修学旅行の写真 Day2
修学旅行の二日目は自由行動だ。昨日と違い、一日中京都の景観を堪能することができる。
自由行動は班別行動となっている。四人から五人での班ということなので写真部のメンバーで組み上げた。俺と鈴木と佐々木、金井の四人だ。
回るコースは龍安寺、嵐山、映画村、そして受験生ということで北野天満宮をチョイス。いたって有名どころの景勝地だ。
移動は各グループに専属のタクシーが付くので安心だ。交通費だけでも高校生にとっっては高い。
「自由行動楽しみだね。」
「本当そうね!夏恋は今頃寂しがってるよ〜」
「あとで冷やかしてやっか!」
三人は楽しみを言葉に変える。俺ももちろん楽しみだ。頭の中では二つのことを考えていた。
一つはこれから観光する場所をイメージ。どんな写真が撮れるか、そこで楽しめるのか。一つは昨日の夜のことだ。あの疑問は解く意志を捨てたはずなのに、頭はそれを拒んでいる。解こう、解こうと真実を追求する気持ちは加速する。
そして、班別行動は始まった。龍安寺、嵐山、映画村とそれぞれを回った。龍安寺の日本庭園に関しては何を表現しているのか凡人の俺には分からない。世の中分からないことばっかりだ。それでも悩みながら進まざるを得ないのは非情だ。
写真部グループは最後の北野天満宮に来ていた。菅原道真を祭神としている。相当勉強ができたのだろう。そうでなければ勉学の神になど到底なれない。
立派な山門を潜り境内に入る。横にはお守りやら撫でると頭が良くなるらしいものなどが並んでいた。それで受験に合格できたらどんなに楽だろうか。
一応俺も参拝し、お守りと絵馬を購入した。お守りはリュックにしまい、絵馬を持って書くスペースへ。そこには佐々木がいた。
「佐藤くんも絵馬書くんだ。意外だね。」
「まあ日本人だからな。願掛けくらいはするさ。」
佐々木は絵馬を書き終えているようで、ちらっと覗いてみる。彼女は東京の女子大を希望しているのか。俺はあまり写真部で進路の話をしないから情報がない。
「東京の女子大に行くんだな。」
「合格できたら入学するつもりだよ。鎌倉からでも通える距離だしね。佐藤くんはどこ志望なの?」
「俺は東京の私大だよ。」
「そっか。同じ東京なんだ。」
佐々木は嬉しそうにはにかんだ。そして書き終えた絵馬を見つめてこう告げる。
「できればずっと写真部のメンバーと一緒にいたいな。もちろん結衣ちゃんも一緒にね。」
見つめていた絵馬を持ち上げ、胸の高さまで持ち上げて続ける。
「でもきっとそれは叶わない願いなんだよね。それぞれ違う道に行って新しい居場所を見つけるんだよね。」
俺はどう返していいか分からなかった。だが唇は咄嗟に反応していた。
「確かにそれは難しいだろうな。」
「うん。わかってるよ。」
「離れたらまた会えばいいだろ。死ぬことさえしなければいつかどこかで出会えるもんだ。」
すぐに柄にもなく変なことを口走ってしまったことを自覚した。
「ありがとね佐藤くん。」
佐々木は笑顔で感謝の意を告げた。俺は彼女を救えたのか。この言葉はきちんと届いたのか。だが、それは直接聞くことはできない。やっぱり、分からないことだらけだ。
「おーい!空そこにいたのか!」
「咲もそこにいたのね!」
鈴木と金井も一緒に行動していたらしい。あいつらのことだ。ずっと銅像を撫でていたのだろう。二人と合流し北野天満宮の前に止めてあるタクシーに乗って旅館へと戻ることにした。
あっという間に二日目の夜も終わってしまった。三日目も少し観光してお昼過ぎには鎌倉に帰る。まだ終わっていない修学旅行。三日目にも少し期待しつつ昨日と今日の思い出を噛み締めて早めに寝床に着いた。
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