第6話その依頼人は……?

翌日10時五分前、結局一睡もできず徹夜明けの状態で市役所まで来ていた

「うわぁ、ねみぃ」

欠伸を噛み殺しつつ市役所の自動ドアをくぐり、依頼課まで行く

受付の人に声をかける

「すいません、昨日連絡をもらった塩谷浩二です」

創作者用の身分証を提示する

「はい、お待ちしておりました。特別会議室へご案内しますので、付いてきてください」

「はい」

特別会議室って何だ?聞いた事ないぞ

受付の人はスタスタと階段を上り、4階建ての市役所の最上階まで登って行く

付いていく俺は寝不足のせいもあって足が重く息が上がってしまう

「はぁはぁ。ここの四階なんて初めて来ましたよ」

「そうでしょうね。ここ四階は市長と特別な依頼人の方々しか利用できませんので、私共も滅多に立ち入ることはありません」

「そう、ですか。はぁはぁ」

「さあ、着きましたよ。こちらで依頼人の方がお待ちです」

受付の人がノックをし俺が来たことを中に居る依頼人に告げる

「入りたまえ」

「失礼致します。塩谷浩二様をお連れしました」

受付の人はドアを開けて俺だけ中に入るように促す

「し、失礼しまーす」

緊張しまくりで室内に入る

そこにはスーツに眼鏡、髪はオールバックで固めたにこやかに笑う男性と真っ黒い塊がいた

男性はソファから立ち上がり自己紹介をする

「よく来てくれた、知っていると思うが私がライメイ市の市長だ」

「は、初めまして!塩谷浩二といいます!」

「こちらこそ、初めまして。ささ、こちらに座って早速打ち合わせをしよう」

「はい」

「それでは、第一回の打ち合わせをしよう」

「第一回……?」

「あれ、言ってなかったかな?今回の依頼品は特別性でね。ミスが許されないからしっかりと打ち合わせする事になってるんだ」

「初耳です。依頼内容とか全部極秘事項って言われて……」

「あー、そっか。ごめんごめん、うっかりしてたよ」

「それで、依頼人と依頼品は?」

「依頼人はこちらにいるMs.ブラックさん」

「どうも」

「依頼品は魔力栞マナマーカーだよ」

「魔力栞、ですか?私、普通の栞しか作った事無いんですが」

「大丈夫!作り方はこれから覚えてくれれば問題ないよ」

なにが大丈夫なんだよ!!

「えーっとMs.ブラックさん?ド素人に依頼しても望み通りの品は出来ないと思いますが……?」

「貴方にならできると、そう私が判断した」

「いや、でも」

「なんだい、塩谷くんは依頼を断りたいのかな?ライメイ市から出て行ってしまいたいのかな?」

「いえ!そんなことは決して!」

「そうか、それはよかった。では依頼品についてはMs.ブラックとじっくり話し合ってくれ。私は他にもやる事あってね、失礼させてもらうよ」

市長はそういうと部屋を出て行ってしまった

残されたのは俺とMs.ブラックの二人だけ

真っ黒なフーデッドローブを着た女性と部屋に二人きりなんてどうすればいいんだよ!?

「あの、今回の依頼」

「は、はい」

「引き受けてくれてありがとう」

「い、いえ。こちらこそ。ご指名ありがとうございます」

「依頼の話しの前に、一つ誓約して欲しいんですが」

「なんでしょう」

「ここで見聞きした事は一切を他言無用でお願いします」

「えっと、全てですか?」

「はい。全て、です」

「もし破ったら」

「話しを知る全員に死んでもらいます」

「比喩ですよね」

「いいえ、言葉通りの意味です」

「おっかないですね」

「できれば、死人は出したくないので。極秘にすると約束してもらえますか?」

「断った場合は」

「この場であなたの命を頂きます」

’「わ、わかりました。まだ死にたくはないので、ここでの事は一切を他言無用とし極秘にすると誓います」

「良かった。これで素顔を見せられます」

フードを上げるとそこには可愛らしい少女の火照った顔が

「ふぅーー。暑かったぁ」

パタパタと手で顔を仰ぐ少女

「あ、え?は?」

「あ、改めまして。私がMs.ブラックこと黒坂愛衣くろさかあいです。以後お見知りおきを」

立ち上がり何処からか取り出した箒を両手に持って直角にお辞儀をする


その少女はまるでファンタジー小説に出てくるような魔女っ子だった

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