第2話

「うう……」


 薄暗い部屋の中で、目を覚ました。少し頭痛がするくらいで、先程感じた酷い不調はなかった。

キョロキョロと辺りを見渡しながら、部屋の中を歩き回る。とはいえ、歩き回る程もないくらいに狭かった。おまけに、四方の壁は鉄格子で出来ている。


「えっ……?」

 

 私がいるのは部屋ではなかった。檻だ。それも金属で出来た、かなり丈夫な。

慌てて、今度は自分に目をやる。制服ではなく、薄汚れて穴の空いたボロ布を着ている。荷物も見当たらない。手には錠までついて、さらには番号が刻まれていた。

そんな、まさか。


「……これじゃ、これじゃまるで囚人か……奴隷、じゃない」


 言葉にすると、より一層重く、苦しく感じる。どうして私はこんな所にいるのだろう。これからどうなるのだろう。そんな不安ばかりが押し寄せてきて、うまく考えられない。頭を抱えて立ち尽くしていると、横から唸り声が聞こえた。


 思わず肩をビクリと震わせて、恐る恐る横を見た。よく見ると隣にも、その向こうにも檻があるようで、隣には大きな、見たことのない動物のようなものが、窮屈そうに檻に入っていた。

薄暗いせいで顔はよく見えなかったが、ぎょろりとした大きく恐ろしい双眸だけは、はっきりとこちらを睨んでいるのが見えた。


 __ひゅっ。

 少し間抜けな音が聞こえた。一瞬の間のあとで、自分の喉から出た音だと気付く。恐怖のあまり声も出ないのだ。

 足の力が抜けて、そのまま床に座り込んでしまった。体の震えが止まらず、必死に後ずさる。檻の端に背中がついたところで、もう「それ」が私を見ていないのに気がついた。


 私は安堵のあまりため息を漏らし、涙のこぼれそうな目を擦った。

檻を挟んでいるし、もっと言えば相手は私になんとなしに、何の感情もなく目をやっただけに過ぎないだろう。にも関わらず、あの奇妙な生物に対して、痛いほど感じた。

 喉元に凶器を当てられたかのような、新鮮な恐怖を、命の危機を。

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