見つからないように歩き去ろう

「あっ!」

「えっ⁉見つかった⁉」

「なーんだ、私の事知ってるんだ?」

「えーっと、ドチラサマデショウカ?」

「ふっふっふっ!私の事、誰に聞いたんですか?」

「えーっと……市長から……」

「そっか、彼から聞いたのかぁ。なら余計な前置きはいらないな、魔力栞の製作者よ」

「な、なんで?俺が」

「魔力栞の製作者だと分かったか、気になる?」

「あ、ああ」

「秘密よ。それに、今はそれ以上に大事な事があるの」

「大事な事……?」

「ええ、付いてきなさい。魔力栞の製作者さん」

「え、ちょっと!」

ブックメーカーは返事も聞かず背中を向けて歩き出す


これ、付いて行かなくちゃいけないのか?

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