第16話市長室にて
チーン
到着と共に音が鳴りドアが開く
「ようこそ、ここが私の市長室だよ」
「し、失礼します」
俺はこの市長がどんな部屋で仕事してようと気にするつもりはなかった、この部屋に入るまでは……
黒坂愛衣の写真が所狭しと飾られていた
「あの、市長?この写真は・・・?」
「Ms.ブラックが初めて試合に出た時のものだね」
「こっちのは」
「それは、Ms.ブラックが初めて魔法を使った時の写真だよ」
「なんで、こんな写真があるんですか?」
「もちろん、趣味だよ」
「趣味ですか?少女の写真を飾るのが?」
「違う違う!勘違いしないでもらいたい」
「よかった、俺の勘違いなんですね」
「そうとも!飾るのは副次的なもので、趣味は撮る方だよ」
「……は?」
「私の趣味はMs.ブラックを撮影する事だよ。飾ってるのは勿体ないからだよ」
もっとヤバいやつだった!!
「私の趣味について何か言いたい事でもあるのかな?」
「イエイエ、ナイデス」
「それはそうと、この魔力栞の値段なんだけど1000でどうだい?」
千円?ちょっと安くないか?まぁ、魔法学用とか言ってたしそんなもんなのか?
「ふむ、不服そうだね」
「そんなこと無いですよ?」
「では、1200でどうだろうか?これ以上は私の独断では決められない案件になってしまうんだ」
千二百円くらいで大げさな
「じゃあ、それでお願いします」
「分かった。今用意するから、座って待っててくれ」
市長は金庫から札束を取り出す
何やってんだ?千二百円くらい財布に入ってないのか?
「お待たせ、新券の帯付き12束で計1200万円だよ。確認するかい?」
「……?せんにひゃく、まんえん?」
「そうだよ。君が良いって言ったんだ、これ以上は出せないよ」
「ちょっと待ってください!!千二百円じゃなくて?千二百万円?」
「この魔力栞がたった1200円だと思ったのかい?」
「は、はい」
「はぁぁー……君は相場って物を知らなすぎるよ」
「相場って、そんなに魔力栞は高いんですか⁉」
「そうだよ。特別なインクや販売の許可など手間がかなり掛かる物だから、相場は高いよ。当たり前だよ」
「そんな……」
「それに、この魔力栞はかなり出来がいい。恐らくシングルの中でもトップクラスの出来栄えだよ」
そんな、信じられない
俺の作った栞が一千万円以上の価値があるなんて……
「う、受け取れません!俺にとってこの額は大きすぎます!」
「そうは言っても、安く買ったとなると私の品位が疑われるからね」
「じゃ、じゃあ!家賃と生活費と材料費にしますので!市長預かっててください!」
「それは元々コチラで別途用意するつもりでいるからね。報酬はちゃんと受け取ってもらわないと困るね」
「う~~~ん」
どうにかして額を減らすなり、受け取らないなりの対策を採らないと
「なんでそんなに受け取りを拒否するのかな?」
「それは…子供のころから親に言われていたんです。大金は人生を狂わすから気をつけなさいって」
「ふむ。親御さんは心配だったんだろうね。君の才能を早くから見抜いていたのだろう、いつか君が大金を手にする時に身を滅ぼさないようにするためにね」
「母と父が……」
「いい両親だね」
「はい」
「君の心に両親からの忠告がある限り、いくら大金を得ようと君は大丈夫だよ」
「そうでしょうか」
「ああ。だから受け取ってくれるね?君の次の作品の為にも」
次の作品の為、か
「わかりました。有難く代金として頂きます」
「よかった。君が受け取ってくれないと、この魔力栞を手に入れられないからね」
現金1200万円をカバンにしまう
この重みはなかなかに忘れがたい思い出になりそうだ
「それでは、俺は部屋に帰りますね」
「ちょっと待ってくれるかい?」
「なんですか?あ、新しい部屋の鍵ですか?」
「君はMs.ブラックがどんな人物か知らないだろう?」
鍵じゃないのか……
どんなって、普通にかわいい魔法好きの少女って感じじゃないかな
「Ms.ブラックは、普通とは一番縁遠い特別な存在なんだよ」
「どういう事ですか?確かに少し変わった所もありましたけど」
「詳しくは言えないが……本来なら君のような一般人が接することのできない、貴重な人物なんだよ」
貴重?
「だから、くれぐれMs.ブラックの不興を買わないでくれよ。今の君を失うのは惜しい」
「はい……?気を付けます」
「話しは以上だよ。君の部屋は創作者用の寮の5階10号室だよ。鍵はコレだよ」
市長から新しい部屋の鍵を受け取り退室する
結局市長は最後何を言いたかったんだ?
俺を失うって……?
まさか、言葉通りの意味じゃないよな?
そんな事考えながら歩いてたら迷って、随分と遠回りして新しい部屋に着いた
ドアを開けると部屋の中は既に片付いていた
どうやら引っ越し屋が全部終わらせてくれていたみたいだ
家具の配置は前の部屋とほぼ同じ
ただしこっちの部屋が広いせいで、家具同士の間が空いていた
少し慣れるまでに、時間がかかるかもな
色々ありすぎて疲れていたのだろう、ベッドへ座り横になると強い眠気が襲ってきた
着替えとか…飯とか……どうしよ……
そのまま眠気に負けて俺は深い深い眠りに落ちるのだった
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