第8話契約成立
「その……黒坂愛衣さん」
「なんでしょうか、塩谷さん」
「いくつか質問があるんですが」
「プライベートな事以外ならどうぞ」
「その箒はいったいどこから出したんですか」
「魔法ですよ。私魔女ですから」
「その恰好はコスプレですか」
「いえ、正装ですよ!私魔女ですから!」
「
「私魔じy」
「事実を知りたいんです、ふざけてないで答えてくれませんか」
「別に、ふざけてなんて……まぁ、そうですね。簡単に言うとファンなんです、あなたの栞の」
「俺の栞の、ファン……?」
「そうです。あなたの栞は素晴らしいです!丁寧に一つずつ作り込まれていて、自身の作った物への愛が感じられます」
「それは……」
それはそうだ。当たり前じゃないか。苦労して一つ一つ手作りしてんだ。
「私、一つだけですがあなたの作った栞持ってるんですよ」
そう言って栞を一枚見せてきた。使い込まれ、少しくたびれた栞だ
それは確かに俺の作った栞だ。一年前から半年くらい続けて市に提出していた花柄シリーズの一つだ
花柄シリーズは俺の作品の中で一番売れ行きが好調だったが、花について特別詳しい訳じゃないから少数しか作れなかったものだ
「これを使っている内に思ったんです。この栞を作れる人なら或いは私たちの力になってくれるかもしれないと」
「私たち?」
「はい!私は魔法競技
「マジシャンズってあの魔法でドンパチやる?」
「ドンパチって……まぁ、そうです。正確には
「そ、そうか」
「ちなみに、私たちのチームは
「ウィッチ、魔女か。そのままだな」
「そうです!チームメイト全員女子ですから!みんなお揃いのユニフォームで仲良しなんですよ!」
「まじかぁ」
「なんですか?何か言いたそうですね」
「いや、暑そうだなぁって」
「仲間同士の信頼関係は篤いですよ、ふふ」
上手いこと言ったつもりか!
「それで、その、俺に魔力栞を依頼するのは俺の栞が気に入ったからって事でいいのか」
「いいえ!気に入った、ではなく大好きになったから、です!!」
恰好はアレだが、こんなにも俺の栞を好いてくれてる人がいるなんてな
凄い、凄ーーーい、嬉しいな!チクショウ!俺チョロ過ぎだろ!
「わかった、魔力栞の依頼しっかりと引き受けよう」
「ありがとうございます!」
「まぁ、最初から断る選択肢は無かったんだがな」
「え?最初から?」
「ああ、断った時点で廃業だからな」
「廃業!?」
「まさか……知らなかったのか?」
「うn、じゃない。はい。どういう事ですか!?」
「ああ、今回の依頼は『市長からの依頼』でもあるらしいからな。俺達創作者は市からの依頼を断れないんだよ」
「断ったら……?」
「市からの援助を一切を受けられなくなるか、ライメイ市から強制退去させられる」
「そんな……
「まぁ、そういう事だ。だが、俺はそんな事を抜きにこの依頼を全力でやり遂げる決心がついた」
「いやいやじゃなくて?ホントに引き受けてくれるんですか?」
「ああ、そうだ。全力全開で最高の魔力栞を作ると約束する」
「誓ってくれますか」
「そうだな。俺の栞の熱心なファンに誓おう。君の為に最高の魔力栞を製作する」「よかったです、これで……」
「それで、早速頼みたい事があるんだが……」
「なんですか?」
「魔法図書と魔力栞について、教えてくれないか」
「え?知らないんですか⁉」
「ああ、魔法学の授業は苦手でな。ほとんど寝てた」
信じられないという表情をする黒坂愛衣
「魔法図書と魔力栞について知ってる事は」
「魔法図書は何か魔法の打てる本で、魔力栞は……バッテリー?」
「はぁ……これは大変ですね」
「それで、教えてくれんのか?」
「はい、お教えしますとも!但し基本的な事しか私も教えられないですよ」
「ああ、助かる。それで、いつから」
「勿論、今からです‼‼」
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