第29話 急な来訪

翌日、予想以上に疲れてしまっていたみたいで、目が覚めると既に12時を過ぎていた

「んーーー、っと 」

さて、活動再開しますかね

顔を洗い、朝食を用意する

今日の朝食もとい昼飯はシリアルにしよう

皿にカラカラと出して、冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注ぐ

「いただきます!」

モグモグ…モグモグ…ゴクゴク…ぷはぁっ

「ごちそうさまでした……」

昨日食べた飯が美味すぎて味気ない……

くそっ!……気合入れ直して魔力栞作るぞ!


俺は作業部屋へ移動して、赤い紙を用意する

テーマは何が良いか、愛衣の好きな色のこの色で何を作ろうか

赤、赤、赤……やっぱり炎、だな

愛衣の使う魔法、名前は知らないけど。研究所で見たあの炎の魔法が印象に残っていた

炎と合わせられるテーマか、燃えさかる炎には何が合わせられるかな

思案に耽る……しかし、ぴったり合ったテーマが思いつかない……

どうすっかなぁ~と考えていると、電話が鳴った

最近、よく電話鳴るなぁ……

「はい、もしもし」

「こんにちは、塩谷くん」

「えっと……」

「市長だよ。数日振りだね、塩谷くん」

「はい、えっと…何の御用で?」

「魔力栞の進捗を聞いておこうと思ってね。どうだい?順調かい?」

「順調、です。多分……」

「多分?どうかしたのかな?」

「いや、作った魔力栞の出来栄えが自分じゃ判断できないので」

「ああ、なるほど。塩谷くんは魔力の流れとか感じない方なんだね」

「魔力の流れ、ですか?」

「うん。そう。魔法使いは半数以上出来るんだけど、聞いた事ない?」

「初耳です」

「確か、高校の授業で習ってるはずなんだけどねぇ」

「う゛……」

「そっか、初耳か。これは参った参った」

「勉強してきます……」

「なら、Ms.ブラック様に教えを乞うてはいかがかな?」

「愛衣に?」

「あっ⁉、し、塩谷くん……Ms.ブラック様のお名前を……」

「あ…ははは。そう呼んで欲しいと頼まれたんですよ。本当ですよ」

「Ms.ブラック様の母君は知っているのか?」

「紫さん、ですか?知ってますよ」

「ゆ、ゆゆゆっ⁉スーハー……塩谷くん、君は命が惜しくないのかね?」

なんで⁉いきなり死亡フラグ⁉

「決して外でその名前を口にしないように、いいね?今まで通り苗字でお呼びするか、私たちと同じようにMs.ブラック様と呼ぶように。これは君の命に関わることだよ」

「あの、何で名前で呼んではいけないんですか?」

「それを知ってしまえば、君は二度と日常に戻れなくなるよ」

「え?」

「それでも聞きたいかな?その覚悟が、君にあるのかな?」

「……いえ、止めておきます」

「賢明な判断だ」

「それじゃ、俺は勉強しますので」

「ああ、そうだね。しっかりと勉強するんだよ」

そう言うと市長は電話を切った

「ふぅーーー」

市長との電話は疲れるなぁ


ピンポーン

ん?誰か来た?

「はーい」

玄関へ行きドアを開ける

「どちら様ですかー」

「こんにちは!浩二さん!」

そこには愛衣がいつもの真っ黒い恰好で立っていた

「愛衣か、どうしたの、か?」

「いえ、その……魔力栞はどんな調子かなって……」

ん?どうしたんだ?目線が逸れて……あっ!俺の恰好かっ!

今の俺の恰好はTシャツの短パンという、良く言えばラフ、ぶっちゃけて言えばだらしない恰好だ

そして、目の前には視線を彷徨わせる現役女子高生の少女

マズイ、これはマズイぞ!

「ごめん!すぐ着替えてくるから!」

俺は慌てて自室に戻り、取り敢えず着替える

「お待たせ!」

「すいません!事前に連絡しなかったから……」

「いやいや、とりあえず入って。座って話そ」

「はいっ!お邪魔します」

愛衣を居間に案内して、冷蔵庫から飲み物を出す

「どうぞ」

「ありがとうございます」

愛衣は両手で飲み物を持ってコクコクと飲む

「それで、どうしたの?」

「気になってしまって……」

「進捗?」

コクリと小さく頷く愛衣

「すいません!そんなすぐに出来るわけ、ないですよね」

「いや、丁度良かった。愛衣に教えて欲しいことができたんだ」

「なんですか?」

「魔力の流れ、について教えてほしいんだ」

「知らないんですか?」

「……はい」

「そう、ですか。分かりました!私が知ってる内容だけですが、お教えしますね!」

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