第17話見慣れぬ部屋での目覚め

唐突に鳴る目覚まし時計のベルの音で目が覚めた

日々の習慣で身に付いた動きでそちらを見ずに音を止める

視界には部屋の広さに対して少なく感じる家具と、汚れの無い真新しい壁紙が見える

そうか、引っ越したんだったと思い出す

伸びをして、変な体勢で寝て固まった体をほぐす

「痛たたた」

改めて時計を見ると時刻は9時で、窓の外は随分と明るくなっていた

昨日の寝た時間は覚えてないが、確か日付は変わってなかったはずだから9時間以上寝ていたことになる

「良く寝たな」

ついつい独り言がでるが、別に寂しいわけじゃないよ。ホントホント

なんて起き抜けの意味のない思考を巡らせながら顔を洗いに洗面所へ

ドアを開けるが、そこは作業専用に作られた部屋だった

別のドアを開けると、大容量の収納部屋だった

「すげーな」

次のドアを開けると、やっと洗面台を発見できた

洗面所の中にあるドアの先はトイレだろうか

洗面台で顔をバシャバシャ洗い鏡を見ると、いつも以上に冴えない男が映る

「寝癖ひどいな」

お湯を出して手櫛で梳かす

ある程度髪のハネを直してトイレを済ませ部屋に戻る

タイミングを見計らったかのように着信を告げる固定電話

ジリリリリリリリリ、ガチャ

「もしもし」

「おはようございます。ライメイ市役所からモーニングコールのサービスです」

頼んでないと思う、というかなんか聞き覚えがあるなこの男の声

「あの、頼んでないですけど」

「ええ、“サービス”ですから」

「もしかして……市長ですか?」

「おや、直ぐに気づくとはもうしっかり目は覚めているようだね」

「ええ、まぁ」

「このモーニングコールはね。新規入寮した人全員にやってるドッキリなんだけど、驚いてくれたかな?」

「凄く驚きました。市長って案外ヒマなんですね」

「暇人呼ばわりとはひどいなぁ」

「それで、なにか用ですか?ホントにモーニングコールだけの為に掛けてきたんですか?」

「鋭いねぇ。確かにモーニングコールだけが目的じゃないよ。もちろんモーニングコールも目的の一つだけどね」

「それで、要件はなんですか?」

「もちろんお仕事だよ。Ms.ブラックから昨夜連絡が入ってね。Ms.ブラックの代わりに君にダブルの作り方を教えて欲しいって依頼されたんだよ」

「そうですか。市長自ら教師役をやってくれるなんて驚きを禁じえません」

「いやいや、流石に私もそこまで時間がある訳じゃないからね。代理を手配して昨日の部屋へ来てもらっておくから、君も準備して12時に市役所に来てほしいんだ」

「12時に市役所ですね、わかりました」

「遅れないようにね、じゃ健闘を祈るよ」

ツーツーツー

まさか市長から直接電話がかかってくるなんてな

一昨日の自分は信じられないだろうな


~現在の時刻9時30分~

まぁ、この時間から準備したら遅刻はあり得ないよな

さーて飯にしよーっと

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